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捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった  作者: よぎそーと
三章

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第36空間


「でも凄いですよね、社さんの攻撃って」

 夜、まだ眠りに就く前。

 なんとなく誰かが喋りはじめ、それに他の誰かが続いていく。

 そうやって始まっていった言葉のやりとりの中で、そんな事を言う者もいた。

「あいつらを見つけるのも早いし、見つけてから仕留めるまでなんてあっという間だし」

「そういう技術を身につけたってだけだよ」

 褒めてくれる声に、そっけない答えを返す。

 正面切って戦えるわけでもないので、さして自慢になるとは思っていない。

 だが、周りの評価は本人の意志や考えとは無関係だ。

「ほとんど一撃じゃないですか。

 後ろや横から一気に近づいて、刀でぶすっと。

 あんな風にきめたいもんですよ」

「だったら、まずは刀剣のレベルをあげるんだな。

 そのうち急所を狙えるようになる」

「となると、あと何体倒さなくちゃならないんですかね」

「メチャクチャ大変ですよ」

 多少自棄気味な声で気持ちを伝えてくる。

 言いたい事は分かる。

 今の調子でがんばっても、成長の機会が訪れるのは何ヶ月か先になる。

 それまで生き残れるかもあやしいのだ。

 レベルをあげろと言われても、かなり無茶を強いられてるような気にもなっていく。

 そうしなければどうにもならないのは分かっていても。



「もっと倒せればいいんだけどな」

「モンスターを?」

「ああ。

 そうすりゃ、レベルも早く上げられるし」

「だからって、突進していくわけにもいかないだろ」

「そりゃそうだけどよ。

 やらなきゃ生き残れないだろ」

「死にそうな思いをしなくちゃならないってはね」

「きついよな。

 足が震えそうだし」

「でも、最近は慣れたよ。

 最初の頃は頭真っ白になったり、訳も分からないで突進してたけど」

「違うのか、最近は」

「前よりは周りが見えるようになったかな。

 モンスターの事もよく見れるようになったよ。

 だから動きとが分かって怖くなるんだよね」

「俺も同じだよ。

 レベルが上がって、少しは攻撃とかが出来るようになってから、妙にモンスターの事とかが見えるようになったんだよな」

「なんでだろうな」

「見えるようになって、攻撃とかも当てられるようになったけど。

 怖いよな、分かっちまうから」

「あ、来るなってのが見えるもんな」

「なんでかな。

 見えるようになってから攻撃もまともに出来なくなっちまったし」

「レベルが上がる前よりよっぽど怖いよな」

 語るとはなしに話は自然とそんな方向に流れていく。

 自分が感じた変化、それによる今までとの違い。

 口にする事で情報が共有され、他の者も同じような感想を抱いていた事が分かってくる。

 そして、自然と理由を求めて会話が続いていく。



(そういやそうだったな)

 話を聞いてて彼等に何が起こったのかが分かった。

 かつての自分もそうだったが、何かしら能力が上がると周りの事が冷静に見れるようになった。

 それまでは知らず知らず緊張して、視界が狭くなり、周囲の様子を掴めなくなっていたのだろう。

 能力が上がった事で、周りに気を配る余裕の出てきて、今まで見えなかったものが見えてくるようになった。

 戦闘の場合、相手の事をはっきり見えるようになるというのは大きな進歩である。

 それだけ気持ちに余裕が生まれたという事なのだから。

 この余裕をもたらすのは、それだけの能力があるという事実だ。

 モンスターの姿が、動きが見えてきたというのは、動きを把握する能力があるからだ。

 その能力があるから、攻撃を当てる瞬間を狙う事が出来る。

 まだレベルが低いから即座に攻撃に移れないだろうが、それは成長の証しである。

 逆に、それまでろくろく姿も見ることが出来なかった方が危険だ。

 まったく気持ちに余裕がなく、がむしゃらにぶつかっていっただけである。

 多人数で取り囲んで一気に攻撃するならともかく、面と向かって戦わねばならなくなった時にそんなものは通用しない。

 まぐれ当たりを期待するような状態である。

 攻撃も防御卯も行き当たりばったりで確実なものがない。

 例えあたっても友好的な一撃にはならないだろうし、攻撃を防御しても、そこから次の動作にうつる事も難しくなる。

 そこを抜けだしつつあるというのは喜ばしい事だった。

(あとはもっと成長出来ればいいんだけど)

 そうなればモンスターの動きをみてよりよい行動がとれるようになる。

 先の話であるが、早くそうなって欲しいと思った。



「皆がそこまで出来るようになってくれて助かるよ」

 話が途切れがちになってきたところでトモキは口を開いた。

「怖いと思ってるだろうけど、それでも前より手早くモンスターを片付けられるようになってる。

 まだレベルが上がってるって実感もないだろうけど、確実に腕を上げてる。

 怖いって思うのは辛いだろうけど、今はそんな自分を信じてくれ。

 それでもモンスターを倒しているんだから、前よりもずっと上手く」

「そりゃまあ」

「前よりは」

「かなり酷かったのは確かですし」

「それが分かってりゃ十分だよ」

 トモキとしてはそれ以上求めるつもりはない。

「自信過剰じゃ困るけど、しっかり実力を把握してくれてるならいいよ。

 その範囲でやれる事をやっていこう」

 でなければこの状況を切り抜ける事は難しいだろう。

「無理せず無茶せず、手抜きせず。

 それさえ守ってりゃどうにかなるから」

 この一年の実感を口にした。

 他の者達もそれで何かしら納得出来るものがあったようだ。

「それじゃ、見張り当番はよろしく」

 まだ眠くはないが、トモキはそういって話から離れていった。

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