第54空間 帰還と食事といつもあった光景
見つけたトンネルから一旦離れ、適当な所に看板/標識を建てていく。
先の尖った棒を地面に突き刺し、それに大きめの看板をぶら下げる。
モンスターに倒される危険もあるが、目印がなければどうしようもない。
それを設置して何処を通ってきたのかをはっきりさせる。
今度来る時のための目印である。
同じ行程を多少は短縮出来るように。
そこから中央近くまで進み、盛り上がってる丘の麓に沿っていく。
邪魔になるほど生えてない木々の間を通り、多少は距離を短縮していく。
そして再び自分の出て来たトンネルへと戻り、そこをくぐって帰還した。
出発してから12日が経過していた。
トモキがトンネルから出て来たのを見て、トンネル前に陣取っていた者達が驚く。
慌ててトモキの所へと出向いていった者達が、ねぎらいの言葉をかけていく。
「おかえり」
「おかえりなさい」
「無事だったんですね」
「よかった」
「あ、ご飯の用意を」
そんな声が次々にあがっていく。
まだ日が高いのにも関わらず、食事の準備なども始めていく。
(って、もう昼か)
時計がないので正確な時間は分からないが、体感的にそれくらいだろうとあたりをつける。
おそらく他の者達のついでに作っていくだけだろう。
その方が無駄がない。
(いや、それはそれとして)
慌てて食事の際の取り決めを思い出す。
食材は食べる者達の負担なのだ。
ついでに言えば、食事を担当してる者達の分も出さねばならない。
慌てて物品購入の画面を開く。
が、何をどれくらい提供すれば良いのか分からない。
(直接聞いた方がいいな)
考えても何が必要か分かるわけがない。
作ってる当事者に聞いた方が早いと判断した。
「あー、ちょっといいかな」
作業中の一人に声をかける。
が、なぜかそれはヒトミに声をかけ、交代していく。
そういう取り決めなのだろうかと疑問を抱く。
考え込みそうになる。
「どうしました?」
声をかけられて思考を中断する事になった。
「いや、食材を出してなかったから。
どのくらい出せばいいかな?」
「ああ、その事ですか」
笑顔を浮かべてヒトミはそれを断っていく。
「いいですよそんなの。
食材余ってますから。
それに、今まで大変だったんですよね。
一人で探険してきた、これはご褒美です」
「え?」
思ってもいなかった言葉である。
「気にしなくていいですから、座って待っててください」
「いや、でも」
本当にそれでいいのか、と思ったがヒトミはトモキを置いて台所へと戻っていく。
相変わらずキャンプ道具のような調理器具が並んでるだけの調理場である。
だが、そこを駆け巡る3人は手際よく料理を作っていく。
それを見てると、その前に突っ立てては邪魔になると思えた。
やむなく席に戻ったトモキは、料理が出てくるのを待つ事にした。
「お待たせしました」
そう言って目の前に料理を並べられていく。
米に味噌汁に焼き魚に野菜。
定番的な定食である。
弁当で似たようなものは何度か食べたが、手作りでは久しぶりである。
「美味そう……」
思わず漏れた言葉に、
「どうも」
とヒトミが返す。
早速食べようかと思ったところに、トンネル前で陣取っていた者達が戻ってくる。
全員ではなく一部であるのを見ると、どうやら交代で食事に出てるようだった。
その中にカズアキもいた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
軽く言葉を交わしてから、
「いいのか、こっちに来て」
と尋ねてみる。
順番をとやかく言うのもなんだが、真っ先に責任者が抜けてよいのかと思ったのだ。
だがカズアキは、「大丈夫ですよ」と答える。
「モレがいなくても動くようになってきてるでござる。
それにこれだけ人数もいるでありますし、モレが抜けた程度でどうこうなりはしませぬ」
それだけの状態にもっていったのだろう。
実際、カズアキを含む何人かが抜けても、まだトンネル前の方には10人以上の人間が残っている。
それらが抱えてるボウガンなどの数を見れば、この瞬間にモンスターがあらわれても即座に制圧されるだろうと予想出来る。
ここには来たばかりの新人が多いが、それでも遠距離からの一方的な攻撃でモンスターを押しのけているのだろう。
止めを刺す為の高レベルの者も控えてるので戦力は問題ない。
「それより探険結果の方が大事であります。
見てきた事を余すことなく正確に教えてもらいますぞ」
「分かってるって」
「その前に、まずはこれを食べるのが先でありますが」
そういってカズアキは箸を手にとっていく。
つられてトモキも料理に箸をつけていく。
久々に落ち着いて食べる料理は、探検中よりも格段にうまく感じられた。
各章の冒頭の話にあらすじを入れる。
受け取ってメッセージによれば好意的に受け止められてるようでありがたいです。
上手なあらすじを書くのは難しいので、結構難儀してますが、次の章でもがんばっていきたいと思います。
なお、これをやったのはRPGにおけるセーブとロードにあります。
RPGに限りませんが、以前やったときから時間がたつと、
「何がどこまで進んだんだっけ?」
「これからどうすりゃよかったんだっけ?」
と思うことがしばしば。
小説でも同じことになるかも、と思ったのでやってみました。
そんな調子であきらめたゲームがちらほら……。




