表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひとつの光路 三つの星命  作者: 慧ノ砥 緒研音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/36

第23話 暗黒の煙(明暗の面 : リュシア編)


 エルディア城の正門前──


 黒仮面の男は口を開いた。

 『リュシア女王に会いに来た』


 衛兵は、そのちに、警戒の色をみせる。 黒装束に黒い仮面──

 「どなた様でしょうか!?」


 「女王に『 黒仮面の男が会いに来た 』と伝えてくれたまえ」

 黒い面のせいだろうか、なぜが籠った声がスピーカーから出る音声のように響く。


 「少々、お待ちください」


 まずは、サディスに一方が入る。

 「今度は何だ? ──そんな怪しい者は入れる訳にはいかん! 病に臥せっていると伝えて、後日にお願いしておけ!」


 衛兵は黒仮面に告げる。

 「あいにく、陛下は、病で臥せっていまして……また、後日にでも……」


 その瞬間、黒仮面の男は人差し指を差し出した。

 高周波の音がすると、衛兵はふらつきだした。そのまま倒れこむと、痙攣して動かなくなった。

 目は白く濁り、口から泡を吹いた。

 わずかな血の焦げた臭いがあたりに広がった。

 

 もう一人の衛兵は、腰を抜かしながらも、そのまま銃を黒仮面に向けた。

 「動くな! 何者だ!」


 黒仮面は、ふたたび指を差し出す。

 何が起こっているのか……恐怖のあまり、引き金を引いた。銃声が門前に響く。


 しかし、弾は男の胸を抜け、背後の石壁だけが欠けた。至近距離にも関わらず、弾は黒仮面の体に当たらない。当たらないと言うよりも、貫通した……

 何発打っても、黒仮面の体に小さな火花が散るだけ……


 「ひぃいー! 助けてくれー! 悪魔だぁー!」

 その叫び声と共に、衛兵は膝から崩れ落ち高周波の音だけがあたりを包んだ。

 

 黒仮面の男は、何も言わずに倒れた衛兵の横を通り過ぎる。


 叫び声を聞いて、他の兵士達も門へと集まってきた。女王の間にいたサディスにも通知が届く。


 「何! 兵を集めよ! ひとりごときに怯むでない!」


 城の中へ進む、黒仮面……

 次々と兵士が倒れていく……黒仮面が歩く中、勝手に道が作られていく……


 そこへ試作機ながら、修復を終えたアンドロイド兵が立ちはだかる。金属の重厚な音とともに黒仮面の前に立ちふさがった。

 アームからブラスターが発射される。


 しかし、黒仮面は避けようとしない。ブラスターは黒仮面の体を通り抜け、後ろの壁を破壊した。

 そのまま平然と黒仮面は歩をすすめると、二体のアンドロイドのコア部分に次々と指を立てた。


 指先の群体が黒い糸の束になってコアへ潜り込み、冷却系を塞ぎ内部で爆ぜた。

 数秒後、二体のアンドロイドは内側から静かに白煙を上げた。


 * * *


 医師たちは安全なところに避難していた。

 女王の間に残ったサディスへ経過報告がはいる……

 「なに!ブラスターが効かぬだと!?…… わしもそちらへ向かう!」


 サディスが振り返った。

 「客人殿、この部屋からは出ないように……」

 

 ミレイと顔を見合わせるた、ユリスがつぶやく……「どう考えても、嫌な予感……」


 その時、ファランの青ランプが赤に変わった。ファランからの通信が、クルーのイヤホンに共有される


 『外部からの干渉波! 発信源が接近しています! 現在位置、ここから下方向、距離60メートル!』


 ソフィアが動いた。「干渉波を発信する男だわ! 黒幕! 取り逃がさない! セラフィム号、緊急発進! 目標、エルディア城!」


 衛星エレーネの影に隠れていた、セラフィム号は急旋回すると惑星エルディアの大気圏に突入した。


 女王の間の前をサディスとエルディア軍隊が固める。


 ミレイ「ファラン、偵察機を部屋の外に接舷して!」

 ユリスが隠し持っていたブラスターで、窓を打ち破いた。

 ミレイ「リュシア!逃げるよ!歩ける?」

 リュシア「え?」


 扉の向こうの廊下から、兵士達の叫び声が迫る。

 「黒仮面だ! ノクティウスの亡霊だ!」


 その遠くからの声に、リュシアの目が輝いた。

 「黒仮面……レオン様! 私に会いに来てくれたのね!」


 ベッドを飛び降り、扉に駆け寄ろうとするリュシアの手をユリスがつかんだ。


 ユリスが動揺の眼で、リュシアを見る。


 「リュシア。 息を整えて、よく聞いて…… レオンは今、上空のセラフィム号にいる。 今、兵士達が闘っているのは、レオンじゃないよ。 偽物だ」

 ミレイ「セラフィム号にいる、本物のレオンに合わせてあげるから、これに乗って! リュシア! お願い!」


 ミレイが指さしたその窓の外には、黒い偵察機が接舷していた。


 リュシア「セラフィム号? あなた達……」


 ファラン『そうです。数年前にお会いしてます。 リヴィエラ様と一緒に。 今日は、みんな変装して……』

 ファランの説明の腰を折るようにリュシアは、翠玉の剣を掴むと、翡翠色の髪をなびかせた。

 「早く乗りましょう!」


 その瞳は、両目ともターコイズブルーの澄んだ輝きを放っていた。


 皆が乗り込むと、偵察機は全速で宙に舞い上がった。

 

 エルディア城の廊下──


 偵察機が雲の上に消えると同時に、黒仮面の輪郭が崩れた。


 兵士達の目の前で、黒い粒子は風に乗り、ほどける。そして黒い煙に変化した。


 そして──消えて無くなった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