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捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった  作者: よぎそーと
五章

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85/102

第85空間 出発

「それじゃ、行ってくる」

 久しく訪れてなかった場所にやってきて、出発の挨拶をしていく。

 かつて一緒だった、そしてこの世界における彼等の仲間の最初で最後の犠牲者。

 今では赤毛だったという事と、マキという名前くらいしか思い出すのも難しくなった者。

 それが眠る場所へとトモキはやってきていた。



 埋葬以来ほとんど、というか全く出向いていなかった。

 来るのが辛いというのもあるが、来訪が難しいというのが理由だった。

 移動が足だけで、それで空間内のあちこちを歩かねばならない日々であった。

 貢献度を稼ぐ為、安全な場所に移る為に移動を繰り返す必要もあった。

 その為、どうしても埋葬場所から離れる事が多かった。

 人数が増えてトンネル前に陣取るようになってからは特にそうなっていた。

 何せ、場所が遠い。

 丘を挟んだ向こう側だった為に、墓参りもままならなかった。

 自動車を手に入れ、ようやく距離の問題が解決された。

 あとは気持ちの問題だけで、それもようやく最近目処がついた気がした。

 これから遠出をするからというのもある。

 次に帰ってくるのが何時頃になるのか分からないから、一度顔を見せに行こうとも思った。

 冗談でも何でも無く、本当に帰ってこれなくなるかもしれないのだ。

 思い残すことはなるべく無くしておきたかった。



「もう五年なんだな」

 マキが倒れてからそれだけの時間が経過していた。

 思い出したくもない出来事が頭に蘇る。

「いてくれたら、もっと楽が出来たんだけどな」

 おそらく、もっと発展してただろう。

 探険も更に早く着手し、より遠くまで出向く事が出来たかもしれない。

 それだけマキという存在は大きかった。

 彼女がいれば戦闘での苦労はもっと減っていただろう。

 レベルアップも貢献度稼ぎももっと早く進めていたかもしれない。

 新人を率いる人材は確実に一人増えていたし、後進の育成ももっと手軽なものとなっていたはずである。

 それらが全て仮定の話になってしまうのが残念だった。

「でも、何とかここまで来る事が出来たよ」

 ここ最近は特に発展が早くなっている。

 それだけ貢献度を稼ぎ易くなった、稼げるほど強くなった。

 最初はどうなることかと思っていたが、今は生活で困る事はほとんど無い。

 そこまで全体を持ち上げてきた。

「前より来やすくなったし、これからは頻繁にやってくる事も出来ると思う」

 何年もほったらかしにするという事はなくなるだろう。

「カズアキとかテルオさん、それとヒトミは多分もっと来るようになると思う。

 だから、その時はよろしく」

 自動車は無理でも、バイクやバギーを手に入れれば移動は格段に楽になる。

 入手も比較的簡単なので、彼等もやってくるようになるはずだった。

「俺はちょっと出かけてくるけど、帰ったらよるから」

 どれだけ先になるかわからないが、そうするつもりではいた。

「だから、またご無沙汰するよ。

 気長に待っててくれるとありがたい」

 そこにいる事を示す名前を書いた板の前で頭を下げる。

 もっと立派なものをこしらえてやりたいが、そこまで手が回る状況でもない。

 専ら生活の方を優先せざるをえず、死者の扱いはどうしても疎かというか後回しになってしまう。

 それでも人の育成と居住地の発展が順調にいけば、いずれこちらにも手が回るはずである。

 そう信じながらトモキは立ち上がる。

「行ってくる」

 最後にそれだけ口にして、トモキは車の方へと歩いていった。



「あれが、前に話してくれた昔いた人ですか」

「ああ、そうだ」

 助手席に乗り込んだトモキは、後ろからの声に答えていった。

「今まで出来なかった挨拶をしておきたくてね」

 感傷と言えばそうなのだろうが、何となくしておきたかった。

 自己満足であるかもしれないが、それでも区切りをつけないと先に進めなくなりそうだった。

 あの時ああしてれば、という後悔を一つ増やす事になると確信出来る。

 だから、この瞬間に会いに来た。

 一つの行動が終わり、次の行動が始まるまでの間隙を利用して。

 これで、やっておきたい事の一つは消えた。

 あとは、向かう先でどう行動していくかである。

「それじゃ、行けるところまで行こう」

 そういって運転席と後ろを振り返る。

 全員から、

「はい」

と返事を貰えた。

 頼もしいものだった。

 稼いだ貢献度で更に能力を成長させた彼等となら、行く先でもどうにかなると思えた。

「とりあえず燃料の続く限り進もう。

 無くなったら、その場で稼いで更に先まで。

 行ける所までとにかく行ってみよう」

