第67空間 見つけることができた経験地稼ぎの方法
一ヶ月の旅で辿り就いた場所で戦闘を開始していく。
トンネル前で陣取り、敵が出て来るのを待って攻撃を開始。
出て来た敵を倒して次を待つのを繰り返す。
やってる事はルーチンワークである。
同じ事を同じように繰り返す。
それで貢献度を稼いでいく。
「経験値稼ぎみたいですね」
待機中の休息でそんな言葉が出てくる。
「まあな。
むしろそのものだよ」
否定する材料が全くない。
こんな訳の分からない所にやってきて、ゲームのような事をやってる。
違うのは命がけであるという事だけだった。
だが、モンスターというありえない存在を相手に戦ってるというのは現実感が薄い。
実際に目の前にいるのに、それが事実であると思えないでいる。
悪い夢を今も見続けてるような気がする。
「夢なら良かったんだけどなあ……」
思わず口をついて出た。
「何がですか?」
「こんな所にいるのがだよ。
なんでモンスター倒してるんだか。
俺達勇者じゃねえぞ」
「確かに」
「まったくです」
同行者達はその意見に賛同していく。
誰だって気持ちは同じだった。
(何でこんな所にいるんだ?)
等しくそれは共通している。
なので、少しでも時間が出来るとそんな事を考えてしまう。
生活の事とか生きる事とかも考えるが、それもこれも全てここに向かってしまう。
苦労して生き延びねばならなくなってるのも、こんな所に放り込まれたからである。
「どうしてこうなってんだか」
「何でですかねえ」
それが分かれば苦労はしない。
何も分からない事だらけである。
それでもやる事をやっていかねばならない。
「そろそろ次が来そうだな」
「そうですかね」
「だいたい同じ間隔でくるからな」
実際にそうだと限ったわけではない。
だが、何となく同じような調子で動いてるのは感じられた。
具体的に何処がというわけでえはないのだが。
なので、前回の出現からある程度時間が経過したあたりで動き出す。
見張りと攻撃の配置について、トンネルからモンスターが出て来るのを待つ。
「じゃあ、頑張っていこう」
声を掛け合いながら配置についていく。
ゲームと同じ現実味があろうとなかろうと、こればかりはやらねばならなかった。
敵は同じように動き、同じように倒して行く。
レベルが上がった事で手早く片付けられるようになってる。
最初の頃では考えられないほど手際良く。
その恩恵は新人ほど大きく、かつてのトモキ達であれば数ヶ月かかったレベルアップを一ヶ月で迎える事が出来る程になっている。
時間も手間もかかるのは同じだが、密度や内容が違う。
一度に数体のモンスターを倒していく事で、手に入る貢献度が違う。
レベルの高い者達との行動は新人にとって大きな恩恵であった。
(俺の時もこうだったらなあ……)
そんな新人を見て羨ましくなってしまう。
自分達の時にもまともな先輩がいればと。
何も無い所に放り出され、手探りでやり方を探したりせずに済んだ。
新人達が知るよしも無いだろうが、そんな彼等の境遇が羨ましいと思ってしまう。
彼等は彼等で大変なのではあるが。
(それはそうなんだろうけど)
分かってはいるが、やはり差を感じてしまう。
その差を作ったのは他でもない自分である事にも、色々と思うものがある。
楽をしたくて作り出してきた様々な事の恩恵を別の者達が受け取ってる事。
自分より恵まれてる事への嫉妬。
そんなものを抱いてしまった。
詮無いことであり、自分でもばかばかしいとは思いはするが。
(もっと成長して、俺が楽できるようになってくれればいいか)
そう思って気持ちを切り替える。
下が成長してくれないと、色々と滞る事もあるのだから。
そんなこんなでモンスター退治を一ヶ月ほどしてから帰還する。
稼いだ貢献度はやはり大きく、新人もレベルを一つあげている。
あと幾らか稼げば更に一つレベルを上げる事が出来るほどだ。
トモキやシンイチ・ユキタカも相応の貢献度を手に入れている。
レベルアップに必要な値にも到達している。
だが、さすがに全部をレベルに用いる事も無い。
ある程度余裕をもっておこうと、使わずに貯める分もある。
それが今は多くなっていた。
レベルを上げずともモンスターを倒せるほどになっているのが大きい。
そして、貢献度が貯まる事で新たな購入品が出て来るから、それを確かめたかった。
貢献度が貯まるほど、購入可能物品に表示される物が増えていく。
