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謎怪書記  作者: 庚颯
4/5

手を振る人達

※フィクションです。

 Fさんは車通勤でした。

 新卒で入社して半年、田舎の町から繁華街まで運転し出勤する毎日を過ごしている。

 大学を卒業と同時に運転免許証を取得し、まだ運転そのものが楽しい時期。追い越し車線を頻繁に利用し、他の車を追い越していくことがとても気持ちが良かった。

 そんなFさんにも一つ気持ちの悪いことがある。

 いつものように追い越し車線を走行中、赤信号になり停車する。すると、左の方から視線を感じる。赤信号で止まっているのだから、当然、左隣にも車が停車している。そこから視線を感じるのだ。

 居心地の悪さに思わず隣の車へと視線を向ける。

 そこに居たのは見知らぬ男性。なぜか満面の笑みでこちらに手を振っている。

 あれ……?どっかで会ったことある人か?

 そう思ったが記憶にない。相手が知り合いと間違えているものだと思い、前へ顔を戻した。それと同時に青信号になる。ブレーキからアクセルへとペダルを踏み替えて車を発車させた。

 あくる日も同様のことがあった。

 信号待ちをしていると左隣から視線を感じる。視線をやれば、昨日とは違う男性が笑みを浮かべて手を振っていた。

 Fさんは薄気味悪さを感じながらも無視を決め込み車を走らせた。

 その次の日もまた信号待ちで視線を感じる。今度は笑顔の女性が手を振ってきた。

 連日続く奇妙な出来事にFさんは頭を悩ませた。気にし過ぎだと言われればそうなのかもしれませんが、気になったら頭から離れない。それがFさんの性分でした。

 そうだ、追い越し車線を走っていると手を振られるなら、車道の一番左、走行車線を走ればこんなことは起こらなくなるだろう。そう思い、翌日から走行車線を走ることにした。

 いつものように信号に引っ掛かり停車する。

 今日は左隣に車はいない。心置きなく運転に集中できる、そのはずでした。

 不意に左から視線を感じる。

 嫌な予感がしながらも、左に視線を向けた。

 そこには、歩道を歩く男女の小学生の集団がおり、こちらに向かって元気に手を振っている。

 一体なんなんだ……。

 どちらの車線を走ろうが、信号待ちになれば笑顔を浮かべる人に手を振られる。実害がないとはいえ、集中力を欠くのは確かだ。散漫状態で運転してしまえば、いずれ重大な事故を引き起こしかねない。

 気にはなるが、真っすぐ前だけ向いて運転しよう。そう心に誓うことにした。

 ある日、追い越し車線で車を走らせていると前方の信号が赤信号になった。

 また視線を感じるのかと、気分を落としながら減速する。

 すると、隣の車線に見慣れた車が止まっているのに気づいた。

 ナンバーを見て、間違いない同期のOの車だと確信する。

 二人の車が同じ位置になるように停車させると「声を掛けてやろう」そう思いOの方へと顔を向けた。

 すると、見たこともない気持ち悪いぐらいの満面の笑みを浮かべたOが手を振ってきた。

 こいつ、何がそんなに嬉しいんだ?

 会社に着くなり、Oへと「さっき、道路で隣に止まっただろ?何であんなに笑顔だったんだ?何か良いことでもあったのか?」訊ねてみる。

「良いことも何も、お前、あんな美人な彼女いつの間に作ったんだよ。胸元なんかあんなに開けて、谷間まで見えてたじゃねーか。そりゃ笑顔にもなるって」

「ん?お前何言ってんの……?」

 Fさんに彼女はいなかった。それどころか、出勤するのだから誰かを隣に乗せるわけもない。

「だから~、色気漂う美人さんが笑顔でこっちに手を振ってるんだから、そりゃ笑顔で振り返すだろ?」

 Oの話を聞いて思い至った。

 あの笑顔で手を振る行為は、自分に向けられたものではなかったと……。

 自分には視えない女が隣に同乗していたという事実に……。

 それからFさんは、車通勤を止めたそうです。

自分にだけ視えていない存在、そんなものが助手席に座っていると思うと車に乗れなくなりますよね。私だった即お払い行きです笑

乗り物系の怪談は世に溢れているので、自分が実際に体験することもいずれ来るのかな~と起こりえない未来を想像してしまいますね。

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