第83空間 どっちつかずになるより、まずは一点突破
「移動しながら稼いでいくならこれでもいい。
けど、それだと手間が無駄に増える。
最初はある程度稼いでいこう」
そう言ってトモキは皆を見渡す。
「お前らは以前より格段に強くなってる。
3人で行動すればトンネル前でもやっていける。
だから、二手に分かれて稼いでいこう。
何ヶ月かは」
「探険は後回しって事ですか」
「燃料がないとどうしようもないしな。
それにレベルも。
お前らは強くなったけど、まだまだそこに留まってもらいたいくない。
もっとレベルを上げて欲しい。
一人でモンスターを何体も倒せるくらいに」
「となると、レベル7とかそのあたりまで上げろと」
「そうなるな」
戦闘についてはトモキと同等になる必要があった。
「それに、武器や車の修理、料理とかもおぼえてくれるとありがたい。
治療ももっとレベルを上げて確実性を増してもらいたい。
探知もだ。
戦闘もそうだけど、こういったものも上げていかないと、この先苦労すると思う」
戦闘だけが探険ではない。
むしろ探険においては戦闘以外の技術の方が求められる。
それらも身につけていってもらいたかった。
「そんなわけで、何ヶ月かはモンスター退治に勤しもうと思う。
全員のレベルがもっと上がるように」
「探険の方は?」
「それからになるだろうな。
そこからは、稼ぎを燃料代に全部投入して、出来るだけ奥の方まで進んでいきたい」
成長と探険を分けて行う事になる。
集中してつぎ込む分、一点に特化する事が出来る。
それ以外の事は全く手つかずになるが、今はそれも仕方ない。
とにかく今はまだ技術的に不安がある。
そこを補強しておかないと、この先何かあった時に立ち往生する事になりかねない。
「その時になって右往左往するなって御免だからな」
探険に出向くにも最低現のレベルは必要である。
そこをまずは確保しなければならない。
燃料はその後でも十分であった。
「それに」
「それに?」
「代わりの運転手も必要だし」
現在、運転できるのはトモキだけ。
これがトモキの負担を大きくしていた。
「なるほど」
「分かりました」
周りの者達もそんな彼の苦渋を察していった。
それからトモキ達は再び出発していく。
出かける前にいつもの資材提供をしていき、ついでに何人かを同乗させていく。
となりの空間のトンネル前まで同乗者を連れて行くだけであるが、ほんの少しでも車の便利さを知ってもらう為である。
効果は大きく、今まで数日かけていたところを一時間程度で走破した事に彼等は驚いていた。
久しぶりに自動車に乗ったというのも感動だったようだ。
ともあれ自動車の有用性を知った者がわずかながら増える。
それが今後にどう影響するか分からないが、入手を求める方向に進むだろう。
よりよい発展をトモキは期待した。
それからトモキ達も移動を開始する。
適当な空間で足を止め、トンネルに3人ずつ貼り付いて戦闘を開始していく。
予定する滞在期間は半年に及ぶ。
その間、ひたすらレベルを上げていく事になる。
既に危なげもなく戦えるようになってるだけに、貢献度を稼ぐのは順調だった。
稼いでレベルを上げていくから、より一層危険は減っていく。
時間の経過と共にトモキ達の戦力は格段に向上していく。
単純な戦闘力だけではない。
それ以外の技術も成長してきている。
キヨヒデは治療の腕を上げ、たいていの病気や怪我に対応できるようになっている。
その腕を振るう機会はほとんど無いが、何かあれば頼れる存在がいるというのは一同に安心感を与えている。
同じようにコウスケも修理のためのレベルアップを始めていった。
まだ鍛冶師のような事は出来ないが、ぐらついた武器の留め具を治したり、壊れた握りの部分を修正したりといった事は出来るようになっている。
そんな事が戦闘における安心感に繋がっている。
探知技術をのばし始めたシュウジは、トモキに変わる一同の目と耳になり、皆に安心と安全を提供し始めている。
必要な道具の確保も始まり、成長が一旦横に置かれる事もあったが、それも必要な措置として誰もが理解していた。
治療には薬や医療器具が必要だし、修理には消耗品となる材料と工具が必要である。
これらが無ければ仕事にならないので、誰も不平や文句を言う事はなかった。
むしろ、多少は自分達も負担しようと、購入に手間のかからないものは提供していく。
いずれは自分に返ってくるものなので、変な出し惜しみはしない。
少しずつ充実していく技術と道具がトモキ達の集団としての能力を上げていく。
目論見通り、戦闘を担当する者は単独でモンスターの集団と渡りあえるように。
支援系の技術を伸ばしてる者達は、その効果を確実なものとしていっている。
トモキ自身も半年に及ぶ戦闘の果てに、一つの到達点に辿りついた。
それらを携えて、一度居住地へと戻っていく。
「凄い事になってますね」
トモキ達の状態を目にしたカズアキが驚いていく。
「レベルが上がってるからな。
少人数でもモンスターを倒せるし、一人当たりの取り分を増えてるから」
「それはそうでありましょうが。
それにしてもこれは……」
見せてもらってる能力を見て、カズアキはそう言うしかない。
半年という時間をかけての事だが、トモキ達のレベルは格段に向上していた。
その能力は既に上位陣に接近している。
「これは相当なものでありますな」
素直にカズアキは賞賛する。
必要な技術がレベル5やレベル6に到達してる者がほとんどだ。
戦闘もそれなりにこなす事が出来る状態で、なおかつ探険に必要な技術を伸ばしてるというのは驚く。
「それに、トモキ殿のそれ……」
ステータスにある文字が驚きを誘う。
「操気法────でありますか」
「ああ。
10万点で出て来たのをとってみた」
「ではこれが、超能力や魔術といったものになるでありますか」
「その一つだと思う」
これを得る為に半年の成果の全てを費やした。
おかげで他の技術は全く成長させられなかったが、効果を確かめるためと割り切った。
「それで、どれほどの価値が……というか、どんな内容だったでありますか」
「それがなあ……」
そこでトモキは言いよどむ。
何となくそれでカズアキも察した。
「あまり、意味がなかったと」
「いや、そうでもないんだが」
歯切れ悪くトモキが説明をしていく。
明日19:00に更新予定。




