7 新天地
見つけてくださり有難うございます。
目が覚めると、そこはまたもや草原だった。
だが、卯月の草原とは違い空は暗く月が出ていた。
夜、といったところだろう。
最も、その月は雲で霞んでいるが。
これはやられた、夜戦は苦手だ。
卯月の草原と同じ様に立ててあった看板には、『第二の聖地 朧月平野』と書いてあった。
朧月、というのは東洋の日本人が言っていたような覚えがある。意味は知らないが。
前回と同じく、取り敢えず行動を起こそう。
まずは、テントの設営。
といっても膨らませるだけなのだが。
テントの中は決して広くは無いが、大柄な俺も十分寝転がることができるスペースがあった。
しばらくはここを拠点にしていこうと思う。…が、今日は一回眠ることにする。激闘したわけだし。
自分でもわかるぐらいの鼾をあげて、俺は眠りについた。
卯月の草原だと清々しかった朝も、朧月の平野では暗く、気分がスッキリとしない。
もっとも、空はずっと夜なのだから、朝なのかどうかすら分からないが。
勿論、気分が乗らなくても活動しなければならない。
水を一口、二口含み、最後の一個のクラッカーを食べてテントから出た。リュックは荷物になるので重りがてら置いてきた。
さて、今日は敵の調査と食料集めをしていきたいと思う。
正直、腹一杯に食べたい。食料の予備があれば、もっと一日の量を増やせるだろう、という短絡的な理由からだ。
勿論、敵の調査はこの聖地での生活にも役立てるが。
しかし、夜というのは不便だ。自分が何処に居るか分からない。確か、夜の警備の時は動くものは撃つのが基本だったか。
では、やりかたはシンプル。
とにかくなか目についたものを撃ってみる。
いや、作り出した俺でも頭悪い作戦だなぁと思う。
思うんだが、生憎今これ以外に俺の技術とこの環境では取れる作戦はない。
お、なんか後ろの方で葉が動く音がした気がする。
早速バラけさせつつ射撃してみた。
どうだろう、と思いつつ撃った方向に歩いてみると…なにもない。
わかってた。うん。こうなるだろうなって。予想的中しちゃったよ。
ま、まぁ、めげずに次、行ってみようか…
結果は悲惨なものだった。
新たにクリップ追加して、12クリップくらい使って得た獲物、なんと驚異の0。
でも、収穫は一応あった。後ろ姿ではあったが、敵の姿を捉えた。…食料は無かったが。
多分、あれは大きな狼だったと思う。いや、犬だったかもしれない。
どっちにしろ、犬や狼ということは足が速いだろう。
十分距離を取って、しっかり当てないと厳しい相手かもしれない。
ここまで分かったところで、拠点のテントに…
あれ?テントって何処だっけ…
不安しかない。帰れる気もしない。
あのあと、体感数時間かけて帰ってきた。
テントの中に入った刹那、ゆっくりと安堵が俺の五臓六腑に染み渡り始める。
晩(?)飯はスープを飲もうと思う。
…うん。昨日までのクラッカーよりは旨い。だけども特別旨いわけでも無い。つまり普通。
早々に寝転がったが、中々寝付けない。
もしかしたら、案外今日は活動していなかったのかもしれない。
いつも、眠れない時はどうしていたか…
そうだ、歌を歌おう。歌う歌は、取り敢えず思いついたもの…ローゼマリーだったかにした。
ー|Es ist so schön zu sein Rosemarie!《兵士になることは素晴らしいことさ、ローゼマリー!》
|nicht jeder Tag bringt Sonnenschein Roesemarie!《毎日太陽は光をもたらすわけではないけれど、ローゼマリー!》
|doch du,du bist mein Talisman Rosemarie!《でも君は僕のお守りのような存在だ、ローゼマリー!》
|Du gehst in allem mir voran Rosemarie!《君はいつでも僕のそばにいるから、ローゼマリー!》
|Soldaten sind Soldaten in Worten und in Taten《兵士には兵士の言葉と行動がある》
|sie kennen keine Lumperei und sind nur einem Mädeltreu,《彼らは決して疑うことを知らない、そして1人の娘に忠誠を誓う》
Valleri,Valleralle
Rosemarie
震えた声で久しぶりに歌った、ここまでしか歌詞を覚えていない歌は、デクレシェンド気味に終わりを迎えた。
読んでくださり、有難う御座います。
感想、ブックマーク頂けると有難いです。