8 泥沼の夜戦
見つけてくださり有難うございます。
やはり、この朝の不愉快さには慣れない。
はっきり言うと、さっさとここは踏破したい。
ショコラーデを口に放りこみ、食べきらないうちにテントから出た。
…水を飲むべきだった。
ショコラーデに口腔内の水分がどんどん吸い取られてっている。
そんなことはさておき、今日は夜戦の訓練を行いたいと思う。
勿論、初っ端から実戦訓練だが。
訓練の内容はシンプル。卯月でやったものの夜バージョンだ。
だが、それだけでも2つ成果を得ることができる。
1つ目。暗さへの順応。
ゆっくり暗がりの中で狙って撃てば、多少夜戦もやりやすくなるというものだろう。
2つ目。射撃、狙撃技術の向上。
ただでさえやりにくい夜戦で、弾を外すなどするのは命取りになりかねない。特にこの聖地は足の速い敵がいるようだし。
まずは、銃弾を用意。少しなれて来たのか、以前より多少は手際がよくなった気がする。
『銃弾創成・9×19mmパラベラム弾/1』
そしてこれを立てる。
数歩後退りして、よく狙って…撃つ。
勿論外れ。ここはしっかりいつも通り。これを、弾が倒れるまで繰り返す。
今回は、暗いのもあってか、50射ほど撃っても全く弾は倒れない。技術レベルもまだ一つも上がっていない。
少し疲れたと思い、弾を回収しようとしたその刹那、背中から強い衝撃を受けて転んだ。
吃驚して立ち上がりつつ振り返ると、そこに居たのは目が赤く、体躯の大きな犬。
少し固まってしまったが、すぐにMP40をリロードし、腰撃ちをする。
数発命中し、犬は少し苦痛の色を見せる。
しかし、犬は怯まずにまた飛び掛かってくる。
至近距離まで来られたら銃での対応は難しい。
取り敢えず、銃で適当に犬をぶん殴ってみた。
犬の背中からドロドロと血が出始めて来たが、そんなの関係無いと言わんばかりのこの殺意。
とにかく殴る。殴る。殴るの連続。
途中からベチョベチョした触り心地になる。
その仕返しとばかりに、顔を爪で引っ掻いてきた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
普通に撃たれた位痛い…
その痛みに、殴る手も止まりかけたが、なんとか堪えて殴り続ける。
この泥沼の戦いは、俺の辛勝で幕を閉じだ。
結局、あの犬は俺の必死の抵抗に撤退を選択したのだ。
ちなみに、殴っていた手と銃は血塗れになっていた。
これは帰ったら何かで拭き取らねば…
ボロボロになった身体を引きずりつつ、俺はテントの方に引き返していった。
否、テントの中でも、戦いは終っていなかった。
あのウサギの毛皮で血を拭き取り、レーションのうちどれかを口の中に放り込む。
やはり、怪我をした時には寝るのが一番なのだろうか、そう思えるかのような眠気が俺を襲う。
取り敢えず。俺は寝た。
眼が覚めても、二度寝をしても中々痛みは取れない。
やはり、数日は休養したほうがいいのだろうか。
しかし、やられたままというのもいけすかない。
よし決めた。
今はこうやって自分の調子を整えて、万全の状態になったらあの忌々しき犬っころを倒そう。
そしてそのドロップ品のレーションを…
おっと、本音が出てしまった。
それはさておきつつ、犬を倒す為にもここ数日は惰眠をむさぼろう。
そうしよう。
…俺でも分かる。甘えだな、これ。
《恨み技術 Lv1を獲得しました》
《不屈技術 Lv1を獲得しました》
《肉抉り技術 Lv1を獲得しました》
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