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跳梁跋扈
あなたがいなくなったのに
まだ息が出来ました
花瓶の花は枯れたけど
心臓は裂けませんでした
独りでも生きていける
その寛容が嫌いでした
泥だらけになりたかった
それがいいに決まっていた
穴が消える前に泥で塞ぎたい
うっかり優しいなにかが
埋めてしまわないうちに
踏み鳴らせ 地表に 昨日に 宵に
罪に問われるくらいの陽気で
この星の仕組みが僕を透明にしたって
ばっこばっこばっこ
罪なんかひとつも無いような顔して
「大丈夫」になるのさ
あなたの代わりなんかいない
そう信じたはずでした
あれから五年経ったけど
五つ歳をとっただけでした
実は独りではなかった
そういうことなのでしょうか
岩穴に詰まりたかった
それがいいに決まっていた
泡が消える前に空を泳ぎたい
うっかり大事な痛みが
癒えてしまわないうちに
飛び跳ねろ 蒼蒼に 湖底に 夜に
月も呆れるくらいの陽気で
この星の重力が僕の手を引いたって
ばっこばっこばっこ
明日なんかひとつも無いような顔して
不幸にキスするのさ
跳梁跋扈 ちょうりょうばっこ
悪人共が思うがままに蔓延り、勝手気ままに振る舞うこと。
大魚が竹籠を飛び跳ねて乗り越えてしまうさま。




