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捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった  作者: よぎそーと
五章

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第77空間 機動力獲得とその負担

 平たく幅広な車体。

 乗用車より大きめな車輪と、それによって高くなってる車高。

 屋根の代わりにフレームによて補強されてる運転席部分と、その背後のピックアップトラック形式の荷台部分。

 野外でも難なく走り回せるといった雰囲気を放出するそれは、間違いなく四輪駆動車であった。

 それに乗ってきたトモキとシュウジをマサタカ達は出迎え、懐かしく感じるエンジン音を耳にしていった。

 そんな彼等にトモキは、

「とりあえず乗ってくれ」

と促す。

 言われて四人は、荷台の方に乗り込んで適当に座る。

 ドアはついてないが、乗り降りがしやすいように踏み台はついている。

「全員乗ったな?」

「ええ、はい。

 乗りました」

「じゃあ、何かに掴まっててくれ。

 この車、剥き出しだから」

 確かにこの車には、座席がない。

 そんなものがあるのは運転席と助手席だけだ。

 荷台部分は文字通り荷台で、人が乗り込む為の設備など全くなかった。

 やむなく四人は、荷台部分の縁に手をかけていく。

 シートベルトなんて贅沢なものも無いので、そうするしかない。

「じゃあ、行くぞ」

 そう言ってトモキはアクセルを踏み込んでいった。

 なお、ギアチェンジはオートマチックになってるようで、そちらの方で手間取る事は無い。

 軽快……とはいえない発進であったが、車は大きな車体の割には滑らかに進み出した。

 そのままトモキ達はトンネルの中に入っていく。



「一応ボウガンとか用意しててくれ。

 モンスターが出て来たら面倒だからさ」

 後ろのほうに聞こえるように大きな声でトモキが注意を促す。

 トンネル内でモンスターに遭遇したら色々と面倒な事になる。

 それ以外でも、モンスターと接近する可能性はある。

 そういった時に、モンスターに対処出来るようにしておかねばならない。

 後ろの四人の中で、射撃が中心の者達はステータス画面からボウガンを取り出していく。

「それなら、俺も後ろの方がいいですか?」

 助手席のシュウジがお伺いをたててくる。

 彼も射撃戦闘が基本なので、後ろに回った方が良いかもしれなかった。

「そうだな……じゃあ、誰かと交代で」

 言われてシュウジは、荷台の方に移動する。

 運転席と助手席の間は人が一人入れるくらいに間があいてるので、後部との移動はそれほど困難ではない。

 そうして後ろに回ったシュウジと入れ替わるように、座席の間からマサタカが顔をだす。

「それで、この車はどうしたんですか?」

 これから何処へ向かうのか、今後はどのようにやっていくのか、といった事を後回しにしてそんな事を聞く。

 すぐさま答えが必要な問題ではないが、疑問や好奇心が仕事に関わる用件を上回った。

 そのマサタカにトモキは、

「ま、助手席に座れって。

 そこじゃおちつけないだろ」

と着席を促す。

「俺も後ろを振り向いて喋るの大変だし」

「はあ……それでは、失礼して」

 そう言ってマサタカは大柄な体を助手席に入れていく。

 車体もそうだが、内部も比較的余裕のある造りになってるので、180センチの体格でもそれほど窮屈にはならない。

 そんなマサタカに話すように、この車について語っていく。



「そんなに話す事があるわけじゃないけどな」

 実際、特に何か大きな出来事があったわけではない。

 貢献度を貯めて10万に到達したところで、購入可能物品の中にこれが出て来たのだ。

 それを見てトモキは、最初は呆然として絶句し、それから打ち震えるほどの喜びを胸の中から沸きたたせていった。

「そんなわけで、これを購入したのよ」

「はあ……すごいですね」

「でもな、動かすのも大変でさ。

 これ、軽油で動くんだけど、それが50リットルで貢献度1万点なんだよ」

 それだけを手に入れるのに、トンネル前で一週間はモンスターを倒さねばならない。

 それもほとんど一人で。

 なお、余談だが他の石油類も概ね同じ量で同じ貢献度が必要だった。

「そんなわけだから、途中でなんどか貢献度稼ぎをしなくちゃいけなくなる。

 それは覚悟しておいてね」

「ええ、まあ、それは。

 こっちとしても稼げるのはありがたいです」

「でも、こいつ燃費がいいらしくて、1リットルで20キロから30キロは走れるらいしいんだ。

 だから、当分は無理して戦闘しなくてもいいけどね」

 とはいっても、余裕を持っておきたいのも確かである。

 給油してある分だけでなく、いつでも補充が出来るように予備は確保しておきたい。

「ただ、折角足が手に入ったから、行けるところまで一気に進んでみようと思う。

 これなら、空間一つを横切るのにもそんなにかからないし」

 時速50キロならそれこそ一時間もあれば横切れる計算である。

 実際には様々な障害もあるのでそう簡単にはいかないが。

 それでも、格段に移動速度は向上している。

「まずはこれで行けるところまで進んでおこうと思う。

 地図の作成とか、看板と標識の設置は頼むよ」

「はあ……」

 曖昧な返事をしてマサタカはした。

 まだ呆然というか呆気にとられてしまっている。

 それでも、トモキの言いたい事は理解して、後ろのいる者に声をかけていく。

 言われた者達は、さっそくステータス画面を開き、材料を購入。

 看板や標識作りに入っていった。

 動く車の上なので、車酔いの可能性もあったが、それに気づく事なく行動を開始していく。



 それから車による移動で、空間探索はかなり早く進んでいった。

