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冬天
吸い込んですぐ鼻の奥を刺す
スキー場の匂いがする
君は分かってないみたい
こんなに似てるのに
バスはまだ来ない
少し明るい冬の空
青い青い夜の隅っこで
なんもない僕のポケットに
二人分の手を突っ込んで歩く
「なんでもないよ」
寒い寒い空を突っ切って
二人の頭上を追い越した
流れ星の残像が残ってる
吸い込んで今鼻の先が赤い
初雪の匂いがする
君は分かってないみたい
こんなに香るのに
雪はまだ来ない
街灯灯る冬の夜
暗い暗い夜の隅っこで
なんもない僕のポケットを
二人分の手があっためて歩く
「そうでもないよ」
白い白い空を突っ切って
僕らの頭上に舞い降りた
牡丹雪の静寂が残ってる




