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最強のヤンキー娘

――2年後。


 変わらぬ毎日が過ぎ、私は15歳の中学三年生となった。

 今日は弟の入学式である。


「準備は出来てるねぇ。お母さんは先に行かないとダメだから、揚羽ちゃんよろしくねぇ」

「うむ、しっかりと湊をエスコートしてみせよう母上!」

「僕ももう中学生なのに、姉さんってば」

「はははっ! 湊が何歳になろうと、私の弟である事に変わりはないからな!」


 姫路市立ガーディアン養成学校、中高一貫の学校で、湊は入学試験に無事合格した。

 私の弟なら当然だな。

 母上は公私の区別があまりない方ではあるが、入学に関しては一切手を出していない。

 そこら辺は母上もシビアなのである。

 そしてそれは、湊の事を思っての事でもある。

 実力が規定に満たないのに入学しても、その先が辛いだけだからな。


 しかし弟は、今年の新入生の中でも首席の座を得た、超優等生である。

 今回新入生代表の挨拶をするという事で、ビデオカメラに収める準備は万全だ。


「姉さん、本当に撮るの……?」

「当たり前ではないかっ! 我が弟の晴れ舞台、しかと記録に残さねばまお……姉が廃るというものだっ!」

「また訳の分からない事を言って……もう……」


 恥ずかしそうにする弟がとてつもなく可愛いが、こればかりは譲れんのだ。すまぬな湊。

 後で何回も見たいのだ。


「よし、では行くとするか湊!」

「うん、姉さん」


 それからエレベーターに向かうと、元四天王達も乗って来た。


「うっす湊! それに揚羽様!」

「あらぁ揚羽様、ご機嫌麗しく。湊君は今日から中学生なのね、似合ってるわよ制服」

「揚羽様、湊君、おはようございます」

「ウオオオッ! 朝からお二方と出会えるとは! なんたる! 幸運!」


 こいつら四人、このマンションへと引っ越して来たのだ。

 湊の護衛を条件につけ、格安で。

 別に無料で構わないと母上と父上も言ったが、こいつら四人がそれは出来ないと言ってきた。

 存外しっかりとした奴らである。


「皆さん、おはようございます。真理愛さん、ありがとうございます」

「ふふ、相変わらず礼儀正しいのね」


 真理愛とは、マリアの事である。いやそのまんまだがな。

 こいつらは今年から大学生。

 時間は割と自由が利くのだそうだ。良いのか大学、そんなので。

 まぁ課題は多いと聞くが、私は知らんからな、行く気も無いし。

 右手を上げ、鞄を肩の後ろにぶら下げる形となる。

 この形が楽だ。


「揚羽様、持ちましょうか?」

「要らん気を回さんで良い。それにこの中に入っている物は、今日一番の役割を背負っている。私が大事に保護せねばなるまい」

「「「「あー」」」」


 全員がすぐに理解したようである。


「はぁ……今からすでに恥ずかしい」

「ははっ。心配すんな湊。周りにいる奴らなんぞ、ダイコンと思えば良いんだよ」

「ジャッカルさん……」

「お、ぉう。もうその二つ名で呼ばなくて良いぜ湊」

「あははっ。武もついに恥ずかしくなっちゃうお年頃なのね」

「うるせぇぞマリア! お前は本名とかずるいだろっ!」


 こいつらが混ざるとこんな感じでいつもやかましい。

 が、湊は楽しそうなのでよしとする。


 姫路市立ガーディアン養成学校の校門の前に着くと、どこかで見た事のある気がする女が立っていた。

 こちらに気が付いたのか、破顔一笑した。


「揚羽様っ……!」

「誰だお前は」

「そんなっ!? 揚羽様の忠実な下僕、柊 真琴ですよぉ!」

「ああ、お前かっ! いやお前、以前の面影がかなり薄いぞ」


 身長もかなり伸びており、スレンダーな体型になっている。

 髪も伸び、これが美女と呼ばれるのではないだろうか。


「揚羽様、そちらが?」

「うむ、私の自慢の弟、湊だ!」

「は、はじめまして。天羽 湊と言います。宜しくお願いします」

「これはご丁寧にありがとうございます。私は姫路市立ガーディアン養成学校高等部生徒会長、柊 真琴と申します。学部は違いますが、中等部とは交流戦等で会う事もあるでしょう。宜しくお願いしますね」

「は、はいっ!」


 まるで貴族の令嬢のような振る舞いの真琴に、一瞬湊の頬が赤く染まった。

 む……。


「うわっ、姉さん!?」

「湊はやらんぞ」

「えっ?」

「もう、姉さん!」

「「「「ブフッ……」」」」


 何故か他の者に笑われたが、湊は私のものだ。


「ふふ。では揚羽様、それに皆様方。私がご案内致しますね」

「お前は生徒会長なのだろう? 良いのか?」

「はい。他の生徒会の者もおりますから。どうぞこちらへ揚羽様、皆様方」


 そう言って先を歩く真琴に、以前のような弱気な姿は無い。

 どうやら、一皮むけたようだな。


 ウ――! ウ――!


 そんな時に、モンスターハザードを知らせる警報が鳴り響く。


「チッ……湊の晴れ舞台を邪魔させるわけにはいかんな。おいお前ら」

「おう揚羽様! やれんぜ!」

「ええ、揚羽様。もうオイタをする時は過ぎましたけれど……怪物相手なら、構いませんよね」

「ああ。無双バード、力を貸します」

「フハハ! このコンゴウのマッスルパワー、怪物共に思い知らせてやろう!!」

「!! 成程、この方々は少し前に世間を騒がせていた、セントケルベロスの四天王ですか」

「「「「今は揚羽様の四天王だ(よ)」」」」

「いつお前らは私の四天王になった。まぁ良い、母上から座標が届いた。ついてこい」

「「「「ハッ!」」」」

「揚羽様、私も行きます。こういう時の為に、私達は存在するのですから」

「お前は生徒会長なのだろう? この学校の生徒の指揮を取らねばなるまい」

「大丈夫です。何故なら、主要ゲートはすぐに潰れるからです。揚羽様と、私達の手によって」

「フ……言うようになったな、真琴。湊、お前は入学式まで待機しておけ。姉さん達がすぐに片づけて、お前の雄姿を見に戻ってくるからな」

「姉さん……うん。今更姉さんの心配はしないよ。僕が追いかける、大きな背中だから……!」

「フフ、嬉しい事を言ってくれる。行くぞお前ら……!」

「「「「「おおっ……!」」」」」


 さっさと片付けて、湊の晴れ舞台をビデオに収めるのだ!






なんとなく書きたくなったお話を、いつものように書き始めたお話でした。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

また代表作であるふたゆめか、思いついたように書き始める新作も読んで頂けたら嬉しいです。

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