誠司、狂った世界を観察する。
放課後です、お疲れ様。貴志誠司です。
ハイスクールロック系ビジュアルバンド、トワイライトクロスのギター兼ボーカルやってます。
この自己紹介は、合コンで女の子から軽い笑いを引き出せるので重宝してる。自慢じゃないが、真面目にバンド活動をやっているので実際歌もうまい。カラオケ合コンだったりする場合、そこから甘いバラードでも一曲歌えば、笑いからのギャップでさらに女子のハートはメロメロだ。
脱線しました。
現実逃避もしたくなります。
クラスが変です。
どこがどう変って、どこもかしこも変なので、どこから手をつけたもんだかわからないんだが。
まず女子!
ぱっと見、クラスの七割が女子だ。
俺のクラスは男女半々くらいだったような気がする。確か。意識したことはないが、女子が多かったら俺はもっと喜んだはずだ。
人が入れ替わったのだろうか。とりあえず中学から一緒の麻耶、さくら、うじ虫こと満はわかる。あとのメンバーが、知ってるような知らないような、どの顔も見たことはある気はするのだ。それこそこの一週間同じクラスだったといわれても、そうだったかもな、と思える程度には。
そしてやけに美人アンドグラマー率が多い。
麻耶も外見だけなら読者モデル級に顔もいいしスタイルもいいが(背が足りないから本職モデルじゃ厳しーかなあ)、麻耶に張るんじゃないかっていうスタイルな上に背も高いスレンダー爆乳美女が、うん、ざっと見十人くらいいる。
それでも麻耶が飛びぬけて美人なのは、なんというか、気品? オーラのようなものだろうか。
ん、さくら? さくらもかわいいよ? 凹凸のない子供体型に自己主張の少ない童顔を乗せて、頭をふっわふわにすれば、はいあら不思議さくらの出来上がり。
さて、うん、このクラスの女子たちなのだが、なぜ丸誠印の最上級評価をあげられないかといえば、下品なのだ。下ネタを言うは、ガニマタだわ、机の上であぐらまでかくは。爆乳美女のパンツが丸見えだ。
ていうかブラジャーをしていない。パラダイスなのだろうか。あちらこちらでぼよんぼよんしてる。たぷんたぷんしてる。ぱふんぱふんせねば。
ついでに男子だが、こちらもきもい。
ざっと見オネエ率、うじ虫の満含め九割。非オネエの一割は俺一人だ。
まぁうじ虫くらいならただの幼虫なのでまだ受け入れられる、オスメスどうでもいいしな。ただ二足歩行のセイウチのような男子もしなを作ったり内股で歩いたりしているのを見ると、麻耶みたいな言い方になるが、生理的恐怖を感じる。
その上クラスの男子半分は、女子の制服。一人なら変態だが、五、六人いて普通に振舞われると、不思議と違和感が消えてくる。
うん、狂ってらっしゃる。
さて、俺以外のおな中トリオ+うじ虫君の様子は。
麻耶は席で俯いたまま、身じろぎもしない。ちょっとわなわなしてるかもしれない。まぁ普通だな。演技派女優も、舞台が狂ってるんじゃどんな演技をしたらいいかわからないだろう。
さくらは、おかしい。もともと突飛な行動を起こす女だったが、先ほどのゴリラはないだろう。小学生男子かと。さくらよ色んな意味で退化してるよ。
満もおかしい。隣のオタクっぽいチビと満面の笑顔で会話している。他にもさくらと、顔面偏差値の低めの女子が数人、満の机に集まって騒いでいる。うじ虫に笑う機能とかなかったと思うが、とりあえずバランスの悪い顔が歪んでさらに不細工になっている。
満の場合は、満本人がおかしいというよりも、周りがおかしいのだろう。昨日まで、うじ虫と会話する人間なんて、俺と麻耶以外いなかった。
放課後友達と談笑するのは麻耶だったし、女の子が集まってきゃーきゃーいうのは自分の周りだったはずだ。
まぁ女がグラマーで開放的なのはそれはそれで結構なことだが、とりあえず麻耶の面倒はみてやらないと後が怖いな。
「やれやれ。日野サン、大丈夫?」
珍しく誰にも構われない静かな環境で帰り支度を終えた俺は、鞄を持って立ち上がり、麻耶に声を掛けてみた。