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捨て石同然で異世界に放り込まれたので生き残るために戦わざるえなくなった  作者: よぎそーと
三章

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33/102

第33空間

 翌日からモンスター退治の実際を体験してもらう事になる。

 トンネルの前で陣取り、出て来るのを待ち、それから本番へと突入する。

 初めてモンスターを見る新人達は驚き、恐慌を来していく。

 それでもどうにか動こうという者はいるし、邪魔にならないよう立ち回ろうとする者もいる。

 一日が終われば、何をどうすれば良いのかあらためて聞きに来る者もいる。

 放心状態になって途方に暮れてしまう者もいるが、それはまだマシな方だった。

 やはり悪態をつき文句を言い、そのくせ何もしない奴もいる。

 今回のそれは2人で、やはりはてしなく鬱陶しいものだった。

 ただ、さすがに初日でどうこうするつもりはなく、二日三日と様子をみる事にはしている。

 その間に大きな問題が発生するかもしれないが、そこはどうにか凌ぐしかない。

 幸いなのは、今までの新人達も半年程の経験がある。

 レベルも上がっており、多少の事ならどうにか出来るようにはなっている。

 それがもたらされる被害を少しは軽減してくれると信じておきたかった。



 そして日にちが経ち、裁定の時間に入っていく。

 新人達も含めて色々と話を聞き出し、評価や評判を聞いていく。

 案の定、いつもうるさい2人の評判が悪い。

 そこは想定通りであった。

 また、それとは別に問題のある輩も浮き彫りになっていく。

 戦闘などは確かにこなすのだが、不平不満をやたらと口にする者もいる。

 こんな所にいきなり放り込まれたらそれも仕方ないのだろうが、それにしても目に余る者はいる。

 更にそこに、周囲への八つ当たりが加わったら目もあてられない。

 こういった者も1人おり、これも今のうちにどうにかしようという事になった。

 躊躇いは一切ない。

 放置すればどうなるかについては実体験がある。

 同じような状況に陥る前に、さっさと始末をつける事にする。



 新人達が来てから一週間経った日。

 事は決行された。

 いつものようにモンスター退治に出向く前にトモキは動いていった。

 ボウガンで一人を撃ち、もう一人を刀で切った。

 これから出発といういつもの行動の中での事だったから、特に警戒もされてなかった。

 それでも新人達は驚き、突然に見えるトモキの凶行に唖然とした。

 いったいどうしたんだと思っているうちに、三人目が片付けられていく。

 この一週間で最も鬱陶しいと思われてた者達が死んでいった。

 ここでの活動をしてきた者達は、それを当然の流れとして受け止めていく。

 しかし新人達は、いったい何がどうなってるのかも分からずにいる。

 そんな彼等にテルオが説明を開始していく。

「驚くとは思うけど……」

 そう語り出すテルオの声に、新人達が首を向けていった。



 もともとモンスター退治に出かけるのは無理だろうと思っていたので、その日は一日休みとなった。

 出発の準備も、言ってしまえば偽装である。

 そういう事にしておいた方が、意識がモンスター退治に向けられる。

 他の事に気を回す余裕がなくなり、その分動きやすくなるという事からそう仕向けられていた事だった。

 その為、一日を費やして説明や質疑応答などが行われていった。

 新人達はさすがにすぐには受け入れられそうもなかったが、それでもかつてあった事を聞かされて納得もしていた。

 ましてモンスターと実際にやりあってもいる。

 ここがどれほど危険な所なのかも十分に理解は出来ていた。

 そんなところで、ふざけた態度をとってる者達への理解や同情は無かった。

 同時に、ここで生きていくには何が必要なのかという事も何となく感じ取っていた。

 まずは生き延びること。

 モンスターという脅威がそこにいるこの状況では、身の安全を確保する事が最優先になる事。

 それを疎かにする、更には他の者達の邪魔になるような事をするわけにはいかない事。

 だからこそ、事前に危険と判断された者が排除された事。

 その事は新人達も理解していった。



 だが、表だって何かを言う者だけではない。

 人知れず、裏で行動していく者もいる。

「あの人達、ああは言ってたけど……」

 そうやって隣にいる者にささやきかける者もいる。

「いくらなんでもおかしいって、人を簡単に殺すなんて」

 人を殺すのはおかしい、というのは間違いではない。

 ただ、殺されたのがどんな者なのかという事について一切何も言ってない。

「裁判もないし、法律があるわけでもないのに。

 あんなのどう考えてもいかれてる」

 法律などない、当然裁判所も存在しない。

 そんな場所で何を、という話である。

 そもそも、裁判を待ってる余裕があるのか、という事もある。

 仮に裁判らしきものでも開催するとして、誰がどのように裁くのか?

 裁定を誰がくだすのか?

 基準となる法律などの規則はどこに?

 かりに有罪とした場合、その刑罰はなにが適切なのか?

 無罪にするとしたら、その後に引き起こされる問題についての対処はどうする?

