第29空間
モンスター退治は続いていく。
何をするにしても食い扶持がなければどうしようもない。
壊れていく武器の代わりも手に入れねばならない。
生活に追われる事になるが、やらねばならない事をしていかねば先もない。
それを理解してトモキ達は活動を続けていった。
そうしながらも、少しは何かを掴もうともしていく。
「いたぞ」
トモキの声に同行者達が緊張していく。
まだ姿は見えないが、何かがいる事は分かっている。
もうすぐそこまで接近しているはずだった。
「待っててくれ」
そういってトモキは先に進んでいく。
まず先にモンスターを見つけ、それから戦闘に入っていく。
それが彼等のやり方になっていた。
位置を特定し、襲撃出来るように展開していく。
この繰り返しが彼等の戦闘を確実なものとしている。
今回も戻ってきたトモキからの情報をもとに、モンスターの周囲に展開していく。
出来るだけ有利になるように、確実に先手をうてるように。
そして、戦闘はその通りに動き、トモキ達はとくに負傷もなく成果を得ていった。
倒し終わってから、更に続きがある。
モンスターの周囲を見渡し、それが歩いてきた方向を探していく。
それを見つけてそちらに進んでいく。
モンスターを探すというより、あくまで彼等の行動を調べるのが目的になっている。
そうやってモンスターの活動範囲を調べるのが目的だった。
足跡を辿る事で、他のモンスターの痕跡を発見する事もある。
そうやって、別のモンスターを探す手がかりを得る事にも繋がる。
モンスター同士で接触もあるのか、時折足跡などが多数発見する事もある。
実際に複数のモンスターが集まってるのを見た事はないが、そこから他のモンスターをたどる事もある。
稼ぎを確実なものにするために模索してきた方法である。
今回の場合、それにもう一つ続きがある。
「……こっちか」
足跡を探っていくと同時に、方位磁針を使ってどの方向から来たのかを確認していく。
手書きの、地図と呼ぶのも憚られる地図にその方角を書き込む。
だいたいでもいいから、どの方角から来たのかだけでも調べておく。
それらが一定の方向を示してるのならば、そちらの方に何かがあるはず。
確かめるまで何とも言えないが、こういった努力が実を結ぶ事もあるかもしれない。
情報が何にしろ不足してる今、とにかく調べられる事は調べる。
無駄に終わるかもしれないが、やってみなければ何が無駄になるかのかも分からない。
あとで不要だと判断されるにせよ、今はただ何でも良いから情報を集めるのが先だった。
一日二日とそんな調子で作業が続く。
前日に行ったのとは別の方面に向かう事もある。
その逆に、前の日に見つけた痕跡を辿っていく事もある。
地図に書き込みが増えていく。
方向を示す矢印があちこちの方向へとのびていく。
一見、ばらばらの方向を示してる矢印は、モンスターの行動の無軌道ぶりを示してるように思えた。
奴らは何も考えず、いきあたりばったりに行動してるのではないかと思えた。
統一性もないし規則性もみあたらないから当然である。
だが、更に何日も探っていくうちに、だんだんと動きが絞り込まれていく。
乱れた足跡も辿っていくといくつかの流れに行き当たる。
ある時点で大きく拡散してるが、その直前までは概ね一定の流れで動いてるのが見て取れた。
これは何かがあると思い、一度全員でその方向に向かう事になった。
長距離の移動になるのでトモキ達だけで行動するわけにはいかなかった。
行けば帰って来るのが何時になるのかも分からず、その間行動に制限がかかる事になる。
それならば、いっそ全員で移動した方が良いだろうという事になった。
寝床にしてる場所はあるが、そこにいなくてはいけない理由があるわけではない。
特に荷物があるわけでもないし、便利な道具が置いてあるわけでもない。
何なら道具はステータス画面の所持品の画面で格納する事も出来る。
全員で動いてもなんら問題は無い。
マキの眠ってる場所から遠ざかる事に少しばかり抵抗を感じるが、いずれまた帰ってくると思えば気持ちに折り合いを付ける事も出来る。
それよりも今は、更なる調査を進めるのが先だった。
移動して足跡を辿ってまた移動していく。
見つけたモンスターは倒し、更にそこからモンスターの移動してきた先へと向かっていく。
その繰り返しで一週間が過ぎた。
行き着いたのは、この空間の限界である壁と、そこに空いてる穴。
足跡はそこから出てきている。
特に驚きはしなかった。
以前から存在は知ってたし、大きく開いたそこがどこかに繋がってるかもしれないとは思っていた。
「まあ、モンスターが出て来るってのもありがちなネタっぽいでありますしな」
今は出てきてないが、そのうちやってくるのだろう。
「これだけデカイと、いくらでも出てきそうだしな」
「トラック二台は余裕で肩を並べて走れるよね、これだけの幅と高さがあれば」
それだけの余裕はあった。
「ふさぐってわけにもいかないか」
「出来ればそうしたいですけどね」
あまり現実的な手段ではない。
やるとしたらかなりの材料と作業量が必要になるだろう。
そこまでやってられない。
ただ、出て来た場所は分かったので対処の方法はあるかもしれない。
具体案はまだ出てこないが、それはこれから考える事である。
早速その一つをカズアキが口にする。
「ここに陣取るなら、あいつらを迎撃できますな」
「まあ、そうだな」
「だったら安全地帯を作って経験値稼ぎであります」
ゲームになぞらえた考えを示したカズアキは、早速頭を働かせていった。
こういった場合、こういった状況で何が一番効果的であるのかを。
21:00に続きを公開予定




