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第8空間 慎重で臆病な戦い方

 時間をかけて慎重に進んだにも関わらず、移動距離は二十メートルもない。

 だが、それだけでトモキはかなり気力を使っていた。

 そんな状態でこれから戦闘をしようというのだから大変な事になってしまっている。

 こんなんで大丈夫だろうかと自分でも思うのだが、やるしかないと腹をくくって次の行動にうつっていく。

 ここまで持ってきた、その辺りに落ちていて折れた枝を構えて投げる。

 くるくると周りながら飛んでいくそれは、トモキやマキ達とは別の方向に向かい、そこに生えてた草に飛び込んだ。

 当然ながら音を立てていく。

 驚いたのかモンスターはそちらのほうに振り向いていく。

 それがトモキの狙いである。

 木陰から一気に走りだしモンスターへと向かっていく。

 さすがにモンスターもそれに気づいて再び振り向くが、それでもトモキが接触するのが早い。

 示現流でいうところのトンボの構えに似た、刀を斜めに構える体勢から一気に腕を振る。

 刀を握った腕を体でさらに振りおろし、相手の足を狙っていく。

 何も考えずに振り切った刀は、狙い通りにモンスターの足にあたる。

 切断まではいかなかったが、獣毛を切断し、肉に食い込む。

 固い何かに阻まれはしたが、勢いに乗ってそのまま足を滑り抜けた刃は、振り抜ける限界の位置で止まる。

 動きが一瞬止まるが、さすがにモンスターもすぐに行動は出来なかったようだ。

 絶叫をあげて切られた足をおさえていく。

 その間に少しだけ後ろに飛び退って距離をおく。

 その場から二の太刀三の太刀を繰り出す度胸はなかった。

 絶好の機会かもしれないが、まずは安全を確保である。

 それに、相手は今膝をついてる。

 頭の位置も低い。

 動きも制限されている。

 この機会を逃すわけにはいかなかった。

 かがんで、手を地面に付き、それを掴む。

 何の変哲もない土。

 それを狙いやすい位置に下がってるモンスターの頭に投げつける。

 拡散した土は、それでも狙い通りにモンスターの顔に当たった。

 当然その中の幾つかは目に入る。



 ぐぎゃあああああ!



