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捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった  作者: よぎそーと
四章

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第56空間 出発と新人と

 トモキの出発はそれから三日後となった。

 緊張感による疲労が思ったよりも大きく、一日二日と寝っぱなしだったためである。

 さすがに二日目の夕方頃には起き上がれるようになったが、それまで目が覚めたと思ったら寝入ってるという状態だった。

 その分起き上がってからの食欲などは大きく、二食分を一気に平らげた。

 食材はしっかり提供したから文句は言われなかったが、見ている者達が驚くほどの食欲だった。

 そこから更に一睡して翌朝を迎えた。

 そこですっきりと起き上がったトモキは、あらためてトンネルの向こうの再探索に向かう。



「では、よろしくお願いするであります」

「ああ、うん、がんばるよ」

 なんとなく端切れ悪くそう答える。

 そんなトモキの前でカズアキと、見慣れない顔が二つ。

「よろしく」

「おねがいします」

 頭を下げる二人を交互に見て軽くため息を漏らす。

 トモキが求めていた同行者である。

 二人とも最近来たばかりの新人である。

「なあ、本当にいいのか?」

 今更と思うが、出発前の最後の確認と覚悟を尋ねる。

 二人はそれに、

「まあ、やるしかないんで」

「やらなきゃならないのは分かってます」

と答える。

 躊躇いは感じられるが、引き返すつもりではなさそうだ。

 それはありがたいが、やはり心配である。

「まあ、死なないようにな」

 そう言うのが精一杯だった。



 同行者についてはトモキが旅立つ前から折に触れて何度も語られていた。

 それでも参加する者はおらず、トモキ一人での活動となっていた。

 だが、トモキが出発してからの間に色々と考える者もいた。

 そして帰ってきたトモキが語った情報が決定打となっていった。

 危険は確かにあるが、分け前も大きい。

 トモキが主に戦ってくれるなら、負担は少なくなる。

 報酬の大きさを考えれば挑戦する価値はある。

 そう思った者が何人か出ていた。



 そして新人達からすれば、この世界での生活をして考えもした。

 安全に確実に稼いでいくのも良い。

 しかし、何時死ぬか分からないこの状態であれば、賭けに出ても良いかもしれないと。

 全員が全員そう思ってるわけではない。

 だが、貢献度を稼ぎ、生活に余裕が欲しいと思う者もいる。

 問題となる危険が許容範囲に収まるなら、それも悪いものではなかった。

 どのみち、死ぬ時は死ぬという厳しい現実と隣合わせなのも決断を促す理由になっている。

 ならば、いけるところまでいってみようと開き直る事にもなった。

 そうやって折り合いをつけた者達が、トモキの前にいる二人である。



「じゃあ、行こうか」

 先頭に立ってトンネルへと入っていく。

 それに二人が続き、道中の護衛としてカズアキ達も中に入っていく。

 歩く間無言であったが、全員緊張感を保っている。

 前から敵がこないか、誰もが警戒している。

 一人、トモキはそれとは別に、

(上手くやってけるかな、こいつらと……)

と今後の人間関係について考えていた。

 モンスターは確かに問題だが、顔なじみとは言えない者とのいきなりの行動である。

 人間関係を上手く作れれば良いのだが、と考えていく。

(とりあえず、ボウガンを渡しておくか)

 まずは戦闘への備えを確立しておこうと思った。

 これが出来ないとどうしようもない。

(あとは、それから考えるか)

 先送りできない問題であるが、あえて何も考えない事にした。



 トンネルを抜け、カズアキ達が帰ってから、トモキは早速それらを実行していく。

「とりあえず、これは預けておくから」

 そう言ってボウガンを二つずつ渡していく。

「モンスターを見つけたら、それで攻撃してくれ。

 どこに当たってもいい、とにかく命中させてくれ」

 今の二人に命中精度など求められない。

 外さないでいてくれたらそれで良かった。

「あと、俺が先頭を歩く。

 二人は何メートルか距離をおいてついてきてくれ。

 ただし、右と左、後ろには注意すること。

 気づかなくも仕方ないけど、目だけは向けておいてくれ」

 今の二人の技術レベルでは警戒など不可能に近い。

 それでも、周囲を見渡してるのといないのでは大きな差が出て来る。 

「それと、モンスターを見つけたら遠慮無くボウガンで撃ってくれ。

 撃ったらすぐにもう一つで撃ってくれ。

 それから、一人が撃って、もう一人が矢をつがえるように。

 二人で一組になってやってくれ」

 装填速度を少しでも上げるためである。

 もう少し人数がいれば、更なる連射も出来るであろうが、今はそうはいかない。

「ただし、俺が近づいてる時には攻撃をしない。

 言える時は『撃つな』って言うからそれは聞いてくれ。

 それが無い時でも、モンスターの近くに俺がいる時は撃たないでくれ。

 そのかわり、周りにモンスターがいないか見ておいてくれ」

 同士討ちにならないように、そして戦闘中に更に他のモンスターが接近してこないか注意する必要があった。

「もし、近づいて来るモンスターがいたら、大声で報せてくれ。

 それと、可能なら攻撃をしておいてくれ。

 少しでも傷を付けられたらそれだけ有利になる」

 ただ、そこまで新人が機敏に、的確に動けるとは思わなかった。

 これは能力というより度胸の問題である。

 接近してくるモンスター相手に平静でいるには度胸が必要だった。

 今の二人にそれが出来るかどうか。

 それでもやっていくしかない。

「それじゃ頼むぞ、滝沢、三原」

 滝沢シンイチと三原ユキタカは黙って頷いた。

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