不幸の足音
※フィクションです。
Yさんはオフィス街の一角でOLとして働いていました。
駅から近く、繁華街も近いこともあり、日々多くの人が行き交っている。
オフィスでキーボードを叩いていると、スマートフォンに着信があった。画面には姉の名前が表示されていた。ちょうど休憩時間に差し掛かったこともあり、デスクを離れ電話に出ようと応答をタップした。
通話状態になった途端、スピーカーから姉の暗い声が響いてきた。
「Y、湊が……湊が……死んじゃったぁぁ~~っ」
突然の訃報でした。
姉のひとり息子である湊くんが交通事故に巻き込まれて亡くなったらしい。湊くんはまだ小学1年生になったばかりだった。これから多くの思い出を作り大人になっていく、その最中での不幸である。
会社に連絡し、すぐに隣の県の姉の下へと向かった。
現在は近くの総合病院にいるとのことで、病院へと足を運ぶ。
病院にたどり着くと姉は泣き崩れ、見ているのが居た堪れなかった。
姉は早くに離婚し、シングルマザーとして頑張ってきたというのに、世の中は無情である。
Yさん自身、湊くんの幼い頃から見守り続けた大切な家族だった。悲しみに暮れながらも姉を支えていかなければならない。実母である姉の方が悲しみは深いのだから……。
姉の代わりに葬儀から納骨までを済まし、塞ぎ込む姉を励まし続けた。
昼間は仕事をこなし、退勤後は姉の下に通う生活がしばらく続き、ようやく姉もひとりで生活をすることができるようになり、Yさんもいつもの生活スタイルに戻っていく。
しばらくして、会社帰りにYさんをつける足音に気が付いた。それも毎日毎日、途切れることがない。
意を決して恐る恐る振り返ると、40代後半のスーツを着たサラリーマンがこちらを眺めていた。
Yさんの頭に「ストーカー」という言葉がよぎった。
怖くなり足早に帰宅する。
それから不幸が続くようになった。
家の鍵を失くし、泥棒に入られ、ヒールが折れ駅の階段から転がり落ちることもあった。それだけならまだ良かった。車に轢かれそうになったこともある。命を脅かされ、Yさんの心はすり減っていく。
何で私ばかりこんな目に……。
会社帰り、今日もまた例のストーカーが後をつけてくる。
溜まりに溜まったストレスがここに来て爆発した。
Yさんは振り返り、ストーカーに向かって罵声を浴びせる。
「毎日毎日毎日毎日……。しつこいんだよ!!私に何か用でもあるのか!?」
周りは何事かと渦中の二人に視線が集まった。
男はゆっくりと近づいて来て、ポケットから塩とお守りを差し出してくる。
意味がわかりませんでした。
「これは何?受け取れっての?」
語気を強め問い質すと―――。
「貴女の脚にしがみ付いている子供の幽霊がいるんだ。無邪気さ故に、自分側へと貴女を引きずり込もうとしている」
男はそう語る。
「はっ?」
思わずYさんは聞き返す。
「最近身近で亡くなられた子供はいませんか?たぶん仲良かった子だと思うんですよ。気休めにしかなりませんが、塩とお守りを持って行ってください。お払いに行かれることをお勧めしますよ」
それだけ言うと、塩とお守りを無理やり押し付け男は去っていく。
Yさんはしばらく動けませんでした。
それからあの男が現れることもなくなり、気持ち悪いながらもお守りを持ち歩くようになった。
不思議なことに、あれだけ続いていた不幸はピタリと止まり、Yさんは近々お払いに行く決心がついたそうです。
一見変に見える人がお助けキャラだったりするもんです。偏見は持たずに過ごしたいものですね。




