2.一時の安心
子豚との会話をしながら昔の事を思い出していたわけだが、恵梨先生の話はまだ終わっていないようだ。
こちらの雑談が終わりそうだと気づくや否やまた口を開いた。そしてそれはなぜか、とても苦い思い出を思い出すようなそんな顔で語られる。
「…よく聞け。3限から始まる審査会だが、上級生の発言がとても強いものになることが予想されている」
上級生の発言が強い。それは予想できていたことだが、先生の顔があまりにも真剣なものすぎて想定以上のものなか、と思わせてくる。
しかし、ここで空気を読めない運動豚Ver.1がすかさず阿呆な発言をする。
「だから何だっていうんですか?こっちには霧島ックスがおるんすよ?何も問題ないじゃん」
これを聞いた恵梨先生は少し呆れたような顔をしたが少しというか大分シカトして答えた。
…というか何だよ霧島ックスって。勝手に愚豚があだ名を作るな。痴れ者め。
「上級生はな、正直言ってすごい癖が強い。そして頭も非常にキレるうえに野蛮で横暴だ。いや、勘違いしないでもらいたいのは彼ら全員がそうではないということだが、今回の審査会の生徒たちは今述べたような生徒だ」
しかしここでモテ豚が陽キャではの質問を発する。
「僕は同級生と何回も関わっていましたが、そこまで癖…いや、とてつもない生徒がいた記憶はありません。それどころか、みなさん優しくて心の支えになってくださった方ばかりでした」
確かに振り返ってみればそうだ。私はマドンナが言え、メス豚もオス豚も私に向かって謙遜の目を浮かべながら話しかけてきた人間は大勢いたが、そいつらは全員、所詮豚って感じのやつばかりであった。
それほど悪癖があるような生徒を見た覚えはないが…
「バンッ」
何か物が落ちる音が教室に鳴り響く。全豚+私が物音のした方向を向くと、なぜかツン豚が顔を青白くしてまるで幽霊にでも取り憑かれたかのような目をして下を向いていた。
落としたのは筆箱だったようだが、それを気にする様子はない。それどころかどんどん顔色が悪くなっていく。生理でもきたのだろうかな?なんてしょーもないことを考えていると、ツン豚が何かぶつぶつ呟き始めた。
「いや、いやよ姉さん。いや、私は私はもう嫌よ。いやいやいやイやイヤイヤイヤイヤイヤイヤァァァァァ」
最後の方はかなり声を大にして悲痛な叫びという感じであったが、一体何のことを言っているんだか。すると、ここですかさずモテ豚が様子を心配して彼女の近くによっていこうとしようと近づく。
「あぶねぇぇぇ」
何が起きた?よく見えないが、血の匂いがする。
モテ豚が何をされたのか理解出来ずに後ろのめりになっている。
そしてその前には…盾となって飛んできたシャーペンを肘で防いだ運動豚Ver.1がいた。
そしてその肘には2、3cm程度めり込んだシャーペンが見える。
血がポタ、ポタ、と音を立てて落ちている。
そしてツン豚は全員を蔑むような、そして絶望するかのような目を向けて運動豚Ver.1に刺さったシャーペンを眺めている。
そのシャーペンは、何を隠そうツン豚本人から飛んできた物であった。
「お、おい大丈夫かよ⁉︎ 兄弟」
Ver.1と仲良しなVer.2はすぐにVer.1を心配したようだ。
「あぁ大丈夫だ兄弟。それよりも冷川っちなかなかやるぜ。今まで気づかなかったが運動神経が常人のそれじゃねぇ。今だって確実に江嶋マンタインの目を狙ってやがった」
「ったく。こんな状況でもその舐めた口調は変化しないのかよ兄弟。まぁそういうところがこの堂園様の兄弟たる所以なのだがよ。まぁそれより何だ、お前さっさと保健室に行ったほうがいいぞ。結構ヤバめの傷に見えるしな、それ」
堂園ことVer.2が指で指したその傷からはいまだに血がポタポタと垂れてきている。
なるほど、Ver.1はその唯一の取り柄である運動神経を生かして、モテ豚に飛んできたペンを自らの肘で受け止めたというわけか。ツン豚の隣の席とはいえ、よく反応できたものだな、と少し感心してしまう。
