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第2空間 解説

「まずこの場所について。

 ここは世界の境界線。

 異世界との接点だ。

 まあ、ある程度形を備えてはいるが、本来形のない空間。

 だが、それでは色々と都合が悪くてな。

 なので、こうやってそれらしい形状を作り出した。

 ここに敵を招きよせて迎え撃つ」

 何がなんだかさっぱりだが、聞いてる者達はここがろくでもない場所であるのだけは理解した。

「また、見ての通り、それなりの大きさがある。

 今いるこの場所は直径五十キロ。

 高さ五キロの円柱状になっている。

 ここからさらに通路がのびていて、別の場所に繋がっている。

 諸君らに分かりやすい言い方をするなら、ダンジョンといったところだな」

 その割にはかなり大きいと思われる。

 見渡す周囲には、木々が生い茂り、耳にはかすかにせせらぎの音が聞こえてくる。

 そもそも足下は草の生い茂る土だ。

 ダンジョンという印象とは大きく異なる。

「ここが今日から君らの世界になる。

 どこで寝起きをしようが一切自由だ。

 誰も咎めだてたりはしない。

 また、敵もあちこちに出現する。

 どこにどんなものが出てくるかは分からない。

 まあ、出会ったら上手く倒してもらいたい。

 相手が強いなら逃げた方が得策であろうがな」

 実に突き放した言い方である。

 実際、仮面の男にとって、ここにいる者達がどうなろうと知った事ではないだろうが。



「なお、戦ってもらうにあたり、最低限の装備は支給する。

 どう使うかは君らの自由だ」

 そう言うと、彼等から数メートルほど離れた所に武器や防具らしきものがあらわれる。

 槍や弓、剣に斧、鎧に兜に盾などが見えた。

「なお、支給はここまでだ。

 新しい武器や防具などが欲しければ、敵を倒してもらいたい。

 倒した敵に応じた貢献度をこちらで数字化して諸君らに提供する。

 その貢献度を用いて欲しい物を手に入れてもらいたい。

 ただ働きは認めない」

「それをどうやって手に入れるの?」

 赤髪の女が尋ねる。

「それについては頭の中で『状態確認』と唱えてもらいたい」

 なんだそれは、と誰もが思ったが、とりあえず言われた通りにする。

「あっ」

「え?」

「……はい?」

「なんだ?」

 驚きの声があがっていく。

 言われた通りに頭の中で状態確認と思い浮かべたら、目の前に画面があらわれたのだ。

「確認出来てるだろうか?

