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S.D.K.2  作者: 中草 豊
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18番目

謎の女性・リンダと共に、どこかへ連れ出される事になったクラッチ博士─



果たして、その先に待つものとは─!?


─第3話─



『これから、どちらに向かおうとしています?』



ガルシア家の家政婦・リンダに(いざな)われる形で乗り込み、世界の嫌われ者を迎えに来た慣れないリムジンの後部座席に座り、乗り込むなり付属の冷蔵庫からその手に取った、シャンパンの開封に手間取りながら、世界の嫌われ者は尋ねた。



『ガルシア家の18番目のお屋敷に…』



迎えに来てくれたリムジンに同乗している、執事のビルが答える。


世界の嫌われ者がその人生で、座った事のないくらいフカフカな椅子を備えた豪華なリムジンには、運転手のエドワードの他に執事のビルが乗っていた。



『18番目……!?』



いくら名門中の名門とは言え、そんなに家があるのか…と、素直に驚きながらもシャンパンの栓と格闘していたクラッチ博士の指に力が入ると、予期せぬ方向に、先程からの戦いに敗北した栓が飛んだ。



『えぇ…そこで、あなたs…』



ビルの言葉を遮る様に飛んで来た栓が、その整った顔を引き立たせていた、丸メガネの縁に当たる。


あ─


その様子を見るや、家政婦はクラッチ博士へと白い目を無言で向けた。



その目を横顔で受け止めながらも、世界の嫌われ者は執事のビルへと続きを促す。


手元には、丁寧に注がれたシャンパングラスを添えながら。



『ん、ん…。そこで、貴方様に解いて頂きたい事がございまして。』



軽く咳払いをしながらも、無言でメガネを直しつつクラッチ博士へと、丁寧な説明を続けた。



聞けば─

3ヶ月程前から不審な手紙が、これから向かう屋敷に届く様になり、その差出人を含めて屋敷内で起きている不可解な出来事についても、解決をして欲しいとの事であった。



その説明を聞いている途中から、誰の目にも明らかに、口元が緩み始めたクラッチ博士。



不可解な出来事─!!



この言葉を聞くと、その体は過剰なまでに喜びを表現してしまう様になっていた。



まるで子供の遠足に向かうかの様な、ウキウキしている様子を、一向に隠そうともしない世界の嫌われ者を見る目が白いまま、明らかに落胆している家政婦リンダは、いくら屋敷の(めい)とは言え、果たしてこの男に頼んで良かったのだろうか?


と、本気で考えていた。



『あの、世界的に話題になった悪魔事件をホントに解決したんですよね?』



まるで─

言葉に出さずとも下を向き、ズレたメガネを拭き上げる執事の気持ちを代弁するかの様に、家政婦が尋ねる。



─!!



その言葉を待っていたかの様に、口元に笑みを蓄えたクラッチ博士は、家政婦に目を向けると…


もちろん!


と、胸を反らし、自信満々に答えると、その解決に向けた様子を雄弁に語り始めたクラッチ博士。


その手には、すっかり気に入ったであろう丁寧に注がれた、シャンパングラスが握られていた。



身振り手振りを交えながら、同じ車内で時間を共にする執事のビルと家政婦のリンダを相手に、世界を震撼させた悪魔事件と呼ばれた事件解決の為に、どれだけの活躍をしたのか。


そして─

どれだけ、自分が優秀であるかを語る。




35分後─。



『そろそろ、到着でございます。』



満面の笑顔で、得意気に話す世界の嫌われ者の演説を遮る様に、ニコニコと笑顔を浮かべた執事の言葉が告げる。


もう、到着か─


まだまだ話し足りないと、ばかりに少しばかり口先を尖らせるクラッチ博士。



やっと、帰って来れた─

そんな子供の様に口先を尖らせるクラッチ博士とは対象的に家政婦の顔にはいつもとは違う、仕事でも今まで味わった事のない様な疲労の色が広がっていた。




ガルシア家・18番目の屋敷─。


その言葉だけを聞けば、羨む人も出て来るのだろうが、名門中の名門とは遠くかけ離れ、森に囲まれた大きな洋館の入口前で、世界の嫌われ者を乗せたリムジンは、その進行を止めた。




これは、非常に面白そうだ─。


洋館の独特な雰囲気から伝わる、言葉では説明の難しい独自の感覚を体全体で味わいながらも、クラッチ博士の胸の内はドキドキよりも、ワクワクする感覚が勝っていた。


次の相手は、どんな奴だろうか?



必ず、解決してみせよう─!!



そう、心に思いを秘めた言葉を呟くと、開けて貰ったドアから覗く洋館を前に、覚悟を決めた。

彼の人生の中で最高の座り心地のリムジンに乗り、子供の様にはしゃぐクラッチ博士─


だが─

そんなクラッチ博士にはどうやら、また不可解な出来事が待ち受けている様で……。


到着した洋館を前に、決意を新たに立ち向かう決心をした、世界の嫌われ者─!


今後の展開を、お楽しみに─

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