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ひとつの光路 三つの星命  作者: 慧ノ砥 緒研音


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第17話 漆黒の船(衛星の光:カレン編)


 惑星エルディア──レオンの山小屋


 カレンとレオンは、山小屋から裏口に出ると、ふたたび馬型に跨がった。

 山の頂上まで、一気に駆け上がる。


 そこは、中央だけぽっかりと穴が空いたように、周囲を大木が丸く並んでいた。

 馬型から降り立ったカレンは、首筋をなでた。

 「ありがとう。争いが落ち着くまで、父さん達を守ってて……」

 馬型は、静かに首を縦に振った。


 ひときわ大きな木のふもとにそれはあった。

被せてあった、ネットと布をめくる。


 そこには、漆黒のボディが月光にきらめく小型の宇宙船があった。

 「カレン、は後ろに。……足、滑らないように……」

 レオンは、操縦席に乗りハッチを閉めると、ボタンを操作した。


 音も無く機体が浮き上がる。

 馬型は、黒い宇宙船を見送ると麓の方に静かに駆けだした。


 

 黒い偵察機は星の海を進んでいた。

カレンは惑星エルディアを眼下に見ながら、ペンダントを握った。

 「どうか、皆が無事でありますように……」


 衛星エレーネは、すぐ目の前に現れた。レオンはスイッチを操作しながら衛星の裏側、恒星の影へと偵察機をすすめる。


 「カレン、もうすぐだ」

 レオンは、ゆっくりと操縦桿を倒すと、衛星に吸い込まれていった。


 * * *


 衛星の裏側のクレーターに飛び込んだレオンの偵察機は、トンネルを抜けて衛星の地下都市を眼下にのぞむ。


 そこは、カレンの見たことの無い世界が広がっていた。

 まばゆい高層のビルが並び、それとは対照的に大きな木々も緑の葉を揺らしていた。

 地下都市のはずなのに、空には恒星のような星が木々の光合成を助けているようだ。道路は立体的に交差している。


 ひときわ大きなビルの屋上に偵察機は降り立った。

 「カレン、一応マスクをしておこう。大量破壊兵器の灰が残ってるかもしれない。」


 空気清浄機のマスクとゴーグルをして

レオンとカレンは、偵察機のハッチを開ける。

 

 「あっ、これも念の為」

 レオンは、カレンにブラスター銃を手渡した。

 カレンは背中のベルトに銃を納める。

 ふたりは、ゆっくりとビルの屋上に降り立った。


 『このビルが、古代文明時代に衛星エレーネの中枢機関があったビルだ。 当時はリュミエールと国交がさかんで通信も出来ていた』


 ふたりはビルの中へと続く階段降りていった。


 階段を降りるにつれ、壁面には古代文字と光を放つ紋様が浮かび上がっていった。

 

 カレンは指先でそれをなぞり、息を呑む。

 「……エルディアの言葉……。でも、少し違う……」

 「リュミエールに伝わるものよりも古い形だ。おそらく衛星独自の進化をとげたんだろう」


 レオンは低く答え、足を止めなかった。

 扉が開くと、広大なホールが現れた。

 天井は高く、半透明の結晶が張りめぐらされている。光が反射して、星空のような模様を描いていた。

 中央には巨大な円形の装置が鎮座し、静かに脈動する光を放っている。


「ここが……中枢……?」

「そうだ。かつて〈エレーネ中枢管制機関〉と呼ばれた場所だ」


 レオンは一歩前に出て、周囲を見渡す。


 ホールの闇が揺らめき、低い唸り声のような音が響いた。

 次の瞬間、巨大な影が二つ、四足で床を這うように現れる。


 体長二メートル近い、熊とも猿ともつかない獣の姿。

 だが毛皮はなく、漆黒の装甲で覆われ、関節部からは油のような液体が滴っていた。


 「……ビースト型の自律兵……?」

 レオンが目を細める。

 獣は四足歩行からゆっくりと二足へと立ち上がった。

 長い腕が床を擦り、甲の部分が変形し、ブラスターの銃口のような孔が赤く光る。


 「来訪者、識別不能――排除開始」

 金属質な咆哮がホールに轟く。

 「カレン、後ろに!」

 レオンは剣を抜き放つと同時に踏み込み、一体目の巨体へと斬りかかった。

 刃は鋼鉄の装甲に火花を散らし、鈍い手応えを返す。

 獣兵は吠えながら腕を振り回し、その一撃は大木をも薙ぎ倒すような重さだった。

 レオンは床を蹴って宙を舞い、獣の背後に着地。

 そのまま逆袈裟に斬り上げ、装甲を深く裂く。

 「ガアアッ――!」

 金属音とも獣の呻きともつかない声が響き、巨体がよろめいた。


 もう一体がカレンに迫る。

 長い腕が振り上がり、甲の銃口から赤い光束が奔った。

 「――ッ!」

 カレンは床を転がり、肩口をかすめる熱線をかわす。

 手にしたブラスターを握り締め、狙いを定める。

 「負けない……!」

 青白い閃光が放たれ、獣兵の胸部を直撃。

赤い光が一瞬ちらつくが、獣はなおも前進してきた。

 「もう一度!」

 カレンは歯を食いしばり、連続して撃ち込む。

 今度は胸の中央、装甲の隙間に命中した。音と共に赤い目が弾け、獣兵は崩れ落ちた。

 レオンも同時に最後の一撃を振るい、残った一体の首部を断ち切った。

 火花と黒煙を散らしながら、巨体は膝をつき、やがて動かなくなる。


 静寂が戻る。

 レオンは剣を振り払い、息を整えた。

 「カレン、大丈夫か?」


 カレンはブラスターを下ろし、額の汗を拭った。

「怖かった……でも、撃たなきゃやられてた」


 ふたりは中枢の装置へと歩を進めた。




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