第3話 母からの贈り物
私はタンパの町を出た。町を出る前に一悶着あったのだがあまり良い思い出じゃないので、語るのは別の機会にしよう?
後は待ちに待った山菜取りであったが、どうも上記理由から気分がのらない。いやそんな事よりあの竜の方が頭に引っ掛かる。
私はどこかであの龍を見たことがあるのだろうか、考えをめぐらすがそんな記憶はどこにもない。
しかしそんな中で昔、家の書庫で龍にまつわる本を見たことがある事を思い出した。
私は早々に山菜とりを済ませ、自宅へ大急ぎでかけていった。
「ただいまー」
「あら早かったじゃない?」
部屋の奥からお母さんの声が聞こえた。
「ここ置いとくね」
私はお母さんに顔をあわすことなくリビングのテーブルにカゴを置いた。
「アサ?」
お母さんがリビングを覗きに来たときには私はもう書庫へ足を走らせていた。
書庫についたが何せ何年も入ってないような場所だ。ほこりや、くもの巣などホラーの世界がひらがっていた。何百冊と棚に並んだ本から、龍の本を探しだす。
背広のタイトルとにらめっこして30分ようやく龍の本を発見した。
相当古いようで擦れてタイトルも読み取れないが龍の文字だけは確認することができた。
中身を開いてみると龍の絵と共に説明や歴史がしるされていた。その中の龍の一つがタンパで見た写真のものと酷似していた。
そのあと私は時を忘れて食い入るようにその本に没頭した。全てに目を通して最後のページに差し掛かった時そこにメッセージが記されていた。
私の最愛の娘にこれをおくる、これはお前の証であり先祖の証である。
アサ。
「これ私へのメッセージだわ。お母さんが?」
そしてその本にはすみにくぼみがあり、キラキラ光る宝石のような物がある。
手に取るとそれはイヤリングのようなものだった。文章はその先も続いているようだったが、この意味が気になったので私は書庫を出てこのことをお母さんに聞いてみた。
「そんなものあった?」
お母さんは知らないようだった。
「ううんなんでもないの、気にしないで」
その晩、私は書庫の本を自分の部屋持ってきてしまった。なんだがお母さんに見られてはいけないような気がしたから。