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捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった  作者: よぎそーと
六章

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第89空間 解決すべき手間

「でかいですよね、ここ」

 帰り道の中で誰かが呟く。

「そうだな」

と別の誰かが頷く。

 それが彼等の正直な感想であった。



 なんだかんだで片道一年を費やしてしまって。

 それで進めたのが、およそ4万5000キロ。

 しかし、横断した空間は900カ所ほどである。

 どちらを基準に考えるべきかは悩ましいが、それだけ進んでも奥というか行き止まりまで辿りついてない。

 果てがどこにあるのか分からないがのは今も変わってない。

 800カ所あたりから敵の数が増え、900カ所に至るまでには質もあがっている。

 それだけは分かったが、それだけしか分かってもいない。

 その先に何があるのかは全く分からなかった。



「でも、何かあるよな」

「そうだな」

「あんだけ一気に強くなってたし」

「多分、もう少し先に進めば何かあるんだろうな」

 これまで見なかった変化である。

 それが出て来たという事は、そうするだけの何かがあるという事だ。

 単純な考えだが、おそらくそうなのだろうと思われる。

 だが、それがどれだけ進んだ所にあるのかは分からない。

 原因となってる何かは、多分あるのだろうが、それがどんなものであるかも分かってない。

 実際、数百を超える空間を横切っても、敵にはそれほど大きな変化がわらわれなかった。

 目立った違いは800カ所、距離にして4万キロを超えてから。

 となれば、次の変化が訪れるのは────変化の原因が見つかるのは同じくらい進んだ先なのかもしれない。

「どうなのかねえ」

「分からないよ、そんなの」

 予想は出来るが、実際に何がどうなってるかは分からない。

「けど、まだまだ先がありそうではあるよな」

「ああ」

「長い、つーか、遠いよなあ」

「ああ」

 全員、その事に軽く憂鬱になりそうだった。



 広く、どこまでも続く世界である。

 その果てがどうなってるのかなんて全く分からない。

 地球のように球面になってるわけではないようなので、いずれはどこかに突き当たるだろうとは考えられている。

 だが、その果てが全く分からない。

 行けども行けども先が見えない。

 その事に誰もが不安というか、諦めを感じていた。

「このままずっとこんな調子なのかな」

 終わりの見えない世界で、あるかどうかも分からない果てを求めてさまようのだろうかと。

 だとすれば、今やってる事のほとんどが徒労になってしまう。

 元の世界に戻れるかどうかも分からず、広大とはいえこんな所に閉じ込められたままなのかと。

「どうしてこうなったんだか……」

 この世界に来た誰もが抱く疑問の一つを、六人の誰かが口にした。

 応じる者はいない。

 言えば余計に虚しくなるのが分かってるからだ。

 どんな問答をしても、答えもなく現状は続いていく。

 ならば全てが無駄になる。

 遊びで話すにしても、いささか自虐的になってしまう。

 自分達の今を嫌と言う程実感させるのだから。

 そんな事をしたがるような物好きはいない。

 スリルを求めるにしても、わざわざ自分達でやる必要はない。

 ここには終わる事の無い危険が蔓延っているのだから。



 そんな調子で帰路についてる彼等であるが、基本的に立ち止まる事なく先へと進んでいく。

 蓄えた貢献度のほとんどを用いて燃料を確保し、ひたすらに移動を続けていった。

 その為、行きの時とは比べものにならないほど移動速度は増している。

 燃料代を稼ぎながらの移動に比べれば早いのは道理であるが、それでも予想以上に道を戻っているのに誰もが驚いていた。

「燃料があればこんだけ変わるのか」

「まあ、移動だけしてればいいからな」

 大雑把な目安として、一日500キロの距離を移動してるのだが、残り500カ所となった時点で50日を用いてる。

 一ヶ月半になろうかといったところだ。

 車の状態確認の為、何回か長時間(およそ一日)の休止をとってるから、移動時間自体はもう少し短い。

 行きの時は、これだけ移動するのに何ヶ月もかかっていたから、違いは実に大きい。

「やっぱり、燃料とかがないとかなりきついですね」

 誰もがそれを感じていた。

 これだけ移動するとなると事前の確保が絶対に必要になる。

 でなければ、燃料の確保に無駄な時間がとられる事になってしまう。

「ここをどうにかしないと」

 トモキ達にとっての新たな課題になりそうだった。



 先に進んだところで何がどうなるというわけでもないかもしれない。

 だが、進んだ先で確かに変化があった。

 そこを調べれば何かが分かるかもしれない。

 だからこそ調査を円滑に進めるだけの努力をしておきたかった。

 しかし、そうなると全員にかなりの負担をかける事になる。

 燃料代1万点を供出してもらうためには、それなりの理由が必要になる。

 もちろん、調査をするため、より先に進む為という理由はある。

 だが、それだけで納得してもらうのも難しいところだった。



(すぐに、てのは無理だろうな)

 今、居住地は発展している最中だ。

 貢献度はその為に稼ぎ、少しでも快適な環境を手に入れる事に費やされている。

 その事は出発前に決定しており、トモキも知っている。

 今、どれほどそれらが進んでるのか分からないが、一年やそこらで全てが終わるわけがない。

 そんな所に、探険のために燃料を提供してくれと言っても通じるとは思えなかった。

 ここがどうなってるのかも調べねばならないが、自分達の生活も大事である。

 直接それに関わらない探険に支援を求めても上手くいくかどうかは悩ましい。

 体よく断られるのがオチかもしれなかった。

(今回の結果を伝えてもなあ……)

 確かに発見はあったし、今までとそこは違う。

 なのだが、それも見方によれば大したものではなくなるだろう。

 トモキにすれば、先を更に調べたいというところであるが、何せ距離が離れすぎている。

 自動車を使っても何ヶ月もかかる所にあるものは、すぐには調べる事は出来ない。

 直接の脅威にもなりえない。

 どちらかというと、後者の方が理由としては大きくなる可能性があった。

 すぐに調べる事も出来ないものに、貴重な資源などを融通する理由が出るかどうか。

 それよりは、まずは生活基盤を安定させるのが先ではないかと考えるのが普通であろう。

 それをやらねば、安定した供出すら出来ないのだし、順番としては正しい。

 だからこそ、トモキ達の再度の探険への支援は望みが薄かった。



(貢献度稼ぎを理由にしても、難しいよな)

 大量の貢献度があれば発展をより大きく促せる。

 だが、それでも自動車で移動出来る範囲でモンスターを倒していれば十分事足りる。

 何ヶ月も移動しなくてもだ。

 最初の空間である居住地に隣接する空間のトンネルに人を配置してるだけでも十分に稼ぐ事は出来る。

 ある程度離れた場所まで範囲を伸ばすにしても、自動車で日帰り出来る範囲に張り付いていれば良い。

 何ヶ月もかけて移動する利点が全く無い。

 モンスターの数が増え、質も上がり、貢献度が二倍ほど稼げるとしても、それは利点になりえない。

 何ヶ月も移動しなくてはならない負担の方が大きい。

 燃料代も馬鹿にならず、その分を差し引けば損失の方が大きくなってしまう。

(やっぱり、俺らでどうにかするしかないか)

 再び燃料代を稼いで移動しなければならなくなる事を、トモキは覚悟した。



 だが、そんな事よりも大きな問題が目の前に迫ってる事は予想もしていなかった。

 明日も19:00公開予定

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