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青葉、ゴリラ(オス)につっこんでみる。

 学園で一番の美少年、ラブリーアイドル草野青葉です!

 そんな風に思っていた時期もありました。

 クラスが決まって満君を見た瞬間、そんな自信は消し飛びました。

 なんでしょう、あの完全無欠の美少年は!

 特別目立つ吹き出物があるわけでもない、鼻や口のパーツが驚くほど曲がってるわけでもない。ファッションだって普通の制服の上着とスラックス、髪は黒のショートカットと、今時珍しいほど清楚ないでたちだ。特別なポイントがあるわけではないのに、溢れ出て留まることを知らない美少年オーラ。ナチュラルに個性的な顔の造りから小柄ですんぐりした身体と短い手足の先まで、どこをとっても神業の域の黄金比率。

 すぐに悔しささえも通り越して、はうっ、ってなりました。

 ここで超絶美少女にいやがらせなんてしてしまうのは、三流のブス男の所業です。あたしは腐ってもクラス二番目のラブリーアイドル、満君と友達になることに決めました。

 ラッキーなことに隣の席になって一週間、ようやく満君との会話のきっかけを掴むことができました。

 一目見た瞬間から友達になりたいと思ったのに、ここまで延び延びになってしまったのは……なんでだっけかな、満君のあまりの美少年オーラにちょっとだけびびってたのかもしれません。

 さてお話してみた満君の印象ですが、このやろー絡んでみたら満君の美少年オーラはさらにうなぎ上りです。なんだろう、この可愛すぎる物体!

 世慣れしてない感じで反応がいちいち初々しいし、それでいて一生懸命話してくれるし、ダメだよ女子に手作りお弁当あげるなんて言っちゃあ。満君みたいに可愛い子にそんなこといわれちゃったら、水上が勘違いしたってはっきり言って責められないよ。これが計算だったら恐怖だね。

 まさか超絶美少年なのにブラジャー忘れちゃうなんて天然も計算だったりしたら……うわ、こわ! 満君こわっ!

 まあ満君を無理やり魔性キャラにする策略は置いといて、ラブリーキャラで売るはずだったあたしが、満君が危なっかしいせいですっかり口うるさいお兄さんキャラになってしまいました。とほほ。

 この水上っていう女子、別にかっこよくないってかまんまガキだし、下品だし馬鹿だしいわゆる厨の女子の典型って感じだけど、なんかいい性格してるっていうか流されます。ゴリラのつがいに満君が連れて行かれそうになったときのフォローは、それなりにきゅんとこないでもなかったです。


「水上さん、本気できしょい!」


 満君の匂いを嗅ぎたい発言をかました水上に、すかさず罵倒を入れていたら、満君が突然ガンってなりました。満君の顔を見たら青ざめてます。クラスぶっちぎりのナンバーワンブス、ゴリラ(オス)が満君の横に立っていました。


「気持ち悪い笑い方してんじゃねえよ。満、ちょっとツラ貸せ」


 なに言ってんですかね。頭湧いてんのかな、この進化前。



「ちょっと、何乱暴してるの。えーと、あんた名前なんだっけ?」


 ゴリラ(オス)、一応満君と知り合いらしいので、がんばって冷静に問いかけてみます。怒り抑えきれないけど。どうせ満君がかわいすぎて勘違いした女取られたとか、逆恨み系でしょ? もてない男はかわいそー。


「あんだよオカマ。てめえには関係ねーよ、口調の前にきたねえ顔でも整形してろ」

「……えっと、何それ。大迫力の自虐ネタ? 女子みたいな言葉遣いも、ゴリラみたいな顔もあんただし」


 満君に言いがかりをつけてくるのかと思ったら、ゴリラのやろー渾身のギャグを放ってきやがりました。しかもオチても怖い顔のままです。対応に困ります、これではあたしが空気読めないみたいです。


「えと、誠司君、その。僕、今日は青葉君と帰るから、誠司君とは行けない! ごめん!」


 俯いたままちょっと唐突に、満君は勇気を振り絞るようにそう叫びました。

 かわいいなおい、あたしと帰るからってところが余計に可愛い。あたしを萌え殺す気かと。


「ああ?」


 ゴリラが満君の胸倉を掴みます。「ひっ」と小さく悲鳴を上げながら、満君はぎゅっと目を瞑って身を強張らせます。なんだこれまたかわいい。じゃなくて、助けていいんですかね。

 ゴリラのギャグがいちいち真に迫りすぎて、やりづらいったらない。


「いい加減にしなよ、誠司。満君怖がってるよね、いくら幼馴染で冗談でもやりすぎってあるんじゃないか。それ以上やると、いくら誠司が男でもさくら様キレるよ?」

「さくら……なんだよおまえ」


 ゴリラの手首を掴んで満君から引き剥がし、さっきまでお下品なことを連発していたのと同じ声で妙に大人びた調子で凄んだ満君の白馬の騎士(ナイト)は、またしても水上でした。


「大丈夫、満君!?」


 ゴリラを追い払って、水上がまた馬鹿丸出しの能天気な声で満君に声を掛けます。


「う、うんっ! ありがとう!」


 満君の水上への視線があっつい。これはまさかの、恋する乙男(おとめ)の目ではないですか。また可愛らしいことで。

 シャレにならないくらい高嶺の花だと思うけど、せいぜいがんばれ水上サン。クラスでそこそこイケてる女子の足立と関根がダークホースもいいところの水上に出し抜かれて、焦ってる顔もおもしろいしね。

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