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満、女子にかわいいと言ってみる。

 満です。幸せです。


「えー、満君お弁当自分で作ってるの!? すごい、男の子らしいね!」


 青葉君がちょっと大げさに誉めてくれます。照れます。


「満君、得意料理は何? 俺肉じゃがとか好きなんだー!」

「ぼ、僕も好きだよ、肉じゃが。たまねぎをすりおろすと甘くなっておいしいんだ」


 男言葉の女子が、身を乗り出して会話に入ってきます。女子との会話なんて、入学前からすると都市伝説のレベルのことです。たまたまその子が男言葉で太っていて、失礼だけどかなり美人とは対極な女子だったから、あまり緊張せずに返事ができました。

 しかし口にしてしまった直後、不安になります。隠し味語るとか、何を調子に乗っているんでしょう。気持ち悪い男子の話を、女子が聞きたいわけがない。


「ご、ごめんなさ……」

「すっごいなー、満君!!!」


 被せ気味に賞賛された。おっかなびっくり伺い見ると、不細工な(あ、思っちゃった)女子は頬を紅潮させ瞳をきらきらさせて僕をみています。嫌がられてない。むしろ喜ばれてる?

 うれしい、うれしいです。えーと、名前わからないからイメージで、ゴンザレスさんありがとう。


「んっじゃー、満君! 今日そのウィンドブレーカー貸してあげる代わりに、明日このさくら様に肉じゃが弁当を所望する! 必要でしょ、満君! 男の子が乳首チェキでは帰れないよ!」

「ちょっと、水上さんだっけ? ちょーしに乗りすぎだよ、さっき満君助けたときちょっとだけ女らしくてかっこいいと思ったのに、幻滅。下品。最低」


 さくらちゃんが僕のお弁当が欲しいといってます。青葉君がちょっと過激だけど僕を庇って怒ってくれてます。罠でしょうか、罠でもいいや。温かくて幸せで、くらくらしてしまいます。


「あんたみたいなテンションだけのチビのブサ面、あたしたちみたいな美少年と会話できるだけでも感謝しろっての! 満君も無視でいいかんね、こんな馬鹿!」

「え、あ、ごめん。不細工なのに調子乗りました。もう言わないから、満君、嫌いにならないで」


 さくらちゃんが半泣きです。青葉君が超上からキレてます。こういっちゃ何だけど、青葉君も不細工で眼鏡でオタクっぽくて女の子なんかにもてるわけない、僕と同類だと思ってたんだけど……なんだろう、麻耶ちゃんに通ずる迫力があります。


「いや、こちらこそ、なんか、ごめん。さくらちゃんは、かわ、かわいいと思うよ。お弁当、僕なんかので良ければ、明日もって、くる」


 さくらちゃんと話しました。かわいいと、言いました……!

 恥ずかしくてのぼせてしまって、煙になって消え入りそうな気分になります。


「「「えーーー!!!」」」


 いきなり青葉君と集まっていた女子たちと、さくらちゃんの声も唱和しました。


「き、聞いたかんね! 言質ゲットだよ! クーリングオフ利かないよ! てかかわいいって言われた! うれしくなんかないんだかんね、満君のが百倍かわいいくせに! 恥ずい! 死ぬ! うはーどうしよ、もうそのウィンドブレーカーあげちゃう! あーでも、やっぱり返して欲しい、満君の香りのついたさくらのウィンドブレーカー」

「水上さん、本気できしょい!」


 さくらちゃんと青葉君の、なんだかよくわからないけど可愛らしい漫才をにまにま見つめていたら。

 ガン。

 椅子の脚を蹴られました。


「気持ち悪い笑い方してんじゃねえよ。満、ちょっとツラ貸せ」


 誠司君でした。

 ポケットに両手を突っ込んだまま、僕を見下ろしています。

 綺麗な顔に張り付いているのは、凍りつくような冷たい表情。

 これで幸せな夢も覚めてしまうみたいです。

 誠司君に名前を呼ばれたのはどれくらいぶりだろう。色々実感が伴わず、僕はそんな呑気なことを考えていました。

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