そうして表示される物は、高度な機械などが含まれている。
貢献度を貯めていく事で見つけたのだが、それらを手に入れる事が出来れば、利便性は更に上がるだろう。
今の所、2万点までの物品の閲覧が出来ている。
更に貯めればもっと多くの何かが見つかるかもしれない。
そう思ったトモキは、出来るだけ貢献度を残していく事にした。
何が手に入るのか分からないが、確かめなければ何があるか分からない。
それらの大半はトモキが使う事は無いかもしれない。
だが、他の誰かが必要とするかもしれない。
その為、何がどれだけの点数で手に入るかを調べておきたかった。
簡単には手に入らないかもしれないが、あるのが分かっていれば手に入れる手段が増えるのだから。
仲間の所に戻ったトモキは、現在確認出来る購入物品一覧を表示していく。
他の者にも閲覧出来るようにしたそれらを、何人かが凝視している。
手にしたノートに、一覧にある物品を書き込んで記録していく。
安全地帯になりつつある最初の空間では、様々な物品が必要とされている。
単純なところでは、住居を造る材木だったり、細かな食器だったり、物を入れておく戸棚や倉庫だったりする。
その他、灯りだったり竈だったり包丁だったりと生活に密着したものが多い。
何万点という点数が必要な物品はまだそこまで需要はないが、あれば便利なのは目に見えている。
それらが何点で手に入るかを知る為に彼等は記録を続けていった。
それが終わるとトモキはようやく自由になった。
帰ってきて、食事を出されてあれこれと話あって。
一晩寝てから次の日は新たに見えるようになった物品の表示に一日を用いる事になった。
多くの貢献度を稼いでこなければ閲覧不可能だから仕方ないが、表示するためだけに一日を費やすのは結構疲れた。
表示する意外は何もしてないが、ほとんど何もしないで座ってるだけなのが苦痛だった。
そこから解放されてようやくくつろぐ事が出来る。
「ご苦労様でござる」
カズアキのねぎらいの言葉が耳をつく。
「おかげ様で、色々とはかどってるであります」
「それは良かった」
探検隊として出発していった者達がもたらす成果が少なからず還元されてきている。
トモキ達もそうだが、稼ぎの一部を用いて材木を始めとした材料を提供している。
それらを用いて簡単な建築などが始まろうとしていた。
組み立てる大工などはまだいないが、それらも今後の貢献度稼ぎで育っていく事になるだろう。
この空間に来て、そろそろ三年。
ようやく大きな前進が出来そうになってきていた。
「そろそろ次の新人も来る頃でござる。
また探険で強化してもらわねばならなくなるでありますよ」
「そうだな」
長く外にいたからあんまり考えてもいなかったが、そろそろそんな時期だった。
それを考えると憂鬱になる。
既に何人かは育ってきているが、入ってくる新人を賄える程では無い。
新人を引率出来るだけの人材は今も不足のままであった。
「もうちょっと成長を早めるために、何とかしないといけないかもな」
「そうでありますな。
言ってはなんですが、もう少しレベルの高い人がいないと、新人の育成がままなりませぬ」
「シンイチとユキタカが使えるようになってるから、あいつらだけで組ませよう。
新人を二人くらいなら引っ張っていけるよ」
「ケンタとミノル達も上手く成長してきてるであります。
また編成しなおして、組を増やす事が出来そうになってるでござる」
「なら、もう少し新人を放り込めるな」
「ようやく新人を全部預ける事が出来るようになりそうであります」
探検隊一つは、熟練者二人と新人二人で出来ている。
たとえボウガンなどで戦闘力を底上げするにしても、これ以上加えるわけにはいかない。
そして、探検隊そのものがまだ三つか四つという現状では新人を全員育成するにはほど遠かった。
それが今回の探険というか強化訓練で新たな探検隊を組織できるだけの熟練者が育っている。
今いる新人の大部分をそこに参加させる事が出来るようになってきていた。
「これからはもう少し活動範囲を広げる事が出来るであります」
「長かったな」
少しでもこの空間について調べようとしてきて、それがなかなか果たせずにいた。
人が足りなかったり、物資が足りなかったり、能力がたりなかったりしたのが原因だ。
それが今ようやく解消されようとしている。
やろうと思ってから時間はかかったが、トモキ達はそこまで到達しつつあった。
21:00に続きの予定




