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十六話

この小説には一部残虐描写があります。また、そこに比重を置いた作品でもないので過激な残虐描写をお好みの方の需要も満たしてはおりません。


ハチャメチャ鮫映画愛好家の方々に楽しんでいただければ幸いです。


「そうなんだ……ねえ、私ね、いい考えが浮かんだの」


 結愛は蓮の横に座りながら話し出した。


「この玉って、玉を持った人か鮫が近くにいると光るでしょ。


 けどね、玉の持ち主が誰だとか、玉がいくつあるかまでは分からないの。さっき私の玉が光ったんだけど、蓮が近づいて来たのか、あの女性が近づいてきたのか分からなかった。


 それに田中さんも蓮が玉を持っているのは気づいたけど、私も玉を持っていることに気づかなかったでしょ。


 それを上手く使えば相手が鮫で襲ってくる前に倒せるんじゃないかな?」


「……それって、囮を使うってこと、危険じゃないかな」


「鮫を使ってる男は女の子を侍らせてるんでしょ、いきなり私を殺したりしないはずよ。


 相手が私に気を取られている隙に蓮が男を倒すの。どう、いけそうじゃない?」


 蓮は話を聞いて悩んだ。相手は鮫の強さを知っている、玉を持つ結愛を殺さずに済ますだろうか。もっと相手の情報を得てから戦う算段を立てた方がいいかもしれない。


「隙を突くにはおびき寄せないと難しいと思う。一度相手がいる場所を確認した方がいい、見つからない用に気を付けて様子を見に行ってみよう」


「そうだね。けど、私達が近づくと玉が反応して見つかっちゃうかも……」


「私が行きましょう。鮫を操っているのが兄の部下なら私の顔を知っています、迷わず私の事を殺すでしょうから、囮役は私にはできませんし、偵察くらいはやらせてもらいます――」


 美咲はそう言うとスマホを取り出した。


「これで、撮影してきます。映像を見ながらであれば作戦が立てやすいでしょう」


「僕も一緒に行きます。玉が反応しないように離れておきますけど、もし鮫が襲ってきたら逃げてきてください。相手が油断していれば倒せるかもしれません」


「結愛さんはここで待っていてください。後ろの川から小さい鮫が来るかもしれませんし、お二人を守ってあげてください」


 美咲はアフロの男とおばさんを見ながら言った。


「……分かった、二人とも気を付けてね――」


 結愛は不服だったようだが、言葉を飲み込み美咲の提案に賛同した。


「あの鮫は何人もの人をバラバラにしたひどい奴だ、気をつけろよ」


「もしよければ食べ物がないか見てきてくださる? 白米が食べたいわ……」


 蓮と美咲は三人を残してこの場を後にした。


 蓮は美咲を先頭にしてエスカレーターに続く道へ進んでいった。美咲は周囲を警戒しながらゆっくり歩いていく、この辺りの鮫は渡辺が倒したと言っていたが、生き残りがいるかもしれない。


 四つの店を通り抜けると、先に開けた場所が現れた。中央ホールと同じように上階から水が流れ込んでいたが、壁の端まで横切る川にはならず、真ん中に湖ができていた。


 美咲は物陰に隠れながら湖を覗き込んでいた、彼女はスマホを湖に向けながら蓮を振り向き手招きした。


 蓮が美咲の後ろから顔だけ出して覗き込むと、八十メートルほど先の、こちらとは反対側の湖のほとりで数名の女性が見えた。どれも若い女性で水着を着ていた、その奥にビーチチェアにもたれている男がいた。


 あの男が玉を持っているのだろう。男の隣にはコップが置かれたテーブル、その脇には水着の女性が座っていた。男はアロハシャツを羽織り、短パン姿だった。


 ヤリザメとトゲザメの玉を持っていた、美咲の兄の部下はスーツを着ていた。彼は部下ではないのだろうか?


「美咲さん、あの男に見覚えはありますか?」


「はい、伊藤グループの者です。彼が玉を持っているのでしょう」


 彼があの服装でこの儀式に挑んだとは思えない。儀式が始まってから着替えたのだろうが……彼に与えられた仕事は鮫を使って人を殺すことだ、それを実行せずくつろいでいる。かえって動きが読めないな、と蓮は思った。


 男との間に広がる波も立たず静かな湖、蓮はこの湖を使えば、結愛の作戦通りに奇襲ができるかもしれないと思った。湖の水深も、中央ホールの川と同様に深いはずだ、ホホジロザメを湖に隠し、男に近づけられる。


