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才華学園

※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

才華学園さいかがくえんは『文武両道』を理念に現状に満足せず、常に挑戦者であれ、と設立者の我儘大介わがままだいすけの考えに賛同した政治家、財閥系の社長、有名芸能人、スポーツ界に名を残した選手達が資金を出しあって設立した学園で、今年で設立100周年になる。 


 生徒数723名、内、政治家や財閥、芸能人、スポーツ選手の子息。実績を残して推薦で入学した者、そして、一般入試で合格した者から成り立っている。 



「これで良し」


 学園へ行く前に鏡の前で最終確認をする。 自身の制服姿を見るのは三度目だ。 


 一度目は制服を買う時。


 二度目は制服が届き、制服の着方をチャミに教わった時。


 そして今回が三度目……

 制服のサイズ感もチャミが選んでくれたのでバッチリだった。 


 マンションを出る時、後ろ髪に引かれる思いだった。もう2度と此処へは戻ってくる事は無いからだった。


 さようならチャミさん。

 

 チャミさんが惚れる程の男になってみせるよ。取り敢えずそれを目標として生きてみる。


 俺は予定時間十分前に職員室に到着するように行動していた。 


 ちょうど登校時間なのか同じ制服の生徒が学園へ向かって歩いているのが見える。


 『ねぇ……あの人、超格好良くない?』


 歩いている時に追い越した女子生徒の集団から会話が聞こえてきた。 

 

『本当だ、超格好いいじゃん。あんな生徒、学園に居たかな?』


『背も高いし、このみと釣り合いそう。あんたもいい加減ああいう彼氏作りなよ!』


『私は別にいいよ……』


『出た、私は別にいいよって。あんたも結構男子から人気あるんだからさ。ったく』


『でも、どうせ芸能コースの生徒だよ、私達とは無縁だね、あー、解散、解散』


『だよね……』


 トーンダウンした女子生徒達は、別の話題に切り替えてトークに花を咲かせていた。

 

 このみ?


 幼馴染みのこのみの顔を思い出したが、同じ名前なんて幾らでも居ると言い聞かせ、特に気に留めず歩き続けた。  

  


 ここが才華学園か……


 有名な学園だから名前だけは聞いた事が有った。


 正門から眺めた校舎は歴史を感じ、生徒達もこの学園に誇りを持ってそうだ。


 この学園に今日から俺は登校する。

 学校に通うこと自体が中学2年の冬以来になる。 


 正門の前で感傷に浸っていると、周りの生徒達はいつの間にか居なくなっていた。


 いけない、早く職員室へ行かないと。


 ドンッ! 


 出会い頭に一人の女子生徒と衝突して相手を転倒させてしまった。


「ごめん、大丈夫?」 


『もう……最悪』


 聞こえないレベルでボソッとその女子生徒が吐いた。


 普通なら聞こえない、でも、中学時代陰口を叩かれ続けた俺は僅かな声も聞き逃さない癖がある。 


 女子生徒の眼鏡が地面に転がってるのに気付き、直ぐに拾い上げその女子生徒へ渡す。 


「眼鏡が壊れなくて良かった。怪我は無いかな?」


「あっ……だ、大丈夫です! こちらこそごめんなさい!」 


 俺の手から眼鏡を奪い取ると、彼女は走り去っていった。 


 俺は一瞬だが彼女の素顔を見逃さなかった。彼女の目はオッドアイ※で、素顔が驚く程美形だった事。 

※目の色が左右で違う事  


「これって」


 地面に参考書が落ちている事に気付く。

 恐らくさっきぶつかった娘の参考書だろう。


 参考書を届けるか……


◆◇


 ガラガラ 


「失礼します。今日からこの学園へ転校してきた不和後無です。学園長をお願いします」

 

