第49空間
「それで、レベルアップも順調でござると」
「そろそろ最初のレベルアップが出来そうになってる」
会合でトモキは現状を正直に伝えていく。
優先的に貢献度を回してるおかげで成長が早い事。
次の新人が来るまでにはそこそこの戦力になってるだろう事。
それを踏まえて二人にその事を伝えていく。
「だから、次が入ってきたら行ってみようと思うんだ。
ようやくにして本題を切り出す事が出来た。
「トンネルの向こう側でありますか」
「そりゃまた豪毅な」
二人は驚きはしたものの、割と冷静にトモキの提案を受け止めていた。
「どうなってるのか調べたいとは思っていたでありますが」
「でも、さすがに予想外だったかな」
いずれ必要になるだろうと思っていたが、現実感のない話だったようだ。
トモキが言い出すまで、想定される活動の中に入ってなかったようだった。
言われて始めてそれについて考え出してるくらいである。
「でも、1人ってわけにはいかないでしょ。
何人かで行かないと」
「何があるか分からないでござるからな。
最低でも数人で行動するべきかと」
「となると、レベルの上がったのを何人かって事になるよね」
単独行動はさすがに危険である。
たとえ戦闘力でモンスターと互角以上に渡り合えるにしても、寝込みを襲われては意味が無い。
周辺への警戒も十分に出来るとは言い難い。
見えない部分を補うためにも何人かで行動せねばならなかった。
「いくらトモキ殿でも一人では無理であります」
察知技術のレベルが高く、周囲の警戒を常にしててもである。
それが出来るからといって完璧とは言い難い。
何かの拍子に一気に崩れる可能性がある。
同行者は絶対に必要だった。
「何人かを選抜していく必要があるね。
レベルの高いのを」
「となると、今すぐというわけにもいかないでござるな」
新人が入ったばかりである。
すぐに人を集められるわけがなかった。
新しいトンネルを塞ぐ必要もあるし、早急にトンネルの向こう側に人を送り込む事は出来ない。
「がんばっても次の新人待ちだね。
その間にレベルを上げておかないと」
「然り」
カズアキとテルオの言う通りだった。
今すぐはさすがに無理である。
「しょうがないか」
トモキもこれは仕方ないと納得する。
何にせよすぐに何かが出来るとは思ってなかった。
すぐに何か出来るわけではないが、次に向けての準備は始まっていく。
トモキがトンネルの向こう側の調査に出ると言った事は全員に伝えられていく。
その上で、希望者を募っていった。
どれほどの危険があるか分からない。
強制的にをつれていくわけにもいかない。
そんな事をしてもすぐに逃げ出す。
危険が予想される場所には、志願者を連れて行くしかない。
なかなかいるわけではないが、そうでないと色々と支障をきたす。
出来れば数人ほど欲しい所だが、その数人がなかなか出て来ない。
やらねばならない事は分かっているが、今以上の危険を甘受できるような強者はそうそういない。
ましてトモキ達はここでの生活をある程度安定させている。
そこから抜け出す事を考える者は、まず存在しない。
モンスターに常時襲われてる状態は続いている。
しかし、仲間が周囲にいるのでその危険も減っている。
周辺警戒も、戦闘での協力も出来るから、比較的安全になっている。
そんな所から外に出るなんて自殺行為に等しい。
快適な環境の中にいれば、そこに安住したくなるのが人情である。
好奇心が勝ったり、刺激を求める性格の者ならともかく、大多数は現状の維持を求める。
まして今の人数では人を割く余裕などない。
次の新人が入ってからとは言ってるが、その新人が入ったからと言って即座に戦力が強化されるわけではない。
モンスターを倒し貢献度を手に入れ、レベルを上げねばならない。
これまでの経験からまともに使えるようになるまで半年はかかると考えられる。
それだけの期間が必要なのに、そこで数人とはいえ人手を抜くのは危険でもある。
今現在30人余り、新人が入っても、おそらく40人程度の人数でしかない。
そこから数人が引き抜かれると大きな損失になる。
また、分散してるとはいえ30人から40人余りにの集団から、数人だけの集まりに移動したいという者は少ない。
人数が少なければ、それだけ危険が増大する。
好んでそこに入ろうという者は多くはなかった。
「予想通りではあるけど」
渋い状態に少しばかり落胆する。
簡単にはいかない事を痛感した。
「ま、時間をかけてやってくしかないか」
次の新人が入ってくるまで時間はある。
それまでに気が変わる者が出て来るのを願うしかない。
「まあ、焦らなくても。
レベルが上がれば考えが変わる人も出て来るかもしれないし」
「だといいんですけどね」
テルオの言葉に素直に頷く事が出来ない。
そうであるなら、レベルの上がってる者達から賛同者が出てもおかしくはない。
そうでないという事は、やはり無理して探険に出る事を承諾する者はいないのだろう。
(最悪、俺だけって事になるかも……)
それも仕方ないのかと覚悟をしていく。




