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捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった  作者: よぎそーと
一章

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第6空間 手に入れたものと、これからと

「そうだ、コーケン、コーケンドはどうなってるでありますか?」

 妙にかしこまった口調のぼさぼさ髪の言葉に、他の者達は疑問符を顔に浮かべる。

「先ほどの仮面の御仁が言ってた、コーケンドでござる。

 モンスターを倒したら手に入るとか言ってたであります」

 言われて思い出す。

 確かにそんな事を言っていた。

 ステータスを開いてそれを確かめていく。

 最初に表示される画面のすみにそれは表示されていた。

「50って書いてある」

「こっちにも」

 注意して見てなかったので先ほどとどれくらい変化してるのか分からない。

 だが、確かにそれは表示されていた。

「では、先ほどの仮面殿の言ってた通りでござるな。

 モンスターを倒したお二人は、貢献度を得たのであります」

「でも、どんだけ増えたのか分からないぞ。

 元の状態が分からないし」

「それなら大丈夫であります。

 モレのステータスの貢献度は0なので」

 言いながら大げさに肩を落としていく。

「そちらの二人も、おそらく同じかと」

 言われた残り二人もあわててステータスを開いていったようだ。

 トモキの目には見えない画面を確かめてるのか、二人は自分達の目の前をじっと見つめている。

「確かに……」

「ありません……」

 中年の男と、体格より大きめの服を着た地味目の少女が口を開く。

「やはりお二人がさっきのモンスターを倒した事で、貢献度を手に入れたのだと思われます」

 そう言ってる途中で、ぼさぼさ髪の男の前に小さな画面が表示された。

『功績度:0』と表示されている。

「これがモレの功績度でござる。

 見ての通り、全く、何も、これっぽっちも入ってないであります」

 少々残念そうに伝えてくる。

「じゃあ、さっきのを倒したからって事なんだろうな」

「おそらく」

 それ以外に違いが発生する理由がない。



「それで、貢献度で何か手に入りますかな?

