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レッドゲート②

「ここか」

「「「「「!?」」」」」


 三島から送られた座標は日本列島から少し離れた位置にある小島の上だった。

 世界地図で見ると、海の上だ。

 赤い『門』が浮かんでいる事から、間違いはないだろう。


「三島局長から連絡は来ていると思うが、この事は他言無用だ。口の軽い者は自身だけでなく家族にも責が及ぶと知れ」

「「「「「!!」」」」」


 そうして『門』に入ろうとすると、近づいてくる者が居た。


「千代さんの、娘さんですよね? 私共では、千代さんを救いに行く事も出来ません。どうか、お願い致します……!」

「ふむ……母上を私が助けるのは、対外的に見ても当たり前だと思うが……何故お前達はそう思う?」


 純粋な疑問。他人でしかない者が、自分より強き者を心配するのはおかしな事だ。


「千代さんは、これまでも多くの者達を救ってくれました。恥ずかしながら、私も救われた一人です。千代さんに救われた命を、他の沢山の命を救う事で恩返しがしたい。そう思い、機関に所属しました。ですが、私達の力では、千代さんの足を引っ張ってしまう……だからっ……!」


 成程。流石は母上だ。

 他者を恐怖で従える者には、この気持ちを理解できない。

 私が生きた時代の多くの魔王達には、理解できない考えだろう。

 良い、良いな。この時代は実に良い時代だ。


「安心しろ、母上は必ず助け出す。お前達の想いも、汲んでやろう。すぐに攻略し、母上と一緒に出てくる」

「「「「「!!」」」」」


 頭に手をやり、敬礼する奴らを見て、少し笑みが零れる。

 私がこうして転生した以上、あやつらももう生きてはいまいが……記憶を消され、新たな生を歩んでいる事だろうな。


 赤い『門』、通称レッドゲートをくぐる。

 『門』には色でランク分けがされている。

 一番難易度の低い白から始まり、青、黄、茶、赤の大まかな五段階で分けられる。

 勿論多少の色違いがあり、濃くなるほど難易度が高い傾向にある。

 水色なら青より少し難易度が下がるといった具合だ。


 そして、世には知らされていない黒のゲートも存在する。

 これは制限時間が40000日以上あり、今を生きている者達には関係があまりないゲートだ。

 だが、放っておけば次世代の者達が危険になる。

 最高難易度を誇る黒のゲートのモンスターハザードなど、世界が確実に滅ぶだろう。


 だから、私が死ぬ前には攻略してやろうとは思っている。

 その後は、その後を生きる者達に任せるしかないがな。


「「フシュゥゥゥゥ!!」」


 ゲートをくぐり終えると、すぐに不快な声が聞こえた。

 そして、私が間違うはずの無い魔力を感じた。

 全力で空を駆け、殴り飛ばす。


「「グギャァァァァァッ!?」」

「えっ!?」

「母上から離れろ、下種がっ!!」


 ガタイだけは大きい怪物を一撃で処理する。


「母上! 無事かっ!?」

「あ、揚羽、ちゃん……!」


 へなへなと腰が抜けたようにその場に座り込む母上の元へと走る。


「体は……よし、怪我はないな。けれど疲労が溜まっているな。これを飲め母上、スポドリだ」

「う、うん。ありがとう揚羽ちゃん。助けにきてくれたのねぇ……」

「当たり前だ。私の大切な母上なのだぞ」

「うん、うん……ありがとう揚羽ちゃん……アタシ、死を覚悟したから……」

「何故だ? 母上の力ならば、あの程度の怪物、重力でぺしゃんこに出来たのではないか?」

「それが……あの怪物、スキル無効の特殊能力を持っていて……」

「ふむ? そんな物、より強い重力を上乗せすれば潰せるはずだぞ母上?」

「え?」

「え?」


 少し、沈黙が場を支配した。


「えっとな、母上。この世に無効なんてモノはないし、無限なんてモノもないのだ」

「え、ええっ!?」

「……生まれたての赤ん坊の世界は、自分の目に映る世界が全て。子供は家庭、学生は学校、大人は職場……そういった、各々の世界で生きている。けれど本当の世界は、人々が思っている以上に広い。外に目を向けなければ、自分の住む世界は広がらないぞ母上」

「!!」

「母上の力は強い。それはもう特別な力だ。自分の可能性を、自分で狭める必要などない。まだまだ上を目指せるぞ? 母上」

「っ!! ふふ、揚羽ちゃんにそんな事を言われたら、アタシももっと頑張らなくっちゃって思うわぁ!」

「はは、その意気だ母上。とりあえず、この『門』のコアを破壊してしまうとしよう」

「そうね! 場所は任せて揚羽ちゃん! 調査は進めておいたから、マッピングは大体終わってるの!」

「流石は母上。では、親子水入らずで楽しむとしようか!」

「ゲート攻略をそんなピクニックに行くみたいなノリで……あはは、もう揚羽ちゃんは本当に凄いんだから!」

「おぐぅ!? 母上、その体に不釣り合いなものに顔を埋めないで頂けると……!」

「えへへ、アタシが揚羽ちゃんに勝ってるのここだけだもーん」

「意図的ですか母上!?」


 茶目っ気たっぷりの母上の笑顔は、心が軽くなるから好きだ。

 この笑顔を守る為ならば、私の力を余すことなく使っても構わない。


「ほい」


 パコーン


「一発なのねぇ……」


 母上のマッピングは正確で、その場にあったコアを殴って壊した。


「では急いで出ましょう母上。湊が私の好物を作って待ってくれているので、速く帰りたいのです」

「アタシの分はぁ!?」

「母上はすぐに帰れないでしょう」

「うぐっ……平八ちゃんに任せたらなんとか……」

「三島は私の存在を秘匿するのにも力を尽くしてくれていますし、これ以上迷惑を掛けるものではありませんよ母上」

「ガーン! 揚羽ちゃんが冷たいぃぃぃっ!」

「帰ったらマッサージしてあげますから」

「分かったわ! おかーさん、死ぬ気で頑張る!」

「それは戦う時に思って欲しかったですが……」


 なんて会話をしながら、ゲートをくぐる。

 赤い『門』は私達が外に出ると同時に、まるで何も無かったかのように消えた。


「「「「「千代さんっ!!」」」」」

「皆ぁ、心配かけてごめんねぇ。自慢の我が娘が、助けてくれたのぉ!」

「はいはい、母上。私は先に帰りますので、後は任せますね」

「はぁーい。それじゃ皆、後始末手伝ってね!」

「「「「「はいっ!!」」」」」


 皆笑顔だった。母上は慕われているな。

 さて、湊が待っているし、急いで帰るとするか。


「あ、待って揚羽ちゃん」

「ん? どうしました、母上?」

「ここに来るのは、まぁ緊急事態だったし仕方ないけど……帰りは流石に飛行機で帰らないとダメよね? 常識的に考えて」

「……本音は?」

「アタシも揚羽ちゃんと一緒に帰りたい♪」

「……」


 母上の飛び切りの笑顔に、逆らう気も起きず、一緒に帰る事になった。

 湊に連絡を取ると、笑って待っていると言ってくれた。

 出来た弟である。

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