 諸君らの目の前にあるのが、君らの状態をあらわしたものだ。

 ステータス画面と言った方が分かりやすいだろう」

 確かにあらわれたのはステータス画面のようなものだった。

 RPGなどでよく見るのと同様、基本的な能力などが列記されている。

「そこに諸君らの貢献度を表示していく。

 自分がどれほど稼いでるかはそれを見て確認してもらいたい。

 物品の購入もその画面から出来る。

 選べるコマンドの中に『売買』がある。

 それを選べば、現時点で購入可能な物が表示される」

 確かにそういう文字があった。

 選んでみると、購入物品一覧という画面に切り替わる。

 だが、そこには今のところ一切何も掲載されてない。

「あの、何にも無いんだけど」

 ここで始めてトモキは口をひらいた。

 積極的に発言しようなどとは思ってなかったが、疑問をそのままにしておきたくもなかった。

 その声に仮面の男はあっさりと答えを出す。

「当然だ。

 諸君らはまだ何一つ貢献をしていない。

 そんな者達に何を表示しりと?」

「じゃあ、戦ってこなくちゃ、何も表示されないって事か?」

「察しが良くて助かる」

 かなり徹底した働かざる者食うべからずの世界らしい。

 これは、かなり本気で事にあたらないといけないようだ。



「なお、諸君らへの支援として、ささやかながら能力の強化の可能性を与えている。

 画面の成長の部分を選んでもらいたい」

 言われた通り、成長というコマンドを選ぶ。

 画面が再び切り替わり、自分の能力が表示される。

 一般教養やら運動やら、自転車に計算、などといった言葉が並んでいる。

 それらのとなりには、1とか2といった数字が並んでいる。

「書かれてるのが諸君の持ってる能力や技術だ。

 数字はその習熟度をあらわしている。 

 いわゆるレベルというものだ。

 貢献度を一定値貯めると、これらを上げる事が出来る。

 もしくは、身につけてない能力や技術を新たに獲得する事が出来る。

 どのように自分を成長させるも諸君らの自由だ。

 また、どんな道具を手に入れるかも好きにすれば良い。

 何をどうしようと君らの自由だ。

 もちろん、適切な選択と行動をしなければ、すぐにでも死ぬだろうが」

 またも出て来た死という言葉が全員に重くのしかかる。

 最初はなんの冗談だ、悪ふざけにしても度が過ぎてると思っていたのだが。

 こうしてありえない物を見せられると一抹の信憑性が出てくる。

 ひょっとしたら、この男の言ってる事は正しいのではないかと。

 でなければ、目の前にステータス画面などが表示されるわけがない。

 もしかしたら……あるいは……そんな思いが背筋を冷たくしていく。

「それと成長だが。

 レベルを上げていけば人間の領域を超える事も出来る。

 身体能力関係の能力や技術を上げれば、オリンピック選手を軽く超える動きも出来るだろう。 

 垂直に数十メートルの跳躍が出来たり、水の上を走ったり、壁を二足で登っていったりとな。

 また、超能力や魔術といった諸君らからすれば超常的な力を身につける事も出来る。

 必要になる貢献度は他の技術などより多く必要だが、使ってみたければ成長させてみるのも良いだろう」

 それが生き残るのに必要かどうかは分からぬが、と最後に付け足される。



「蛇足だが、ステータス画面は他の者に見せる事も出来る。

 見せる項目は諸君らの自由に出来る。

 必要ならばそれらを見せても良いだろう」

 確かに蛇足であろう。

 能力を見せ合う必要がそうそうあるとは思えない。

 いずれそうしなくてはならない時も来るかもしれないが。

「他にも色々な機能があるが、説明は省く。

 自分で色々試してもらいたい。

 正直に言えば、そこまで諸君らの面倒を見る義理も義務もない。

 多少の説明なら、その中に入っているのでな」

 酷い事をさらっと言ってくれる。

 その言葉に、おびえる者も何人かいる。

 逆に憤りをおぼえる者もいた。

 当たり前だろう、死ぬかもしれない状況においやっておいてこの態度なのだから。

「さて、説明はこれくらいだろうか。

 一応こちらとしては最低限の事は伝えたはずだ。

 あとは諸君の才覚で切り抜けてもらいたい。

 そんなものがあればだが」

 時折出て来るこういった言葉がこの場にいる者達の神経を逆なでする。

「また、こうして説明してる間にも敵は近づいてきている。

 今もかなり近くまでやってきている。

 ぼやぼやしてたら、そいつに殺されるかもしれない。

 老婆心ながら忠告をしておく」

 早めに武器を手にとった方が良いのではないか、となんだか楽しそうに聞こえる口調で言ってくる。

 言われて誰もが周囲を見渡した。

 周囲は木々が生い茂ってるので、仮面の男が言ってる敵の姿は見えない。

 だが、それ程密集しているわけでもない木立の向こう側に、姿が見えない敵がいるのではないかという疑念は浮かんでくる。

 不安にかられ、何人かは武器に目を向けた。

 仮面の男がいう事が本当なら、それらは今後必要になるであろう。

 赤髪の女がそちらに向かっていって武器を取る。

 それを見てトモキも落ちてる武器の所へと向かっていった。

 嘘か本当かはまだ分からないが、一応の備えくらいはしておいた方が良いだろうと思って。

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