 考え得るかぎり様々な問題が発生する。

 そして、これらを一つ一つ片付ける問題などもありはしない。

 ここにそんな余裕は無いのだから。

 安全面でも、時間的にも。

 時間をかければその分余裕が失われ、余裕が無くなれば飢え死にしていく。

 そうでなくても、モンスターの襲撃を受けるかもしれない。

 可能な限り即座に、そして後々の被害を出来るだけ少なくしていくしかない。

 だからこそ、制裁を加えている。

 それも、いきなり殺害による処分という大事を。

 それくらいしないと、全体への影響が大きく成りすぎる。

 複数のモンスターを多人数で処理してる今は特に。

 一箇所の問題が全体に波及し、取り返しが付かない大きな被害になるかもしれない。

 そんな事態に陥るわけにはいかないのだ。

 余裕のある状態でも、余計な被害が出るのは誰もが拒否したいところだろう。

 ましてこんな状況である。

 無駄な損失も負担も誰も望んではいない。

 しかし、周りの皆を言いくるめていく者はそんな事考えてもいない。



「……あれはどう考えてもおかしいよ」

 そういった形で話を終えた。

 聞いてた者は、何か言いたそうにしてるが、上手く言葉に出来ないようだった。

(まあ、何か言い出してきても、叩きつぶせばいいだけだけど)

 語っていた本人はそう思っていた。

 ようは喧嘩なのだ。

 理を求めて言葉を発し、何が最善なのかを求めていくわけではない。

 相手に自分の言い分をのみこませていくのが目的だ。

 事の理非や善悪など関係がない。

 強いていうならば、自分の言い分が正義であるといったところである。

 相手の言う事はすげなく却下し、自分の言いたい事だけ並べる。

 それで相手が黙ればしめたもの。

 ただそれだけであった。

 そうやって手駒を増やし、ここの主導権を握る。

 もちろん全員の主導権を握るなんて事は出来ないだろう。

 だが、仲間(とう名目の手駒)を増やし、多数派になったらそれでいい。

 自分につかない者はあとで追放すれば良い。

 それだけである。

 そうやってここで頂点に立つのが彼の目的であった。

 何の為に、という理由は無い。

 上下関係だけが彼にとって重要事項であり、他の事などどうでも良い。

 頂点に立ってどうするとか、そういった事も関係がなかった。

 彼に必要なのは、彼の行動原理は、ただただ他を従わせて自分が上に立つ事だったのだから。



「おかしいのはおまえだ」

 胸を刃が突き刺してから言葉が続いた。

 何がどうしたのか、と思って背後を振り向くと、いつの間にかトモキが立っていた。

 この一週間でおぼえた顔と名前である。

 この集団の古株で、戦闘における第一人者とも言える存在。

 そいつがなんで自分の背後に立っていたのかが不思議だった。

 だが、疑問を解消する時間はない。

 胸に突き刺さった剣は確実に肺を貫通している。

「どうせおかしな事を吹き込む奴が出てくるだろうと思ったけど」

 言いながらトモキは周囲に語りかけていた者の首に縄をかける。

 その縄を引っ張りながら、その場に居た者達に語りかける。

「何を吹き込まれたか知らねえが、ふざけた事を考えるなよ。

 ここじゃ、生き延びるのが最優先なんだからな」

 そういって暗がりに消えていった。

 居合わせた者達は、その言葉の意味を否応なくかみしめていた。

 余計な事をすれば、今回のように始末されるのだと。



 気配がしたからそちらに言ったら、新人が何か話をしていた。

 これもレベルを上げた察知の技術のおかげだろう。

 現在レベル3になってるそれは、以前よりも更に周囲の状況を把握出来るようになっている。

 そして聞くとは無しに聞いていた話は、今回の処分への異議だった。

 話を聞いてて、それがやり方への文句を盾にした自分の言い分の押しつけであると察した。

 放置するわけにはいかないと思い、トモキはそいつの始末に動いた。

 時間をかけるわけにはいかない。

 そのままにすれば、こういった裏工作がどんどん仕掛けられていく。

 そうなってからでは遅い。

 今回気づけたのは運が良かった。

 おかげで、初動段階であろう今の時点で処分が出来る。

 暗くなる森の中でトモキは、胸に突き刺さったママの剣を抜いていく。

 そのまま剣を足にさし、腕にさし、腹にさして確実な止めとしていく。

 他にも急所と呼ばれる所を貫いて絶命させた。

 あとはこのまま放置してモンスターが片付けてくれるのを願った。

 息が絶えるまで確認しておきたかったが、空も暗くなってるので皆の所に戻るのも難しくなる。

 残念だが、今回はここでこいつがくたばるのを待つしかない。

(明るくなったら一度確かめに来ればいいし)

 そう思ってトモキは、その場を後にした。



 テルオやカズアキ達には夜のうちに起こった事を伝えておいた。

 起こった出来事についてはすぐに理解され、迅速な処分を感謝されるにいたった。

 翌朝、始末した相手がどうなったのかを確認し、絶命を確認してから他の者達に伝えられる。

 4人目の問題児が出た事に誰もが驚いてたが、それについても特に異論などが出る事はなかった。

 直前まで一緒にいた者達が、何が起こったのか、始末された者が何を言ってたのかを伝えられていたからでもあるだろう。

 それに、何にしても食い扶持を稼がなくてはならない。

 人数は一気に減ったが、やる事をやらねばならない。

 7人に減った新人を加えて21人。

 この人数で今後はやっていかねばならない。

 役立たずであっても頭数が減った事に変わりはない。

 この人数でどうやっていくかを考えていかねばならない。

 問題児どもが消えたところで、無駄に関わってるわけにはいかなかった。

続きは明日の19:00予定



思い付きを書いてみた

「なんでか転生した異世界で出来るだけの事はしてみようと思うけどこれってチートですか?」

http://ncode.syosetu.com/n3761ef/

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