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【第4話】命賭けたけど自作自演なんです

スライムがあらわれた!!


門倉かどくら しのぶLV:1

神無木かんなぎ 偉緒いおLV:1


コマンド? →逃げる…一択に決まっているのだが、相手は動いた物目掛けて物凄い速度で突進してくる球体だ。

改めて着弾点を見てみれば、薄壁が突き破られている。運が良くても骨折くらいは余裕でするかもしれない…。

その様をありありと想像してしまい身震いを覚えた。その震えに反応したのかスライムは殊更激しく震えだす。感度はすこぶる良好らしい。

それがターゲットを決める前振りだったのだろう。地面に面してる部分をタコの吸盤の様に貼り付け上半分を後ろに引き延ばす。

輪ゴムを指で飛ばす要領で元に戻ろうとする力で射出する弾力性をコイツは持っている! それが高威力の突進招待!

ヒュゴォ!!

風を切る音を耳にする前にボクは横に飛んでいた。スチールの作業台がベコン!と凹んだ音が響く。

「コイツは攻撃までの予備動作が長い! 今の内に対策を立てよう!」

提案してはみたが、魔法に関してボクは門外漢、偉緒ちゃんが頼みの綱だ。

「当たったら痛いじゃすまなそうです! まずは防御を上げましょう! そういう魔法があります!!」

「助かる!」

「自分以外の人間には無効ですが!!」

「ボクだけオワタ式!?」

「それでは可哀想なので…、忍君は逃げてください」

決意の籠った声。だけれど、従うわけにはいかなかった。元々、アイツはボクみたいな一般学生でも戦える想定だった。それなのに逃げろと言うのは彼女にとって想定外だったということだ。だったら、

「逃げるわけにはいかない。君だけを危険にするわけにはいかない!」

「心配ご無用! 魔法少女のこの私がチャチャっと片付けちゃいますので!」

眼を閉じ、胸の前で両手を広げ…、

増幅ブースト!」

詠唱した途端、彼女が気持ち逞しくなったように感じた。

先程言ってた防御力を上げる魔法か。もしかしたら服の下はすごいマッチョになってるかも…想像するのはやめておこう。


そして、彼女は手を伸ばす。その先にあるのはアルコールランプ。

狙いは火球ファイア・ボール

さっき偉緒ちゃんが作った火の玉はバスケットボールほどはあった。あの手のひらサイズのスライム程度蒸発させる程の火力はあるかもしれない。

でもダメだ!

「気をつけて! もう攻撃態勢に入ってるッ!!」

「っ!!」

二人の視線が捉えた時には遅かった。アイツは既に弾丸と化した自身を射出している!

狙いは偉緒ちゃん。回避は…間に合わない!!

ガシャン!!

破砕音はアルコールランプ…のみ。

……ハズレて、くれた…。

「けど次はどうでしょうね。攻撃手段を失くしちゃったし。どこかに武器があれば…武器…そだっ」

何かを閃いたのか部屋の隅にダッシュする偉緒ちゃん。

スライムはまたも攻撃態勢。後ろを向いてる偉緒ちゃんは隙だらけだ!

ボクはとっさの機転でポケットからスマホを取り出し適当なアプリを大音量で起動し投げつける。

飛んでくるスマホから飛びのくスライム。音を頼りに攻撃するなら音が鳴るものが迫ってきたら回避行動をとる予想は的中したらしい。

時間を稼いでる間に偉緒ちゃんはロッカーからモップを取り出し、バッティングフォームで待ち構えていた。

「バッチコーイ! 増幅ブースト済みのコイツで会心の一撃をお見舞いしてあげます!!」

大声に反応して攻撃に入るスライム。奴はさながら打たれるために放られたボールだった。射出されたら最後回避手段を持たないスライムは…。

カッキーン!!!

軽快な音を立て吹き飛ばされホームラン!

…とはならなかった。

粘菌の様にネバネバまとわりついて衝撃を無効化している…。

元はただの塩水なのに器用な真似をする。これが魔法の影響なのだろうか。

モップにまとわりついたスライムが太ももに移動した時、悲鳴が響いた。

スライムの触れたスカートが溶けている…!

「白っっ!!!」

「なんです!?」

「なんでもないっ!! それより怪我はない!?」

「服だけを溶かすみたいです!! でもこのままじゃちょっと…」

このままじゃあられもない姿を晒してしまう! いいぞ、もっとやれとは思ってない!

助けるにしてもどうする? 魔法は使えない。物理も効かない。攻撃する手段がない相手をどう倒す…? 待てよ、攻撃する手段がない…?

「ゴメン、少しの間持ちこたえて!」

言うが早いか隣の準備室へ飛び込んだ。準備・片付けはいつもボクが任されていた。だから、その場所はすぐに分かった。

戻ったボクは薬品棚から取り出したソレをスライムに思い切りぶちまけた!!


―――――


「………勝った」

安堵と共に体の力が抜け、その場にヘナヘナと崩れ落ちてしまった。「ゲームと現実は違う」散々言われてきた言葉をこんな形で実感するとは思わなかった。

酷使してごめん、多くの主人公たちよ…。

スライムだった物は粉々になってもう動かない。

「あの薬品は吸水性ポリマーだよ。吸水力の実験で水をみるみる吸い込んだのを思い出したんだ」

「あったあった! でもあの場でよく思い出せましたね。私にない発想力。忍君いなかったらけっこーやばかったかも」

制服のブレザーを腰に巻いて損傷したスカートを隠しながらウンウン頷いている。

(俺の姉ちゃんの使ってる生理用品にも使われてる奴だ!)実験中に発した内田君のこのセリフがなかったら記憶に残ってなかったと思う…。ありがとう、内田君!

「で、どうでした? レベル上がったでしょ?」

こっちを向いたその顔は、満面の笑みで輝いていた。

システムメッセージもファンファーレもないんだ。そんなのわかるわけがない。ないのだけれど、

「…経験値は得られた気がするよ。今までで一番ね」

彼女の笑顔には近づけるよう、僕なりの精一杯の笑顔で返した。(偉緒ちゃんからは前髪で表情は見えてなかった…)

「貴方になら…私の全部、見せてもいいかもしれません」

…?

「明日、私の実家に来てくれませんか? 父様にお会いして頂きたいんです」

…ちょ、ちょっとちょっと! それは性急なのでは~?

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