 今まで数日かけていた横断が本当に一時間程度で終わっていく。

 看板や標識をたてたり、地図を作ったりするので時間はとられるが、それでも進み具合は早い。

 横断するだけなら、一日で五カ所から十カ所の空間を走破する事が出来る。

 トンネルの位置を確認するなどである程度外周をぐるっと回るので、そう単純なものでもなかったが。

 それでも、二時間から三時間で空間の外周部をほぼ巡る事が出来る。

 今までであれば、半月から一ヶ月かかっていた作業がだ。

 あらためて文明の利器はすごいのだと実感した。



 ただ、欠点がなくもない。

 まず、燃料が必要になる。

 当たり前だが、これがないと便利な機械もただの鉄くずにしかならない。

 その為、燃料確保の為にどこかで戦闘をしなくてはならなくなる。

 そして、必要になる貢献度が食料などをはるかに超える。

 これがまず大きな課題になってくる。



 エンジン音を始めとして、大きな音も出やすい。

 都市部における様々な雑音がない空間のこと、意外なほど音が響く。

 それが周囲からモンスターを集める原因になる可能性があった。

 寄ってくるのが一体くらいなら良いのだが、周辺をうろついてるものをまとめて集めてしまうと厄介である。

 特に寝入ったところを襲撃されると最悪の事態を引き起こしかねない。

 この部分はどうしようもない事なので、諦めるしかない。



 補修や整備の問題もある。

 壊れたらそれで終わりなので、ある程度の補修や点検は欠かせない。

 簡単に壊れるものではないが、念には念を入れておきたかった。

 そうなると、その為の技術が必要になる。

 機械整備や修理の技術の保有が急がれた。

 その為には、工作の技術だけでなく、機械の知識も別に必要になるようだった。

 簡単な作成なら工作という技術で出来るようだが、車輌のようなものになると専門知識が別に必要なようである。

 こうなると、他に寄り道して成長、というわけにはいかない。

 専門の整備員が必要になる。

 当然、専用の工具や必要な部品も別に用意しなくてはならない。

 これらの調達費用も馬鹿にならない。

 ものによるが、数百点で済むものから、数千点もかかるものまである。

 動力関係の重要部分は1万点や2万点といった世界だ。

 この部分でも莫大な貢献度が必要になる。

 特に、もっとも故障というか壊れやすそうな車輪は早急に予備を手に入れておきたかった。



 他にも、トモキだけ運転してるというのも負担が大きい。

 交代で運転が出来る者が欲しかった。

 残念な事に、この中で運転免許の保有者はトモキだけである。

 免許そのものはこの世界では不要であるが、運転技術がある者が一人だけなのは困る。

 出来るだけ早く運転技術をもった者を育成しておきたかった。



「そんなわけで、申し訳ないが皆にも一層の協力を願いたい」

 夜、車を停めて話し合いをしてる中で、トモキは頭を下げる。

「車の維持だけでも結構な手間がかかるし、部品は俺一人で調達するのも難しい。

 無理強いは出来ないけど、出来るだけ皆も持ち寄ってくれると助かる」

「しょうがないですね」

「俺達も使ってるし」

「構いませんよ、全然」

「ただ、そうなるとモンスター退治にもっと励まないといけないですね」

 全員、拒絶はしない。

 トモキの提案を受け入れていく。

 ただ、負担の大きさを心配する声はあった。

 このあたりは当然である。

「それと、誰が修理とかしてくかですね」

「技術の成長割り当て、見直さなないと」

「一応、全員ある程度の成長はしてるけど」

 そこも見直す必要が出て来ていた。

「道具の修理とかする奴が受け持つってわけにはいかないか?」

「武器や防具の手入れと、車の修理を同じように出来るのかな」

「別々の技術扱いだったら、一緒にするわけにはいかなくなるな」

 このあたりは実際にやってみないと分からない。

 ある程度工作技術で併用出来るかもしれないし、全く別のものとして扱われるかもしれない。

「コウスケが技術をとってくれるまで何とも言えないか」

 修理関係を受け持つつもりの彼の意見を待つしかない。

 ただ、まだ戦闘技術を上げてるところだったので、実際に修理にまで手を出せてない状況だった。

 レベル3のボウガン技術は持ってるが、そこから更に成長をさせているところである。

 これは他の者も大体同じで、より確実に戦闘をこなせるようにと、戦闘技術を中心に上げている。

 例外はキヨヒデの治療技術で、生死に関わるから最優先で身につけるよう求められた。

 その為彼の治療技術はそこそこのレベルにまで到達している。

 こういった状態なので、必要な人材育成についてはこれまでの方針を見直さねばならなくなった。



「あと、部品とかは出来るだけ荷台に載せておこう」

 話し合いの中でトモキはそう提案する。

「ステータス画面に放り込んでおいた方が手軽になるけど、それだと持ってる奴が取り出すまで使えなくなる。

 もし部品を持ったまま別行動とかになったら、何か合った時に困る。

 共用しなくちゃならないものについては、出来るだけ誰でも手に取れるところに置いててくれ」

 これも今後車を使っていく上で必要になる事である。

「入れ物は俺の方で用意するから」

 それくらいの手間は惜しむつもりはない。

 もっとも、貢献度をほとんど使い切ったトモキには、すぐさま用意する事が出来なかったが。



「それで、車の方はここまででいいとして」

 ある程度話が終わったところで、トモキは話題を切り替える。

「貢献度10万点までいって出て来たもんだけど、他にもある。

 これも皆に聞いてもらいたい」

 全員の目があらためてトモキに向かっていった。

 一気に文明化していってます。



 明日19:00に更新予定。

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