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S.D.K.2  作者: 中草 豊
3/14

新たなる旅立ち

差し出された名刺に書かれていたのは、名門家の名前!


接近して来た謎の女性は、実は依頼者だった─!?


果たして、その内容とは─




─第2話─



『で、相談と言うのは??』



クラッチ博士は、目の前の名門ガルシア家の家政婦に向き直ると、いつもの調子で丁寧に聞いた。



『こんな、青空の元で相談は、ちょっと…』



当然の反応ではある─

が、そんな家政婦の不安を断ち切る様に、クラッチ博士は満面の笑顔を見せながらも言葉を続ける。



『いやぁ、青空事務所と言うのもね、案外悪くないもんですよ。。』


ハハハと、苦し紛れの言い訳をする世界の嫌われ者に対し、事務所の入口の窓に大きく貼られた貼り紙を指差しながら、家政婦は無言の圧で訴えかけて来る。



目が笑っていない─



笑顔で顔を近づける家政婦のその様子を見ながら、世界の嫌われ者は圧に耐えかねる様子で、目を逸らし頭をポリポリとかいて机の上の万年筆を、指で遊ばせ始めた。



そんなクラッチ博士を見ながら、おもむろに家政婦が口を開いた。



『この、机や椅子は処分するご予定は??』



─!!



何も知らない人から見れば、粗大ゴミに見えるかもしれないが、家政婦の目の前に並ぶ古びた机や、肘掛けの半分取れかかった椅子や、わずかばかりの温もりをくれるストーブは、これまでの歴史を語る上では欠かせない、クラッチ博士の推理を支えて来た大事な相棒であり、大事な部下である。



そんな、大事な相棒達を馬鹿にされたと受け取ったクラッチ博士は、珍しくこめかみに血管を浮き出させながら、家政婦に再び向き直ると、



『この机や椅子は、処分はしませんよ?』



と、語気を強めながら語る。



当たり前である─。

処分など、してたまるものか!



クラッチ博士の、怒りに満ちた心情を汲み取ったらしい家政婦は、



『ならば、運ばせましょう。』



と、言葉を口にすると、5分で戻ります。

と、だけ告げると、通りの向こうへと1人歩いて行った。



運ばせる─?



家政婦の言葉に引っかかりを覚えたが、その立ち去る背中を見ながら、世界の嫌われ者は今後の事務所に関しても、考えていた。



現状では相談内容よりも、もしかしたら依頼を新たに受けれない事の方が問題である事は、自覚していた。



5分後─。



家政婦はクラッチ博士の前へと戻ると、



『迎えの手配を致しましたので、早々にお出掛けの準備をお願い致します。』



と、クラッチ博士の顔を見ながら、屈託のない笑顔で話し掛けた。



お出掛けの準備─?



家政婦が一瞬、何を言っているのかを理解出来なかった。


自称エクソシストは、キョトンとした顔で家政婦を見つめ直すと、



『出掛ける準備なら、もう既に出来ていますよ?』



と、帰国するまでの、およそ3ヶ月の時を共に過ごし、裾がくしゃくしゃになったスラックスと、ほとんどアイロンすら掛けない為に、襟元にまでシワの寄ったシャツ、フロントのボタンが1つと、右袖のボタンが2つ取れたジャケットを自慢気に見せつけながらも、左手には外側の革が剥がれ掛け、お気に入りで常に持ち歩いていた、書類や必要なノート類や荷物がたくさん詰まったバッグも持ち上げ、家政婦に告げる。



なんなら、これも─と、日焼けで変色をしかけた自慢のハットを見せつける様に、頭の上へ乗せて見せた。



そんな、オシャレとは全く無縁に見える世界の嫌われ者を蔑む(さげすむ)様な目で見ながら、家政婦の顔は半ば呆れ返っていた。



『では、参りましょうか……。』



顔を少しばかり引きつらせながら明らかな落胆した声で答えると、家政婦の言っていた迎えが丁度2つ先の信号から、パン屋のある交差点の角をコチラに曲がって来るのが見えた。



これから一体、どこへ行くのだろうか─?



クラッチ博士は一瞬、自身の脳裏をかすめた不安を取り除けないまま、家政婦に導かれる形で、歩き始めていた。



依頼内容もわからぬままに、謎の女性・リンダに連れ出される形で歩き始めた、世界の嫌われ者・クラッチ博士。


果たしてどこへ行き、どの様な依頼をされるのか?


今後の展開を、お楽しみに─

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