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水境の語り部

作者:萎びた家猫
『異談廻』誌 新着怪異ファイル
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

■水境の語り部■
~言葉にすれば呼び寄せる禁忌~

山深い簗瀬集落に伝わる
境川の秘められた特性:
雨が降るたびに水面が鏡と化し
澄みすぎた水底には
向こう側の山影がくっきりと映る

民俗記者・秋野は危険を承知で
最後の語り部ウバ様を訪ねる
老婆の警告は謎めいていた
「水を撒けば一時は隠れるがな
撒いた場所への関心は積もっていく」

そして運命の取材夜
宿の窓越しに境川を覗いた瞬間
取材ノートの文字が蠢きだす
・ペン書きの"腐臭"が実際に鼻を刺す
・記録した"ずぶずぶ音"が耳奥で響く
・描写した暗がりの気配が窓外で膨らむ

民俗学者は気づいてしまう
真実を記すペン先が
現実と禁忌を繋ぐ導管だと

やがて境川の濁りが加速し
祠の周囲に不気味な水跡が現れる
取材を終えた彼女が都会へ戻る道中
バスの窓に映る自分の顔が
徐々に老婆の面影と重なり――

この先に待つのは
取材記事の完成か
それとも境川の水底へ沈む結末か
言葉が呼ぶ恐怖の連鎖は
読む者へと静かに滴り落ちる
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

※本作品は『異談廻』誌 新着怪異ファイル19■■年■■月号掲載記事の引用です。
※当記事を読んで奇怪な現象が発生した場合、決して焦らず静かに水場から離れてください。
水境に語り部
2025/07/03 16:24
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