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捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった  作者: よぎそーと
五章

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第75空間 使わずに貯めておく意義

「でも、レベルを上げないで貢献度を貯めるってよくできましたね」

 出発して空間を渡り歩いてる最中であった。

 沈黙に堪えかねたのか、トシユキがトモキに声をかけていく。

「俺、貯まったらレベル上げに使っちまうから、なんか凄えですよ」

「そうか?」

 あまり意識しなかったが、端から見るとそうなのかなと思った。

「ある程度レベルも上がったし、無闇に使う必要もなかったからな」

 ここに来た当初ならともかく、ある程度のレベルになるとそれほど急いで上げる必要もなくなった。

 それが自然と貢献度の蓄積につながっていったのかもしれない。

 とはいえ、全く使わないわけでもない。

 居住地に戻れば、お裾分けとして材木などをある程度購入して提供している。

 今回も1万点分の資材を提供している。

 無償の奉仕というわけではなく、それが居住地利用の代金であると考えてるからである。

 それに、居住地が発展しないとトモキも恩恵を受けられない。

 即座に返ってくる事は無いだろうが、発展は何かしらトモキの為にもなるはずだった。

 だから、無理のない範囲である程度は放出する事にしていた。

 実際、5万点のうちの1万点である。

 減った分は確かに多いが、残る分も多い。

 それだけトモキがモンスターを倒しているという事でもある。

「俺も早くそこまでいきたいですよ」

 羨ましそうにぼやくがトシユキの率直な気持ちをあらわしていた。



「まあ、意識して貯めてるのも確かだけどな」

 使わないから貯まってるのも事実だが、無駄遣いしないように心がけてもいた。

 それに、なるべく余裕を持っておきたいという思いは常にある。

「いざって時に何も出来なくて困るなんて事になりたくはないし」

「はあ……なるほど」

「危機管理って事ですか?」

 キヨヒデが話に加わってくる。

 彼も歩いてるだけなのに飽きてきてたのかもしれない。

 また、話の内容にも興味があったのだろう。

「そんな大したもんじゃないけどな」

 答えながら、そうしている理由についても話していく。

「前に一度、それが出来なかった事があるからさ。

 何かあった時に少しでも対処が出来るようにしておきたいんだ」

「それは、何があったんですか?」

「ん、まあ……それはな……」

 聞かれて返事に困った。

 話してはいけない事では無いが、どうしても口が重くなる。

 その時の事をまだまとめきってないのも大きい。

 思い出すとどうしても気持ちがふさぎ込んでしまう。

 だが、後進のために、かつて何があったかを語るのも先輩のつとめと、忌まわし出来事を頭の中に浮かびあがらせる。

「前に馬鹿な事をする奴らがいてさ。

 そいつらのせいでモンスターに吹き飛ばされた人がいるんだ。

 モンスターは倒す事が出来たけど、その人を助ける事が出来なくてね。

 治療方法も身につけてなかったし、薬とかもなかったから。

 それで、何も出来ないでその人を死なせちまった」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「まあ、本当に最初の頃で、貢献度とかも全然なかったし、もうどうしようも無かったんだけどな」

 本当にどうしようもなかった。

 あの時、少しでも余裕があればと本当に思った。

「今ならどうにか出来たと思う。

 治療をその場で身につける事も出来るし、必要な薬や危惧を買う事も出来る。

 でも、それも今になってだから」

 あの頃の事ではない。

 その時今のような状態だったら、彼女を助ける事が出来たかもしれない。

 貢献度が貯まり、余裕が出来てくればくるほど、そんな思いが強くなる。

「そんなわけだから、出来るだけ貢献度は確保しておこうと思ってね」

 同じ失敗を繰り返さないために。

 手元にあれば何とか出来るかもしれない事もある。

「まあ、なんかの参考にしてくれ」

 取り返しの付かない過去に少しでも価値を与えるには、それを参考にして活かすしかない。

 そんな期待をこめて、苦い思い出を少しばかり後輩達に話してみた。

 聞いてる者達は、何も言えずにトモキの事を見つめていった。



 とはいえ、これもまた難しい問題ではある。

 ある程度の技量に到達しなくては生存そのものが難しくなる。

 そんな状態で蓄えなどと言ってる余裕は無い。

 特にモンスターと相対するならば、最低限の戦闘力は確保せねばならない。

 この段階では、まずはレベルを上げるのが最優先となる。

 蓄えを考えていけるのは、それからになる。

 レベルが一定の段階に到達したら、無理してそれ以上上げる必要もなくなる。

 そうなると急いでレベルをあげる必要もなくなる。

 むしろ、次に何が必要なのかを見極めるために時間をかけねばならなくなる。

 限度は当然発生するだろうが、それでも考えていくだけの時間は手に入れる事が出来る。

 ここで貢献度が必然的に貯まっていく事になる。

 もちろん新たに伸ばすべき方向が見えたらそちらに貢献度を割り振っていけば良い。

 何にしても、楽にモンスターを倒せるくらいの段階に到達するのが先という事になる。

 今の新人達、いや、トモキ達の同行者は、まだ成長のために貢献度を使わねばならない状態であった。

 あと少しでそこから脱却出来そうではあるが、それまであと何ヶ月かは必要だった。

(そうするとなあ……)

 貢献度を稼ぐためにどうするかを考えていく。

 モンスターを倒すのはもちろんだが、それをどうやていくかを考えていた。

 レベルが低いときは六人で当たっていたが、今はそんな安全策をとる必要もない。

 多少の不安はあるが、五人も大分成長してきた。

 ある程度は任せても十分にやっていける。

 となれば、今までと同じようにやる必要も無い。

(危険ではあるけど……)

 やってみようと思う事があった。



「そんじゃ、がんばれよ」

 二ヶ月の旅を続けて辿りついた空間で、トモキは仲間の一部と分かれる。

 接近戦が出来るマサタカ・キヨヒデ・トシユキと、ボウガンの技術のあるコウスケが一組になって残る。

 貢献度稼ぎの為にトンネル前で彼等は戦う事になる。

 そしてトモキはシュウジを伴って別のトンネルへと向かう。

「危険はあるけど、お互い頑張ろう」

 そう言ってトモキは歩き出す。

 貢献度稼ぎのため、危険ではあるが人数を分散する事にした。

 危険は増えるが、一人当たりの割り当ても増える。

 トモキはそこに賭ける事にした。

 皆も緊張はしつつも賛同した。

 誰もが貢献度を求めていた。

 少しでも余裕を作る為に。

 そんな仲間と別れ、トモキはこの空間にあるもう一つのトンネルへと向かっていく。

 伴うのは一人だけだが、今のトモキのレベルならどうになる。

 複数のモンスターと渡り合う事が出来るくらいのレベルになっている。

 シュウジが加われば、残ったわずかな不安要素も消していける。

 とにかく今は貢献度を稼ぐ事を最優先にしていきたかった。

 レベルを上げるためだけではない。

 貯めて一定水準を超えると出て来る次の購入可能品が知りたかった。

 そこに求める物が出てくるまでどれだけかかるか分からないが、貯めてみない事にはそれも分からない。

 その段階に少しでも早く辿りつくためにも、少数で多くのモンスターを倒さねばならなかった。

(やるしかないよなあ……)

 無理は承知である。

 だが、実力を考えての事でもある。

 今の自分ならばこれくらいは出来るという自負がある。

 それが過信でないと信じながら、草をかき分けて進んでいった。

 明日19:00に続きを。

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