 職員室へ入り挨拶をすると、予め伝わっていたのか、扉の近くの教師が学園長室まで案内してくれた。


 コンッ コンッ


 「どうぞ」


 学園長室から声が聞こえる。女性だ。 


 「失礼します」


 扉を開けて中へ入ると、部屋の奥の豪華な机に向かい合うように座っている初老の女性がいた。


 どこか気品が漂い、初対面でも只者ではない雰囲気を醸し出していた。 


「不和後無さんですね。ようこそ才華学園へ。この学園を見てどう思いましたか?」


 学園長は立ち上がると俺の近くまで歩いて来た。 


「建物も歴史を感じ、雰囲気も凄く良いと感じました。この学園へ転校出来た事はとても名誉に思います」


「出来すぎるほどの満点回答だこと……」

学園長がボソッと吐いた。  

 

「この学園長を勤めています三条よしゑです。一度きりの青春をこの学園で謳歌してくださいね」


「ありがとうございます」


「あなたの担任がもう少しで迎えに来ます。後は彼女の指示に従ってください」


「あの、どうして自分がこの学園へ転校出来たのですか?」 


「あなたの言っている意味がよく分かりませんが?」

 学園長の三条が不審そうな顔で見る。


 どう言うことだ? 学園長は事情を知らないのか? これ以上余計な事は聞かない方が良さそうだ。


「いえ、何でもありません」


 程なくして、担任教師の横井先生と挨拶をして教室まで案内される事になった。


 この先生、思ったよりずっと若い。

 もしかしたらチャミと同じ位の年かもって、チャミの本当の年齢を知らないけど。


「不破君は二年A組に在籍する事になります。この学園のコースの事知ってるかしら?」


「よく分からないので、教えて貰って良いですか?」


「各学年A〜F組まであるの。A〜D組は一般クラスで、D組は特待クラスになります。E組はスポーツコース、そして、F組は芸能コースになるの……あれが私達二年A組よ。私が呼ぶまで廊下で待っていてくれるかしら」


「分かりました」


 学校の教室、そして一直線に長く続く廊下。この、学校でしか味わえない独特の環境の中での勉強、全てが懐かしかった。


「不破君、入ってくれるかしら?」


 不意に横井先生に呼ばれる。


ガラガラ


「失礼します」


 横井先生がここに立って自己紹介をしろと目で合図して来た。


「今日からこの学園へ転校して来た不破後無です。分からない事だらけなので色々と教えて下さい」


『ねぇ、今朝のイケメンの人じゃん?』

『嘘? 芸能コースの人じゃ無かったの?』

『このみ、狙ってみたら?』

『私は……』

『あー、はいはい、興味ないのね。でも学校来るの楽しくなるかも』


 クラスの女子生徒が俺についてヒソヒソ話を始めた。


 俺は地獄耳だ。ある程度何を言っているか理解している。 


 それにしても、女子生徒達を見たら少しはドキドキするかと思ったけど、どうやらしないようだ。


 俺は一通りクラスの女子生徒達を見て品評をしていく。

 あの時ぶつかった瓶底メガネの娘は居ないな……


 女子生徒達は俺を品評しているつもりかもしれないが、品評してるのは俺の方だ。

 

 不意に一人の女子生徒で目が止まる。


 嘘だろ……


 そこには幼馴染の海津このみが座っていた。中学の頃と比べて、垢抜けて可愛くなっていた。


 「不破君、あそこの空いた席があなたの席よ」


 空いた席は海津このみの後ろの席だった。

 席に着くと早速、隣の女子生徒が声を掛けてきた。


「不破君、私、田中理恵たなかりえって言うの。分からない事があったら何でも聞いてね?」


「ありがとう、あっ……」

「何か聞きたい事ある?」


「いや、そのヘアピン可愛いね、理恵に似合ってるよ」


「えっ! そ、そうかな? 結構お気に入りだから褒められると嬉しいな」


理恵は顔を赤くして俯いてしまった。

※チャミのルール

 その十 初対面は持ってる/身につけているモノを褒める事 ※ただし、イケメンに限る

 その二十四 名前を教えて貰ったら直ぐに下の名前で呼ぶ事 ※ただしイケメンに限る


 しまった、身体に叩き込んだ事がついつい出てしまった。いきなり下の名前で呼ぶのは流石に馴れ馴れしいし、セクハラだな。


 気を付けないと……


 幼馴染のこのみが前の席に座っている。

 バレないようにしないとな……今の俺は不破後無であって、鈴木太郎じゃない。


 こうして俺の学園生活がスタートしたのだった。

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