 危険と言えば危険な事である。

 だが、トモキも仲間も躊躇う事は無い。

 進む先に何があるのかを確かめるためにも、これまで到達出来なかった所まで向かわねばならない。

 これから後に続く者達の為にも、何かを見て確かめてこなければならない。

 やれる事を出来るだけやるしかない。



 そして、そんな義務感や使命感だけでなく、期待するものもある。

 この先にある何かを真っ先に見る事が出来る、確かめる事が出来る。

 最先端にいる事になる。

 未知の危険もあるが、誰よりも早く触れる事が出来る特権もある。

 不安も大きいが、高揚感も確かにあった。

 安心出来る場所での居心地の良さとは違う、これから遭遇する何かに希望を抱いていた。



「行っちゃうねえ」

「ええ、走っていきますね」

 トンネルの中に入っていったトモキ達を、テルオとカズアキはじっと見つめている。

 その姿が見えなくなっても、その場から動こうとせずに。

「また帰って来ますよね」

 一緒にいたヒトミが望みと不安が混ざった気持ちをあらわにする。

 料理を出す仕事も一段落した後だったので、遅ればせながら見送りに来たところだった。

 トモキとの挨拶は出来なかったが、その姿を最後に見る事は出来た。

「まあ、何とかなるよ。

 トモキ君、強いもん」

「そうでござるな。

 モレら一期生の中では一番であります」

「随分と差をつけられちゃった気がして、少し寂しいけどね」

「まあ、それはお互いさまであります」

 最近は集落となりつつある居住地のまとめが忙しく、モンスター退治に出かける余裕もなくなっていた。

 その分成長は遅れ、トモキとは大きな差となっている。

「私も、かなり違いが出て来てます」

 料理に専念してるヒトミは言わずもがなである。

 彼女の作る料理を楽しみにしてる者は数多く、決して卑下する事はないのだが、直接戦闘に関わってない事を気にしていた。

「でも、トモキ殿は帰って来たときに楽しみにしてるようでありますよ。

 ヒトミ殿の作る料理を」

「美味しくなったからね、前よりも更に。

 今までも十分美味しかったけど」

 嘘でも何でも無く、ヒトミの料理を楽しみにしてる者は多い。

 トモキもその一人であり、遠出から帰ってきた時の楽しみであるのも事実だ。

 味の方も最初の頃より更にレベルも上がり、確実に上手くなっている。

 調理場の設備も調い、食堂も作られた事で、より本格的に料理を提供出来るようにもなっている。

 モンスター退治には関係してないが、この場にいる者達の楽しみの一つとして定着していた。

 それはモンスターを倒すのとは違った形での貢献である。

「次にトモキ殿が帰って来た時の為に、がんばってもらいたいでござる」

「そうそう。

 殺伐とした事をして来るんだから、暖かいご飯で迎えてあげてよ」

「それは、もちろんです」

 言われるまでもなかった。

「今度帰って来た時に、ご馳走をちゃんと出せるようにしておきます」

「そうだね。

 俺達もここをそれまで守っておかなくちゃ」

「帰って来たら何も無い……ではすまされないでありますな」

 トモキとは別の決意をしながら三人は、出発した者の帰還を待つ事にしていった。





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やしろトモキ


26歳



一般教養; レベル3


運動: レベル3


格闘: レベル3


回避: レベル2


刀剣:レベル5 → 7


射撃/ボウガン: レベル2


発見/察知: レベル5


隠密/潜伏: レベル5


野外活動: レベル3


指揮: レベル1


戦術: レベル1


教育: レベル1 → 2


心理: レベル0 → 1


運転: レベル2


操気法: レベル0 → 1




※レベル1~3: 趣味の段階。最低限の質は確保出来てる


※レベル4~6: 一般的な作業員として十分な段階


※レベル7~10: 職人とみなせる段階。



<< 能力表示 >>





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広田マサタカ

 刀剣 レベル4 → 9

 盾 レベル0 → 3

 回避 レベル1 → 6

 戦術 レベル0 → 2



松庵寺キヨヒデ

 刀剣 レベル3 → 4

 治療 レベル2 → 7

 医学 レベル0 → 6



村瀬シュウジ

 ボウガン レベル3 → 5

 刀剣 レベル0 → 3

 発見/察知 レベル0 → 5

 野外活動: レベル0 → 1

 運転: レベル0 → 2



照島コウスケ

 ボウガン レベル3 → 5 

 機械知識 レベル0 → 5

 工作 レベル0 → 5



柴村トシユキ

 刀剣 レベル3 → 8

 盾 レベル0 → 4

 回避 レベル0 → 6



<< 参考情報 >>


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