 更に絶叫を放ったモンスターは、目をつむって頭を振る。

 狙い通りに目つぶしが成功した。

 これで足を切った以上に簡単にモンスターに攻撃をしかけられる。

『さっきもこれで上手くいったし』

 行動を始める前、地面を見つめていたマキの言葉を思い出す。

『こういう土でもさ、顔に向かって投げれば目つぶしには使えるんだよね』

 なるほどと思った。

 正面からぶつかりあう戦闘方法ではないが、十分すぎるほど有効な手段だ。

 先ほど倒した最初のモンスターも、これで目をやられたのだろうと納得する。

 道理でいきなり動きがにぶったわけだと今更ながら納得する。

『これならそこらにあるし、いつでも使えるから。

 なんなら最初にあいての顔にこれをぶつけてやれば、かなり楽に仕留められるでしょ』

 それもそうだなと思ったトモキは、迷わずそれを用いた。

 効果は抜群だった。

 モンスターは目を開けられなくなって、腕をめくらめっぽうに振り回している。

 その腕に触れないよう注意をすれば簡単に倒す事が出来る。

 既にマキも駆け足で接近をしてきている。

 何を思ったのかカズアキも斧を握って突進してきている。

 その二人に負けじとトモキもモンスターに向かう。

 とりあえず狙うは、振り回してる腕。

 近づこうにも危なくてしかたない。

 それを黙らせる為に、大上段から刀を一気に振りおろす。

 再び刃が腕に食い込んでいく。

 やはり固い何か(おそらく骨だろう)に当たってしまうが、その骨を滑るように刃が抜けていく。

 足と同じように腕を切り裂かれたモンスターは、そこらに血液をまき散らしながらもだえていく。

 更にそこにマキが近づき、前回トモキがやったように剣を胴体に突き刺していく。

 体を貫通し、切っ先が反対側から飛び出している。

 モンスターは体の動きを大きく制限する。

 そこにカズアキが一気に近寄り、振り上げた斧をモンスターの頭に叩き込む。

 技も何もない動きであったが、遠心力と分厚い刃の重さによってモンスターの頭が叩き割られる。

 動く相手には命中させにくい斧であるが、手足を切り裂かれ目も潰されたモンスターならばさほど苦労する事なく命中させる事が出来たようだ。

 それが致命傷となり、モンスターは地面に倒れていった。

 本日二体目のモンスターはこうして倒れていった。



 核を切り取られ、体を霧散させていくモンスター。

 それを見て三人はすぐにマキとテルオの所へと戻っていく。

「さっきの叫び声を聞いて、周りの化け物がよってくるかもしれないでござる。

 急いでここから離れるでござるよ」

 カズアキのその言葉に五人は即座にそこから逃げ出した。

 言われてみればその通りで、その場に残るのは危険きわまりない。

 まだモンスターの習性などは分かってないので何とも言えないが、だからこそ小さな可能性も否定出来なかった。

 何も分かって無いという事は、何の対処も出来ないという事でもある。

 そんな状況であるからこそ、思いつく事は全部注意をはらうしかない。

 どれほど慎重にやっても慎重すぎるという事は無いのだから。

 少なくとも今の段階では臆病な振る舞いをした方が無難である。

 出来るだけ急いで、でも足が速くない者にも気をつけながら、一同はその場を後にした。



 成果はそこそこだった。

 貢献度はトモキが40点、マキが40点、カズアキが20点だった。

 分配は均等に頭割りというわけではないようだった。

「どういう振り分けかたしてんだろ」

「なんとも言えないですが、与えたダメージで変わるのかもしれませぬ」

 カズアキの考察になるほどと誰もが思った。

 確かに先ほどの戦闘でいえば、この点数配分くらいの活躍だったように思える。

 トモキはモンスターの真っ正面に立ったし、マキはモンスターにとって致命的と言える一撃を与えた。

 最後に止めを刺したのはカズアキだったが、それまでに他の二人がモンスターの動きを止める事が出来たからの成果である。

「そう考えれば、この分配には納得でござる」

 つっかえながらも考えを語るカズアキの言葉に、誰もが納得していく。

「よく分かったな」

「いや、ネトゲでだいたいこういう配分だったから。

 たぶんそうじゃないかと思っただけでござるよ」

 なるほどとトモキは思った。

 意外な所で意外な経験が役立ってるというわけだ。

「でもまあ、貢献度も入ったし、これで少しは余裕が出てきたね」

 その通りだった。

 トモキはおにぎりを出したから少し減って98点。

 マキはこれで90点。

 カズアキは今回が初めてであるが、20点を手に入れてる。

 明日も同じくらい点数を手に入れる事が出来れば、飢え死にする事は無い。

「ま、そろそろ食事にしよう。

 さすがに腹が減ったし」

 マキに促され、全員何を食べるか考えていく。

 まずはトモキとマキとカズアキである。

 三人は自分の食べたいものを表示された一覧から選んでいく。

 とりあえず弁当といくつかの食べ物を取り出し、それを並べる。

 ヒトミとテルオには、メニューを表示させて欲しい物を選ばせた。

 全員に食事が行き渡ったところで誰もが我先にと食べはじめる。

 気が張ってて意識もしなかったが、かなり腹が減っていた。

 誰もが何もいわずに黙々と食べていく。

 他の事を考える余裕など全くなかった。



 食べ終わって満腹になったところで、ふトモキは疑問を抱いてしまった。

「このゴミって、どうすりゃいいんだろ」

 食べ終わったあとの容器が残ってる。

 処分するにもやり方が分からない。

「燃やしてもいいのかな」

「でも、それだと環境汚染とかが気になるでござる」

「ダイオキシン問題か……。

 懐かしいな」

 今まであまり喋らなかったテルオが口を開く。

 だが、意味を理解した者はあまりいない。

「ダイオキシン……ってなんですか?」

 尋ねるヒトミに、

「昔、そういうのが問題になった事があるんだよ」

とテルオが答えた。

 年代の差というか、知ってる事に隔たりがある。

 だが、環境問題もそうだが、目の前のゴミをどうするかというのは結構大きな問題である。

「このままここに捨ててくか?」

「それも気が引けますな」

「でも、ゴミを出す所もないですよね、ここって」

「焼却場とかは、ないだろうなあ」

 考えてみると結構面倒な事ではある。

 そして、何気なく出て来たそれらの言葉を聞いて、トモキはあらためて実感する。

「本当にここには何もないんだな。

 今まであったものが」

 たかがゴミを処分する。

 それだけの事も今は出来ない。

 ゴミを出して、回収されて処分する場所にもっていかれるという流れが存在しない。

 当たり前の日常の中にあった事が、どこにもない。

 こんなちょっとした事からも、ここが今までいた場所でない事を突きつけてきてるようだった。

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