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S.D.K.2  作者: 中草 豊
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違和感の正体

契約書へとサインを終えた、クラッチ博士。



手にした封筒を見ながらも、部屋の中を見渡すと何か違和感を感じ始めた─



果たして、その正体とは─!?


─第6話─



『届き始めたのが、3ヶ月程前と言いましたか?』



世界の嫌われ者は再度確認すると、その質問に頷く執事から改めて封筒や便箋を受け取るや、中身を出して読み返していた。



書いた文字や、使っている便箋や封筒は間違いなくクラッチ博士自身の使用した物で、今は亡き優秀な助手である、デービッドへと宛てた物だった。



やはり、間違いないな─



そんなデービッドへと宛てた物が、何故か今まで全く関わる事のなかった、それも大金持ちのガルシア家へと運ばれ、ポストへと投函されていた。


クラッチ博士の手から離れた時と違う点と言えば、封筒の裏面に記されたヘイトの文字。



世界の嫌われ者と言う自覚をしてはいたとして、博士自ら自己紹介の様に使った事はない。



ならば、誰かが記したと言う事か─



クラッチ博士は少しばかり考えると、執事と家政婦を前に見ながら、他にも届いた手紙を持って来て貰う事にした。


2人で不可解な手紙を取りに行っている間に、新たな自室となった部屋の中を、改めて見渡すクラッチ博士。



入室してからずっと感じていた違和感の正体が、そこにはあった。



いくら何でも、精巧すぎる─!



わずかばかりの日光を射し込んでいた6つに分かれた窓枠も、博士自慢の事務所と同じ様に1番上の右がヒビ割れをしていたり、右側の壁際に設置された本棚の上から4段目に置いていた、かつて事件を解決した時に貰った写真立ての形もそっくりであり、左に目を移すと、小さなキッチンと事務所を隔離していた柱のシミの位置、更には掛けていた暖簾の模様すらが同じであった。



まるで、デービッドが監修したようだな─



その1つ1つを振り返る様に見ながら、かつての優秀な助手を思い出していた、世界の嫌われ者。


そんな思い出に浸るクラッチ博士を嫌うかの様に、執事と家政婦が手紙の大量に入った箱を持ちながら帰って来た。



『コレで、全てでございます。』



執事から渡された箱に詰められた手紙へと、最初に受け取った赤い封筒を乗せると、素直な疑問を目の前の2人にぶつけてみた。



『この部屋は、一体誰が作成を?』



その質問に一瞬答えづらそうにしていた執事を制すと、家政婦が口を開く。



『実は、この手紙が届く前の事なんだけど、デービッドと言う方が、この18番目のお屋敷に訪ねて来た事があってね。』



─!?



クラッチ博士はその答えに一瞬の戸惑いを見せたものの、


やはり、そうでしたか─!

と、納得していた。



『デービッドが、この手紙を届けていたのでは?』



直感で閃きを得たクラッチ博士は、尚も自らの頭の中に舞い降りた答えを続けていた。



家政婦の話を要約しながらも─

デービッドがもし、自分が居なくなった時の仮住まい用にと、古くからの知り合いであった家政婦へと連絡を取り、ガルシア家当主の許可を得る形で、この部屋を用意したのではないだろうか?



デービッドが関わる事なら当然ではあるが、世界の嫌われ者には一言だけ不可解な出来事と言えば、必ず来てくれるはずである─



と、助言を貰いクラッチ博士から受け取った、赤い封筒の数々を、家政婦へと手渡していたのでは?



不可解な出来事を装う為に、デービッドが裏面にヘイトと、1枚1枚記して行ったのでは?



そして世界を騒がせた、悪魔事件がメディアで報じられる事になると、デービッドの訃報も新聞に掲載された。



それを見た家政婦が、クラッチ博士の帰りを待ちながら自慢のオンボロ事務所へと、足を運んでいた事が現在までの真相であるのではないだろうか?




自らの推理を2人に披露するや、家政婦は目を丸くしながらも、その通りだと答えた。



『では、不可解な出来事と言うのは?』



部屋の謎を解き、得意満面な顔で立つ世界の嫌われ者を前に顔を見合わせると、執事と家政婦は覚悟を決めたかの様に話し始めた。



『軽くテストをさせて頂こうと、試した事は深く謝罪致します。』



そう口を開き始めた執事のビルの、左の内ポケットから新しく出された封筒を受け取ったクラッチ博士は、手渡された封筒を丁寧に確認し始めた。



青白い封筒の裏面に、先程とは明らかに筆跡の違うヘイトと書かれた文字のみで、表面を見ると宛名や住所と言った類の物は何一つ書かれてなく、光にかざして見ると、中の便箋が透けて見える程には薄手の物であった。



これは、面白そうだ─



不可解な出来事を前にし、内心喜びを噛み締めるかの様に誰の目にも明らかな程、口元に笑みがこぼれ始めた。


そんなクラッチ博士は、自らの部下とも相棒とも言える古びた机や、肘掛けの半分取れかかった椅子やわずかばかりの温もりをくれるストーブが、この部屋の中へ到着してからではないと、本格的な推理が進まない事を告げながら執事と家政婦へと顔を向けると、



『何か、飲み物を頂けませんか?』



と、お願いをする事に。



しかし─


今回の青白い封筒との戦いが、今まで関わって来た事件以上に困難を極めるかもしれない事を、クラッチ博士の直感が告げていた。



これは、非常に面白そうだ─





亡き優秀な助手・デービッドと家政婦の関係や、届いた封筒の謎を解くも、新たな封筒を手渡された─



果たしてクラッチ博士は、この謎を解く事が出来るのだろうか─!?



今後の展開を、お楽しみに─

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