「扉は開かれる」
いつものように学校へ行きいつものように家に出る。
当たり前の日常だった。
俺はいつかフツーに社会へ出てフツーに結婚して家庭を持ちフツーに死んで行くのだろう
誰も劇的に死んでいけない。
それがこの世の理だと俺は考えている。
それを杏子は『ジジくさい』と呆れたように言う。
だけど、それが現実だ。
いつものように家に帰るとババァ、つまり俺を産んだ母親が蔵からひな人形を持ってきて、と命令してきた。
どうやら従妹が遊びに来るらしくそのために出すらしい
俺の家は古い屋敷
だから物置が多くある
去年までばあちゃんと一緒に住んでたが、もういない
葬式中、親父は泣いてたが、俺は何故か涙が出なかった。
あんなに世話になったハズなのにな・・・?
そんな事を想いながら俺はババァの命令通り蔵の扉を開ける。
「うっげほっ、げほっ」
長く誰も立ち入ってないためにか埃が溜まり蔵を開けた瞬間に風で小さな埃が舞う。
「ちっくしょー、掃除ぐらいしろよ」
目と口に埃が入り涙目になりながらライトをつけ周りを照らす。
薄暗い蔵はガラクタばかり積み重なって不気味そのものだった。
「つーか、マジ何処だよ・・・」
とにかく近くにあったモノから手を出し始めることにした。
あの母親は「ごめーん、何処にあるかわかんないから探して♡なかったら夕飯抜きだから」とぬかしたのだ。
ある意味、家族の中で一番強いのは母親なのかもしれない。
夕飯が食べられないのは育ち盛りの俺にとっては死も当然だ。
とりあえず適当にモノを物色することにした。
『・・・てっ』
「あ?」
数分間物色をしていると変な音がし自然と手が止まる。
不安で不安でたまらなくなりその音がした場所を照らす。
「のあっっ!!!!?」
照らした先に現れた人影に俺は尻もちをついてしまう。
恐る恐る落としたライトを持ちそれを照らす
だが、其処にあったのはただの古く臭い全身鏡で其処に写し出されていたのは情けなく尻もちをついている自分自身だった。
「んだよ。ビビらせるなよ・・・」
ため息をつき俺は立ち上がりズボンの埃を払う
我ながら情けない
こんなトコ誰にも見られなくて良かった・・・
俺はその鏡に近寄りそれに触れる
ばぁちゃんが話してくれた異世界に通じる鏡みたいだ
しかもイタリアとかの美術館にありそうな感じ
『・・っけて』
「ぇ?」
『助けて!』
女の子の声が聞こえたと同時にその鏡が光を放った
反射的に目を瞑り俺は身体を引っ張られる感覚を覚えた
その蔵は何事もなかったかのように静寂に包まれた
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