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捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった  作者: よぎそーと
三章

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35/102

第35空間

 予定通り探検に出るのは6人となった。

 トモキをリーダーとして、他は半年ほど頑張っていた者達から選抜された。

 最低限の能力と技術、この空間への慣れを考えるとこうなっていく。

 技術的には心許ない部分もあるが、それを言ったらきりがない。

 万全にはほど遠くてもやらねばならなかった。

 余裕が無くなってからでは遅すぎる。



「それじゃ」

「頑張ってね」

 出かける際のやりとりはそんな淡泊なものだった。

 これが最後の分かれになると決まったわけではない。

 予定では一週間もしないで帰ってくる事になっている。

 途中でモンスターに出会う事もあるだろうが、今までの事から考えても、移動中にであるモンスターは1体が普通。

 2体以上は結構珍しい。

 複数のモンスターとの遭遇は、トンネルから出て来た直後くらいである。

 なので、危険はそれほど大きくは無いと考えられていた。

 1体程度なら、この人数で取り囲めばどうにかなる。

 2体では危険が跳ね上がるが、それでも生き残る確率は高い。

 それ以上になると逃げるしかないが、移動中の遭遇で3体以上にお目にかかる事はほとんどない。

 途中の戦闘を考えても、トモキ達なら切り抜けられると踏んでいた。

 無理をしなければという条件付きであるが、それほど大きな不安はない。

 あるのは、未知の領域に踏み込んでいく事への心理的な負担である。



 そこに何があるのか。

 何もないのか。

 それも分からない場所に無核のは神経をすり減らす。

 見知った場所であっても、周囲にモンスターがいる環境である。

 勝手が分からないとなると、本当にあちこちに気を張り巡らせる事になる。

 トモキがいるのである程度は事前に把握出来るであろうが、それでも死角が生じる場合もある。

 技術をもっていても完全や万全とは言い難い。

 ましてそれが一人ならば限界もある。

 他にもトモキのように周囲の警戒が出来る能力を持ってる者がいれば良かったのだが。

 ここにいる者達は成長のほとんどを戦闘系技術に振り込んでいる。

 当面必要だったから仕方ないが、今のところ周辺警戒はトモキに一任される状態だった。

 いずれ更に成長する時には、多少は脇道の技術も身につけてもらわねばならないだろう。

 しかし、戦闘系の技術を身につける事が悪いというわけでもない。

 それらがなければおびき寄せた複数のモンスターを倒す事は困難である。

 彼等の成長の選択もしっかりと理にかなったものであった。

 探検にはそれだけでは足りないというだけだ。

 更なる成長を求めるには時間が足りなかった。



(上手くやっていけるのかね……)

 不安がひろがっていく。

 自分自身の戦闘力もそれほど高くはない。

 成長はしているが、戦闘系の技術はそれほど上げてはいない。

 前から持っていた『発見/察知』をレベル3に、新たに手に入れた『隠密/潜伏』をレベル2にしたのが大きい。

 一応、『刀剣』という技術もレベル2にはしてるが、それだけ見れば他の者達と大差はない。

 周囲への警戒や、モンスターに見つからないように接近する事を主眼に置いたため、このような成長をしてきた。

 物陰に隠れて接近し、死角から相手を攻撃できれば強い。

 なのだが、正面切って戦う事が出来るほどではない。

 それが不安な部分だった。

 刀剣などの戦闘技術なら、他の者達もだいたい同じくらいで、レベル1とかレベル2ばかりである。

 こんな者達で探検に出ねばならないのだ。

(ここに来た時の俺達も似たようなもんだったけどさ)

 それでも不安である。

 その頃からモンスターとやりあってきたが、あくまでそれは有利な条件の中での事だ。

 トンネル探しの為に壁に沿っている今は危険が大きい。

 森の中と違い、壁の近くはほとんど平原である。

 丈の高い草があるので、屈めば隠れる事は出来るが、その為にもモンスターに先に気づかないといけない。

 先頭を進むトモキの責任は大きなものだった。



 一応、隊列を組んで進んではいる。

 先頭はトモキ。

 最後尾にこの中では強い者を二人配置し、間にそれ以外の三人を置いている。

 間隔はそれぞれ10メートルから20メートルをあけ、かたまって行動はしない。

 下手にまとまってると、襲われた時に一気に全滅しかねない。

 その為、前・中・後に分かれて、どこかが襲われても、他が逃げ延びて情報を伝えるようにしている。

 さすがに寝る時はまとまる事にしてるが、それはあくまで夜だけの事にしている。

 もちろん、まとまっていれば、何が起こっても即座に全員で対応が出来る。

 その方が戦闘力は上がるのだが、今回は損害の限定に主眼を置く事にしていた。

 たとえ何かが見つかったとしても、全滅して伝えられないのでは意味がない。

 仲間を見捨てる事になろうとも、逃げて情報を伝え、今後に活かしていくようにするのが優先された。

 もちろん、何かがあった場合には相互に援護しあう事にはしてる。

 してるが、すぐに駆けつける事が出来ない以上、どうしても損害の拡大は覚悟せねばならなかった。



 先頭を進み、周囲の安全を確かめ、後ろを振り向いて仲間を呼ぶ。

 ある程度進んでは止まり、様子を見てから再び移動をしていく。

 歩みは遅いがそれだけ安全面を優先させていた。

 おかげで、途中でモンスターの存在に気づく事も出来ていた。

 やり過ごす事が出来るならその場に隠れて相手が消えるのを待っていく。

 だが、モンスターもそうそう簡単に見逃してはくれない。

 トモキ達を見つけると、ほぼ確実に向かってきて戦闘になってしまった。

 持ってきたボウガンによる遠距離攻撃と、トモキによる潜伏状態からの奇襲でほとんどが片付いたが。

 かけよってくる仲間が到着するより先に、物陰からの急所攻撃が止めを刺していった。

 トモキを見つけられずに右往左往してる相手への攻撃は、驚くほど簡単に命中していく。

 見ていた者達がそれを見て唖然とするほどに。

 そんな事をこなしながら初日が終わろうとする。

 完全に暗くなる前に木陰に移動し、休息の準備をしていった。

続きは明日に。

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