そして、そのポタポタする血を見たくない、血が苦手な生徒もいるようでそう言った生徒は目を伏せようとしていたが、ここで目を瞑ってわいけないという謎の正義感、いや罪悪感のためか頑張ってこの状況を見ていた。
「あぁそうだな兄弟。エリッチ、保健室行ってくるわ。ほな、みんなまた後でな〜」
何というか今の空気にそぐわない会話が教室で繰り広げられていたわけだが、当の恵梨先生は何かを思案しているのか一言も口にせず、傍観に徹するようだ。
「冷川さん。君は今、僕の目を…穿とうとしたのかい?」
やっと状況の整理が終わったのかモテ豚がツン豚に質問をする。
「えぇ。私に近づいてきたからつい、ね」
この返答に対し、かなりモテ豚はショックを受けたようだ。それもそうだろう。助けようと思った豚にそれを拒まれるどころか、傷(それもかなり重度の)を負わせようとしてきたのだから。
そして気になる点は、先ほどまでの顔色の悪さがツン豚に見られないこと。ストレス発散法がペン投げなのだろうか… コワー
そう考えていると、被害者はモテ豚。メス豚の援護射撃が始まる。
「いや、ちょっと冷川さん。それはちょっと酷くない?」
「そうよそうよ。若月くんが間にわって入ってくれたから江嶋くんは傷を負わないで済んだけど、江嶋くんに傷ひとつでもつけたら大惨事なのよ?わかっていってるの?」
…何だろう。少し運動豚Ver.1が可哀想になったのは私だけだろうか…
しかし、ツン豚がその凍てついた目で彼女たちを睨み、そして吹雪のような言葉を放つ。
「だから、何?」
今や一触即発になりそうなこの空気。だが、ここでついに先生が動く。
「そうか、そうだったのだな。お前には悪いことをした、冷川。江嶋、悪いな。この件は水に流してもらいたい」
しかしここにメス豚陣は黙っていない。
「は?先生何それ?今怪我人が出てるんですけど?江嶋くんの心が抉られてるんですけど?」
しかし、モテ豚は陣営の元にいき、手で彼女らを制す。
「いや、いいんだ。きっと冷川さんにも何か事情があったんだよ。さっきから様子が変だったし」
「でも、それじゃ江嶋くんが可哀想…」
しかし、これ以上は続けさせまいと先生がモテ豚に話しかける。
「江嶋、理解感謝する。冷川。お前は今日は寮に帰って休んでいいぞ」
するとツン豚は何も言わずに帰っていった。
だが、これにはやはり不満がある生徒がおり…
「は?やっぱおかしいんじゃない?優待されすぎじゃない冷川さん」
「お前らには関係のないことだ。さっさと席につけ」
しかしそのような意見も先生に消されてしまった。
これには何か深い事情があるのだ、と多くの生徒は理解しているようだが、理解が追いついていない生徒も少なからずいたが、先生のマジな空気を感じ取り、口を閉じていったのだ。
しかし、その例外もおり…
「ぐぅぅぅ。がぁぁぁぁ」
あ?何だこの騒音は。
あ、、いや何でもないなこれは。うん何でもない。
子豚も少し反応して私の方…ではなくて存在しないナニカを見つめていたがすぐにそっぽを向いた。
しかし、あれだ。このナニカの間抜けさで状況が少し和らいだことが癪だ。
「悪いな。冷川には諸事情があるんだ。今回の件は目を瞑ってほしい」
先生の発言には流石にもう誰も反対意見を述べたりしない。
モテ豚はかなりメンタルにきたようだ、地面を見ていたが。
「それでは、気を切り替えて話の続きをするぞ」
そして状況はさらに深刻なものへと変わるようだ。
どうもどうもです!
少し掲載が遅くなってしまって誠に申し訳ありませんっ(ペコッ)
と、そんなわけで春の匂いが感じられる季節となって参りました〜
いやぁ色々とこの時期は忙しいです!
そんなわけだけど、頑張っていこうと思います‼︎
読んでくださってる皆様ありがとうございます。
感謝感激雨あられです。
そして私にもそろそろ来い、恋よ!!!




