休憩室に現れる者
※この話は知人から聞いた実話をアレンジしたフィクションです。
Aさんは地域のスーパーマーケットに勤めていました。
数店舗を経営して業績が安定していることもあり、近々新店舗ができるという話だ。そこは海からほど近い田舎のスーパーマーケット跡地。居抜き工事を済ませ、既に外観は整っているらしい。後はレジ周りと売り場をつくれば内装は整う。その段階で各店舗から応援という形でAさんも新店舗の店づくりを手伝うこととなった。
手伝うといっても、日中は自分の勤務する店舗の業務を行わなければならず、主要の業務を終えた後に移動して店づくりを行わなければならない。移動だけでも車で片道40分ほどかかってしまう。当然、勤務時間内に作業は終わらず毎日残業続きの生活となってしまった。
そんなある日、とある噂を聞いた。
「二階に休憩室あるでしょ?あそこ、出るって噂よ~。前にここに勤めてた人達から聞いた話だから、近寄らない方がいいわよ」
新店舗を開くにあたり、前のスーパーマーケットに勤めていたパートさんを再雇用をしている。どうやら噂の出所は、そのパートさん達のようだ。
それを聞いたAさんは「絶対に近寄らない」そう心に決めたそうです。
というのも、Aさんは少しながら霊感がありました。視えたり聞こえたりはしませんが、不思議な気配を感じることがあったようです。
それから何日か過ぎた頃、同僚の一人が「わたし…、視ちゃったかも……」と話を切り出してきました。
件の休憩室は二階にあり、階段を登った先からガラス張りの休憩室、資材置き場、仮眠室と部屋が続いている。同僚はその日の深い時間帯に、売り場づくりの為にどうしても資材置き場に向かわなければいけませんでした。その日に限って作業をしている従業員は同僚を含めて二人だけ。必然的に一人で二階に上がらなければいけません。
人感センサーの付いた照明があるとはいえ、反応するまで点灯しているのは非常灯のみ。意を決して階段へと向かった。
階段に近づくとすぐに証明が点灯する。けれど、二階の照明は階段を登りきるまで点くことはない。
カッカッカッカッカッカッカッカッ
階段の踊り場で折り返し、残りの階段を登っていく。二階に近づくにつれ、噂の休憩室が見えてくる。照明は未だに点かない。暗闇の中、休憩室のガラスに階段の照明が反射しているのみだ。
そこで同僚の足が止まった。
暗い休憩室の中、人影が動いたように見えたのだ。
思わず生唾を飲み込む。
人がいるなら照明が点灯しているだろうし、今日この店舗にいるのは同僚ともう一人だけ。その人は一階で売り場をつくっている。噂話のせいで過敏になってるだけ、気のせいだと同僚はそう自分に言い聞かせ残りの階段を登っていく。
パッと二階の照明が点灯し、ガラス張りの休憩室を照らし出した。
そこには――誰もいませんでした。
「やっぱり気のせいか」自分に言い聞かせるように思わず独り言が零れてしまう。
休憩室の横を抜け、資材置き場で物資を調達して部屋を出る。また休憩室の横を通ることが億劫でしたが、気にしない気にしないと心の中で唱えながら進んでいく。
休憩室の横を通りかかると、変な気配が中から漂ってくる。同僚は休憩室を見ることなく一心不乱に階段へと足を運んだ。
僅かばかりの好奇心でした。階段を降りて行き、もうじき二階の光景が見えなくなる。そのタイミングで、一瞬だけ覗いてみたくなったのです。降りながら一目だけチラッと休憩室を見る。当然、そこには誰もいない。ただ、変な気配だけは残っていたみたいです。
何事もなく過ぎたことに安堵し、その日の業務は終えたようです。
その帰り、店舗のカギをを締め駐車場へと移動していると背後から視線を感じたのです。振り返るも誰もおらず、気持ち悪さに鳥肌が立ちました。
何の気なしに建物へと視線を向けると、暗い建物の中、非常灯の僅かな光に照らされ人の輪郭がくっきりと浮かび上がっていました。硝子張りであることから、そこが休憩室だとすぐにわかったみたいです。
慌てて車に乗り込み、すぐに店舗から離れたと語ったそうです。
その話を聞きAさんは震えあがり、店づくりの期間をビクつきながら過ごすも、人影も気配も感じることはありませんでした。
その後、無事に店舗はオープンし、今でも営業が続いているそうです。
人の少ない夜のお店って怖いものがありますよね。出るって話があると余計に……。モデルにしたお店ではオープンまでに他にもいくつか怪奇な出来事があったみたいで、未確認ですが所謂いわくつき物件である可能性が高いような気がしますね。
投稿する現在でも営業は続いており、時折誰もいない休憩室に気配があるというのも続いているそうです。




