第五話 ドンキ行けばだいたい何とかなるって、ママが言ってた
おなじみの手居間ソングが流れる店内。
轟とカリブは生活に必要なものを買いにいやって来ていた。
「何じゃごちゃごちゃした店内じゃな」
「そうですね、噂以上です」
何を隠そう、二人とも初体験。
ハンターでも迷いそうな店内を前に、どうするか悩んでいた。
「とりあえず上から見ていくかの?」
「えっと……。いや、この階に布団もあるみたいです。右奥に行きましょう」
「了解なのじゃ」
柱に貼られた店内マップを見ていた轟がそう声をかけて少し前を歩く。
だが右奥に行くまでにたくさんの罠が……。
「カリブたん。この箸とかよくないですか? 六本セットで五百円ですよ」
「うむ、悪くないな。茶碗も可愛いのがあったのじゃ! 轟はどれにするかの?」
そう、この店は迷路。たどり着くまでにあれよこれよとカゴに物がたまっていき――
「お会計、三万二千円です」
「こ、これで」
必要な物だけを買ったはずなのにこの値段である~。
四万円手渡して無事にお会計。
「中々にいい買い物ができたの」
「そうですね、でも……。こんなに買い物をしたのは人生で初めてです」
「そうなのか? どれ、帰路につくまでにお主の過去話をしてくれんか?」
「え? 別にいいですよ」
轟は両親としてきた悪行、犯罪と知ってからはバイトをし始めたことなどを話した。
「う、ぅぅぅ。苦労人じゃな……。お、家についた事じゃし、今日は朝まで遊ぶのじゃ! そして、これからは楽しい事だけして過ごすのじゃ」
「はは、それじゃ、罰が当たりそうですよ」
轟は笑いながら玄関を開ける。
決して広くはない家、だけど轟にとっては人生で一番来るロげる場所なのは間違いない。
「お主はホントに謙虚で、心が優しいやつじゃな」
「え? あ、お布団は僕がひきますから、カリブたんは休んでいてください」
玄関に置いた荷物を引きずって運ぶカリブに轟は声をかける。
「それは妾のセリフなのじゃ! 少しは休むのじゃ」
「じゃぁ、一緒にやりましょう」
そこからは二人で布団を敷いて、寝る準備を進めていく。
「あすからはこのまちのおもしろいところをあんないしてくれるか?」
横並びで敷いた布団に寝転んだカリブがそう声をかける。
「はい、もちろんです。僕は実際に行ったことはない所もありますけど、クラスメイト達が言っていた場所とかも含めて案内します」
「ありがとなのじゃ」
その後すぐにカリブの布団から寝息が聞こえ始めた。
「僕の方こそ、女神様命を助けていただきありがとうございます」
轟は小さな声でそう言ってから、目をつぶり眠りにつくのだった。