「蓮君、あの女性たちの中に見覚えのある方はいますか?」


 美咲が蓮にそう問いかけた。蓮は美咲の発言の意図が汲み取れなかった、今まで蓮は美咲に女性を探している、という話はしていない。


 蓮は改めて女性達を見つめた、薄暗いうえに距離があるのではっきりと顔は分からないが、なんとなく見覚えのある顔を見つけた。


「……もしかしてあの子、井川百恵かな?」


井川百恵は蓮のクラスメイトだった。制服姿しか見たことがなかったので、水着を着て長い髪をヘアゴムで結んで上げている、蓮は一目では彼女だと分からなかったな。


彼女もデパートにいたのか――そういえばデパートの開店前に並んでいた人の中に、彼女がいたような気がする。


「蓮君、こちらへ……」


 そう言うと美咲さんは湖から見えないように洋服店の中に入った。蓮はそれに続いた。美咲の顔は暗かった。


「実は先ほど結愛さんと二人の時にお聞きしたんですが、結愛さんはこのデパートにお友達と遊びに来たのだそうです。


 それで、結愛さんの友達はこの先にあるエステサロンへ先に行ってたらしいんです。


 結愛さんは興味がなかったらしく、地下一階のアミューズメント施設で待つ予定だったと言ってました」


 蓮はあの場にいた女性たちが、儀式が始まる直前に、エレベーター前で結愛が言っていた友達なのだと分かった。


 結愛がそのことを蓮に隠そうとしたのは、蓮に心配せないためだろう。このまま正面から戦えばあの男は、結愛の友達を人質にするかもしれない。


 この戦いに失敗は許されない、蓮は心が重たくなった。美咲はスマホで動画がしっかりと撮影されているかを確認した。


「映像は大丈夫そうです、結愛さん達の所に戻り、対策を考えましょう」


 蓮はうなずくと、美咲と共に結愛の元へ戻った。


 蓮は戻る道中考えていた、結愛は今まで友達の事を口に出してなかった、本当は生きているかどうか心配していたはずだ、それでも儀式の事を聞いて、儀式を終わらせるのを優先したいと思い、黙っていたのだろう、蓮が拓也の事を探しているにもかかわらずだ。


 結愛が友達の姿を見れば安堵するだろう。しかし、彼女たちを救えるかどうかはまだ分からない――。


 蓮と美咲が結愛たちの元に戻ると結愛は安心した顔で出迎えた。美咲がスマホの動画を見せると、結愛はその中に友達が映っているのを見つけた。


「時子、百恵、大那、千枝……みんな無事だったんだ、よかった」


 結愛はホッとした顔を見せたが映像の中で、チェアでくつろぐ男の姿が映ると険しい顔になった。


「この男が玉を持ってるのね」


「たぶんね、問題はどうやって玉を奪うかだけど――」


「相手が動く気配はありません、時間をかけ、準備をして戦いましょう」


「準備って言っても、何ができるの?」


 美咲は結愛の疑問に真剣な顔で答えた。


「湖が近いこともあって、結愛さんの提案した、蓮君と鮫をこっそり近づける作戦は有効だと思います。


 ただ、失敗した時はお二人が非常に危険な状況に陥る可能性があります。周りの女性に気を付けながら、ノコギリザメと戦わなければいけませんし、蓮君の鮫と結愛さんの鮫が争わないように、距離に注意も必要になります。


 そこで、私が玉を持っている男を攻撃できれば不利な状況を解決できます」


 蓮と結愛は顔を見合わせた、美咲が川を渡る姿を思い返せば、とても男に立ち向かえるような体力の持ち主ではない。


「美咲さんが攻撃するって……どうやって?」


「それをこれから探しましょう。川の近くにあった電化製品を取り扱っている店に何かあるかもしれません、さっそく行きましょう」


 美咲は今まで以上に張り切っていた。今回は友達を助けるために、結愛が自分の命を懸けて行動することが分かっている。


 大人の自分が、まして、この儀式を起こす原因の一因である自分が、ただ黙って見ているわけにはいかなかった。


 蓮と美咲は電気屋に向かった。その間、結愛とアフロの男とおばさんは近くの店の倉庫やスタッフルームを探して使えそうな物がないか探した。


 蓮は電気屋で電気工具類を見ていたが、刃物が付いた機械は重くて自分を傷付ける可能性がある、美咲には向かないだろうと他を探した。


 結愛はバッグ専門店のスタッフルームで催涙スプレーを見つけた。手に取りながら鮫にも効くのだろうかと思った。


 美咲は電動シェーバーを手に取りながら、何かに使えないかと思案したが、近づくことが難しいだろうと思い、電気シェーバーを売り場に戻し、その場を後にした。


 二十分ほどして全員が元の場所に集まった、各々が自分の見つけたものを出した。その光景はまるでプレゼント交換会だ。

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