ファーストワルツはあなたと -ラフィニア目線-
少し短めです。
ラフィニアちゃんのドレス。
もっと満足に書きたいものです。
シルビア様、とっても綺麗でした。
お兄様も別人みたいに格好良かったですわ。
でも、ワルツ中に“高い高い”するなんて…もう。
私が踊り終えた2人の後ろ姿を見つめていると、クレール様に肩をツンツンされました。
見上げると、気弱げに眉をさげていらっしゃいます。
「ラフィニア嬢、次は私たちです。行けますか?」
「はい。宜しくお願い致します。」
私は、そう言って笑い、彼の左腕に手を添えました。
すると、クレール様は私の添えた右手をゆっくり左手に持ち換えて、「こちらこそ。」と微笑まれました。そのままデビュー令嬢が集まるダンスフロアへエスコートしてくださいます。
エスコートの最中、彼の手は少し震えていて、それでもちらりと見た顔は、次期公爵の冷製な顔を保ってらっしゃいました。
私を含め、フロアに上がった令嬢は18名。フロアには、全部で36名が立ちました。
失礼の内容に、周りをぐるっと見ると、他の令嬢様のパートナーは親族の方が多いようです。
同じ色の髪と目をしたカップルを見ていると、クレール様が歩みを止め、私をくるっと回し、向い合せにさせました。そして私の両手を取り、自分の両手で繋ぎました。
私は突然のことで驚いて見上げると、
「ファーストワルツ。ゲイルと踊らせてあげられなくてごめんね。」
と、まるで自分が悪いと言うように、謝られてしまいました。
私は頭をフルフルと振り、彼の両手を握り返しました。
何も悪くないクレール様に気を遣わせてしまいました。
「クレール様が謝ることなんて何もありません。ダンス、一緒に踊ってくださってありがとうございます。」
彼を見上げて、彼の手の暖かさに目を細めると、まだ納得がいっていないのか、複雑な顔をしていらっしゃいます。
私はさらに、彼に一歩歩みより囁きました。
「お兄様たちに負けないくらい、楽しく素敵に踊りたいです。私の婚約者様。」
私が言い終わる時、オーケストラの音楽が始まりました。
周りが、ダンスポーズを始めます。
私たちもダンスポーズを取らないといけません。
なのに、クレール様が微動だにしません。
…仕方がありません。
私は、クレール様の右手を自分の脇に添えさせました。
そして左手を彼の左胸に添えたタイミングで軽く肩を叩きました。すると、クレール様が気が付かれました。
良かったですわ。
彼は最後に、私の右手を持ち上げ握ります。
音楽に耳を傾け、リズムを感じ、最初の一歩を彼に合わせて踏みました。
クレール様と踊ります。
クルリ クルリ
ドレスの白い裾がふわりと舞います。
クレール様の腰の手が離れ、右手だけを繋いでまた舞います。
クル クル クル
バックに結んだサテンリボンの先が、ヒラヒラ靡きます。
彼に引き寄せられて、またステップ。
フロアを進んで、胸をそらせます。スローポージング。
戻っておいでという感じで、彼が腰を無理なく引き上げてくださいます。
お互いの顔を見て、瞳を見て、私たちは手を取り合って広いフロアを舞います。
いつも踊る時は、お父様やお兄様、おじい様でした。
だから、このデビューで家族以外の方と、ダビニオン様と踊れると思っていました。
顔を上げると、クレール様と目が合いました。
彼は、私の顔を見て「ん?」という顔をされました。
私はそんな彼を見て、自然に顔がほころんでしまいました。
ダンスは苦手だといってらっしゃっていたのに、とてもお上手。
私をホールドする手は安定していて、足さばきも私はとても楽です。
それに、手の握り方もターンのタイミングも、無理がありません。
周りの方々を気にすることもなく身を任せて、音楽とクレール様だけの世界です。
楽しい。
王宮での初めてのダンス。
緊張していたはずなのに、いつの間にか自然に体が動きます。
そして、ダンス音楽が終盤を迎えると、私は少し残念に感じてしまいました。
ずっと踊り続けるのは無理な話ですが、クレール様とならもう少しだけ踊っていたい。
素直な気持ちでした。
最後のターンをして、ゆっくりステップの速度を下げ、曲の終わりと共にパートナーへ礼をします。
私は右手を繋いだまま、左手で自分のスカートを広げて膝を折りました。
そしてクレール様は左手を繋いだまま、右手を胸に腰を折られました。
音楽が鳴りやみダンスが終わると、見守っていた各貴族様方が拍手してくださいます。
私たちは息を整えながら、頭を上げました。
そして、クレール様が私に微笑みかけてくださり優しいエスコートで、私はフロアを後にしました。
「ラフィニア嬢は、とてもダンスがお上手なのですね。パートナーとして鼻が高いです。」
私の耳元で声を落として囁くクレール様に、私は彼を振り返って答えました。
「クレール様もとてもお上手でしたわ。お嫌でなければ、またお付き合いいただけますか?」と窺うと、クレール様は少し驚いた顔をなさりました。
そして、「あなたがそれを望むなら。」と小さな声で答えてくださいました。
フロアから離れ、私たちはダンスで渇いた喉を潤しに、ドリンクが置かれている場所へ移動しました。
次回、ダが付くアイツがやってきます。
さて、誰でしょう。