 売買で何か表示されてれば良いのでありますが」

「あっと、待ってくれ」

 言われてステータス画面を操作していく。

 売買を選択し、何か無いかを探っていく。

「……まあ、あるって言えばあるな」

「こっちも表示されてる」

「おお、いったい何が?」

「ちょっと待て、表示する」

 そう言って画面を表示した。

 売買だけに限定しての表示は、二人が求めた通りに表示される。

「これは……」

 それを見てぼさぼさ髪が呆然とする。

「コンビニみたい」

 今まで黙っていた地味目少女が口を開く。

 その言葉通り、表示された物品の種類はコンビニのように見えた。

 というか、普通に売られてるものがそのまま画像表示されてるように見える。

「妙なリアリティを感じるでござる」

 なお、商品の横には数値が書かれている。

 おそらくそれが、必要になる貢献度なのだろう。

「試しに買ってみるよ」

 そう言って、表示された中の一つを選んでみる。

 ちゃんと手に入るかどうかを確かめるために。

 選んでからの操作は、通販サイトとほぼ同じだった。

 商品の種類もそうだが、こういう所も妙に現実っぽい。

 まるで世界最大手通販サイトを利用してる気になってくる。



 購入した物は一度所持品の中に放り込まれた。

 それを選択して現実に取り出してみる。

 物は手の中にあらわれた。

「確かに買えたな」

 買ったのはおにぎり。

 そろそろ食い物も必要だろうと思って手に入れたものだった。

 なお、必要貢献度は2点。

 これが高いのか安いのかは悩ましいところだった。

 一桁台なのは確かだが、命がけで手に入れた貢献度が50点。

 おにぎり一個でそのうちの4パーセントを使ったとなると結構痛い。

 消費税と同じくらいの痛手はあった。

 それは冗談にしても、やはり物品の値段はかなり考えさせてきた。

 商品の一覧を見てて思ったのだが、まともに食事をとろうと思ったら、全部で10点は消費しないといけなくなる。

 あくまでトモキの食事量をもとにしての事だが、そうなると、先ほどのモンスターを一体倒すだけでは全部で五回分の食事量にしかならない。

 一日一体倒していけば食うに困る事はないだろうが、命がけの戦闘を、最低でも一日一回はこなさねばならない。

 そう思うとかなり高い食事と言える。

 あるいは、それだけモンスターが安いという事にもなるのだろう。

 攻撃を受ければ命にかかわるような奴らを相手に、これはあんまりではないかと思う。

 誰が貢献度の配分を設定してるのか分からないが、今少し金払い(?)が良くてもいいではないかと思う。

 だが、こうなってる以上どうしようもない。

 まともに食べていくつもりなら、モンスターと戦って勝つしかない。



 別の問題もある。

 今の所、武器や防具が足りない。

 その為、トモキや赤毛女が戦うしかない。

 他の三人は貢献度を全く稼ぐ事が出来ないでいる。

 当然ながら、食事なども手に入らない。

 見捨てるわけでないなら、二人で三人を養わねばならなかった。

 そんな義務も義理もないので、見捨てても良いのだが。

 さすがにいきなりそうするつもりにはなれなかった。

 だとすると、三人の分も稼がねばならない。

 二人で一体を倒して、一日分の食料に匹敵する貢献度が手に入る。

 とすれば、残り三人分は二体ほどのモンスターを倒さねばならない。

 これはかなり手間になる。

 せめてあと一人くらいは戦闘に参加してくれればと思うのだが、今の状態ではそれも難しい。

 それこそもっと貢献度を貯めて、足りない武具を購入しないと厳しいだろう。

 死ぬのを前提に無理矢理戦闘をさせるなら別だが、そこまでトモキも鬼にはなれない。



 それについては他の者達とも話あっていく。

 三人はそれほど厚かましい性格ではなかったようで、

「確かに」

「そうですね……」

「やむをえんよなあ……」

とうなだれていく。

 どうやらタダ飯くらいへの抵抗はあるようだった。

 人間として最低限の部分はわきまえているようでありがたい。

 戦ってる最中に逃げ出した連中とは雲泥の差である。

 比べるのも申し訳ない。

「でも、どうするの。

 この人達の分まで私たちが頑張るわけ?」

「そこなんですよね。

 武器とかが手に入るまでは俺達が頑張るにしても、その後はどうするかです」

 正直、それだけの価値があるのかが分からない。

「戦闘に参加してくれるなら助かるけど、そうでないなら俺らが頑張る意味がない」

「まあ、そうでござるな」

「あいつらとやりあうのはかなり危険なんだ。

 それをやって、なおかつあんたらを食わせる理由があるかどうかだ」

「最終的には、モンスターと戦えという事でござるか?」

「そうなる。

 俺達だけがやるってのも割にあわないし」

 一方的に負担を強いられるのはどう考えてもおかしいという話である。

 トモキ達は奴隷ではないのだから。

「今すぐで無くていいから、そのうち戦闘に参加してくれ。

 それまではこっちも食料を渡すから」

「まあ、そんなところだろうね」

 赤毛女も同意見だった。

 他の三人もそこは頷く。

「ま、とりあえずあと何体か倒さないと。

 でないと、飯も買えない」

 手持ちの貢献度では、一応全員分の食事を出してもなんとかなるだけの量は買える。

 だが、明日以降の分は無くなってしまう。

 この調子では、新しい装備を購入する事など決して出来ない。

 とにかく貯金を、貢献度を増やさねばならなかった。

「今日はまだ時間もあるだろうから、もう少しモンスターを倒しておきたい。

 あと一体は倒して貢献度の余裕を作らないと」

「そうね。

 このままじゃね」

 無理は出来ないが、今は少し無理をしてでも余裕を作る必要があった。

「明日も敵が見つかるとは限らないし」

 それも理由だった。

 今回はたまたま近づいて来た敵がいたらから倒した。

 だが、ここには他にも敵がいるかどうかも分からない。

 いたとしてもどこにいるかは全く分からない。

 探しにいくにしても、かなり大変な事になるだろうと思えた。

 仮面の男が言ってた通りならば、ここは直径が五十キロはある。

 その範囲を足を使ってあるくのはかなり大変な事である。

「行くなら早く行こう。

 座っていても向こうから来てくれるか分からないし」

「そうだな」

 言いながらトモキは立ち上がる。

「とにかく歩きまわってみよう。

 ここがどうなってるのかも見ておきたいし」

 探索すらまともにされてない場所である。

 どこがどうなってるのかさっぱり分からない。

 周囲を探るためにも探検は必要不可欠だった。

「一応武器も持ってくれ。

 防具も、あるものだけでいいから着けておいて。

 何もないよりはマシだろうから」

 そういって三人に残った装備を身につけるよううながす。

 と言っても、斧とナイフ、籠手と脚甲くらいしかない。

 しかも籠手と脚甲は左右それぞれが揃ってる状態ではない。

 籠手は両方とも左手用。

 脚甲は片足分一つしかない。

 これで戦闘は不可能だろう。

 それでも、何も無いよりはマシであった。

「戦闘はしないでいいけど、どこから敵が襲ってくるか分からない。

 その時の為にそれを身につけておいてくれ。

 あと、周りをしっかり見ておいてくれ。

 先に敵を見つける事が出来たらその分有利だから」

 それだけでもやってくれれば助かる。

 警戒に死角が出来るのが一番困る。

 気づかないうちに接近されてしまったら、それこそ壊滅する可能性が出てしまう。

 それに、トモキ達が戦ってる間は三人とも離れた所にいてもらう事になる。

 その時に襲われる可能性もある。

 碌な装備ではないが、その時少しでも対抗できるようになっていてもらいたい。

 何でも無いよりはマシである。



 それらを確認したところで出発しようとした。

 それを赤毛女が止める。

「行く前に一つ確認しておきたいんだ」

「なにを?」

「名前。

 あたし、まだ皆の名前も知らないし」

「あ」

「そういえば」

「まだでしたね」

「迂闊だったな」

 確かにそれくらいは確かめておきたかった。

「あと、出来ればでいいけど、皆が何をどれくらい出来るのか技術を確認しておきたい。

 知っていれば便利かもしれないから。

 個人情報みたいなもんだから、強制は出来ないけど」

 そこは任意として置く事にした。

 だが、名前くらいは互いに名乗り合う。

 ここに来て五人は、ようやく相手の名前を知るに至った。


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