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捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった  作者: よぎそーと
三章

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42/102

第42空間

「元気そうだな」

「まあ、ぼちぼちであります」

 一ヶ月に一度と決めた会合にてトモキとカズアキはそう言葉を交わす。

 お互い変わってない事に安心し、互いの一ヶ月について語っていく。

 とはいえ、それほど代わり映えがあるわけでもない。

 トモキは7人でもどうにかやってる事を。

 カズアキは、広い空間で工夫をこらしながらモンスターを倒してる事を。

 それだけを伝えてほぼ終わる。

 あとはこれからどうしていくかくらいしか話す事は無い。



「モンスター退治は今のところ順調ではあるよな」

「かなり厳しいものもありますが、倒せない事はありませぬ」

 安定してると言えるのだろう。

 よほど馬鹿をやらない限りは今のやり方で問題は無い。

「ただ、更に人数が増えると、今のままでは厳しいであります」

「だよな」

「どうしても人数があぶれるであります。

 おかしな話でありますが、もっとモンスターを倒せないと食事も事欠くであります」

「また増えるだろうしな」

「トンネルが他にもあれば良いのでありますが、それを探しにいくのも一苦労でありますし」

「今すぐってのは絶対無理だな」

 現状の戦力を考えると、とても人数を割く事は出来ない。

 トモキの方もカズアキの方も、今の人数でどうにかやりくりしている。

 そこから一人二人を抜いただけでも、確実に瓦解するだろう。

「やはり、人が増えてからになるでござるか」

「でないと危険だからな」

「しかし、そうなると人の割り振りを考えねばならぬであります」

 そこが悩みどころだった。

 単純に考えれば人数の少ない方に割り振っていく事になる。

 しかし、広い場所で戦ってるカズアキ達も、今の人数では苦しいものがある。

 出来ればもう少し増員したいと思っている。

 だが、それでトモキ達に負担をかけるわけにもいかない。



「それに、ここの探険もするとなると、かなり大変な事になりそうだし」

「やはり人の割り振りは頭を使うでござる」

 トンネル前での戦闘と、この空間の探険とトンネル探し。

 この三つに分けるとなると、誰をどこに配置するかが悩みどころになる。

「出来ればカズアキの方の人数を増やしたいしな」

「でも、トモキ殿の方を手薄にするわけにもいかぬでござる」

 今のやりかた、今の体制で何が出来るかを考えねばならない。



 それに、考えねばならない事はもう一つある。

「この状態だとどっちに来るか分からないしな」

「そうでありますな」

 仮面の男が二手に分かれた彼等のどちらに来るか。

 それが今は分からない。

 トモキの方か、カズアキの方か。

 あるいは両方にそれぞれ人を連れてくるかもしれない。

 その時、使えない奴を処分できるかどうかである。

「俺は躊躇わないけど、そっちはどうなんだ?」

「分からんでござる。

 やらねばならないのは分かってるでありますが、実際に出来るかどうかは……」

 カズアキには躊躇いがある。

 やらねばならぬという義務は分かっている。

 でなければ、マキのような事が再び発生する。

 しかし、だからと言って簡単に人を殺せるのかというと、これが難しい。

 モンスターを何体も倒してきたが、人と同列に語るわけにはいかない。

 それが救いのない人間であっても、やはり人を殺すという事には簡単には超えられない心理的な禁忌感がある。

「最悪、俺がどうにかするつもりではいるけどさ」

 トモキは助け船のようにそう伝える。

 さすがに無理なら自分がやるという気構えはある。

 言っては何だが、既にやっている事であるから抵抗感はない。

 のべつまくなしに人を殺すわけではないが、駄目だと判断した者を斬るのに躊躇いはない。

 そこに違いが出る。

 また、マキが死んだ(トモキは屑どもに殺されたと思ってる)のを目の前で見てるかどうかという違いもある。

 この部分で、テルオやその場に居た中年男、そしてそれ以外とで受け取り方などに違いが感じられる。

 マキが死んだという結果だけを知ってる者達の、トモキに接する態度の違いは微妙にだが存在している。

 やはり人を殺すという事への忌避感があるのだろう。

 カズアキとてそこは変わらない。

 なので、もし問題が発生しても、即座に対処出来るかどうか。

 そこにトモキは危惧を抱いてはいた。



「出来なきゃ、誰かが割を食う。

 その場合、やらかした奴以外が被害を受ける。

 さすがにそんな事にはさせられねえから」

「まあ、そこは分かってるでござる」

 その通りだろう。

 分かってはいる。

 頭で理解している。

 だが、そこまでだ。

 その先、分かって、納得して、行動が出来るかどうか。

 問われるのはそこである。

 しかし、これは確認しようがない。

 実際にその瞬間になるまで分からない事なのだから。

「ま、その時になったらその時だけどな」

「なってみないと分からない事でありますか」

「ああ。

 こんな事、やりたくもないけど」

 躊躇いなく実行はするが、だからといって好んでやりたいわけでもない。

 より大きな被害が出る前の予防措置としてやってるだけである。

 ここでは、疑わしきを罰していかないと自分にも害が及ぶ。

 四の五の言ってられない。

「今度の連中が少しはまともであってほしいよ」

「同感でござる」

 当たり障りのない言葉で話をしめくくっていく。

 今の二人には、その先について語れる事は無い。

 とりあえず人数の割り振りや、増えた後でどうするかなどを語っていく。

 同じ事の繰り返しになるが、何か新しい事を思いつくのでは、という期待も込めていた。

 それもまた、語らねばならない事である。

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