21 ザルクネル
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「待っていたよ。ザリニラ君とガルシア君。」
ドアを開けてそうそう話し掛けてきたのは赤髪と鋭い目つきを持った25歳くらいの青年。
偉そうに玉座のようなイスに座っている。
いや俺のことら無視かよ。
屋敷のエントランスだと思われるこの部屋は、かなり装飾に富んでいる。
壁に多く掛けられている主に婦人の絵画、隅に配置されているテーブルと高そうな燭台。
いやここまでくる、燭台とか使わないだろ。
そして、玉座の奥に見える人のようなものの像。
なんの像だろうか。少なくとも俺には分からない。
「ト、トート像?」
そう言いながら少し後退りするザリニラ。
トート。死神とか、死とかを表す言葉だな。
つまり、あまり縁起の良い物ではないようだ。
「御名答。流石は元神武騎士団長さんだね。」
また知らない単語。神武騎士団長…
ザリニラは昔は偉い人だったのだろうか?
「世辞は良い。さっさと俺らの子供を返せ。」
ザルクネルを睨みつつ、そう要求するザリニラ、剣を抜くガルシア。
これはもう銃を構えても良いかもしれない。
「おー怖い怖い。別に金くれたら渡すっての。」
そう軽い口調でザリニラに言うザルクネル。
こいつ、妙にヘラヘラしてるな。
若者特有の全能感がもたらすものだろうか。それとも…
「…わかった。これが例の金だ、受け取れ。」
ザリニラはそう言って革製の箱を投げつける。
ザルクネルは少し手前で落ちた箱を悠々と持ち上げ、奥に投げた。
「じゃあ、子供を渡そう。」
そう言って、立ち去ろうとするザルクネル。
その刹那、一歩前にいたガルシアが溢れる鮮血と共にを倒れる。
「ねぇザリニラ。本当にそう言うと思ったの?」
そう言って気付けばまた玉座に座っている彼奴。
しかし今回はさっきと比べて、身体から黒いオーラのようなものが湧き出ている。
ザリニラは驚愕と悔恨が混じった表情を見せて固まっている。
「亜界男爵ザルクネル、深黒の縁をとくと見よ。」
その言葉と共に、壁や天井が闇に染まり、ザルクネルが宙に浮いた。
おいおい…空も飛べるのかよ…。
流石に異世界と言えども、こういう奴は強い奴な気がする。
「空を染めし夜の闇よ、我に従い、敵を刺す槍となれ!『ドゥンケルハイト・スピア』!」
そう厨二病の様な台詞を叫ぶと共に、現れた無数の黒い槍の1つを手に取る。
…来る!
「刺せ」
そうザルクネルが言った途端、残りの槍が何かに押されたかのように駆け出す。
「剣を司る神々の力よ、剣を護る我を貫かんとする槍のすべてを防げ!『ソードシールド』!」
ザリニラがそう早口で叫ぶと、頭上に巨大な剣が現れ、飛びかかる槍を受ける。
しかし12本ほど防ぐとヒビが入り始めた。
「おいグレゴール!この剣があるうちにこっちにこい!」
そう叫ばれたからには行くしか無い
。
急いで駆けてザリニラの元に辿り着いた刹那、剣が崩れ散った。
4、5本の防ぎきれなかった槍は全て外れた。
これもザリニラのおかげだろう。
「全く、その力には惚れ惚れするよ。
なのになんで商人なんて道に進んだのかね。
我に仕えし深い黒よ、この空間を包み込み我を護れ、『ドゥンケルハイト・スモッグ』!」
次は闇を使った視界潰しか…。
「闇よ、我に抗う物を縛れ、『ビンデン・ドゥンケルハイト』!」
「うぐっ…」
ザリニラの低い苦しげな声が聞こえたかと思えば、足や胴体などが常闇によって縛られ、移動の自由が奪われる。
クソ…最悪だ。
もうどうしようも無いぞ、これ。
いや、また死ぬとか嫌だぞ。何回死ぬんだ俺。
多分渾名が死亡野郎とかになってると思う。
何か解決策は…。
ん?待てよ。こいつは闇を使って暗くさせることで視界を奪っている。
そして今、腕だけは動く。
つまり、あのとき取った暗視スキルを発動して、銃で縛る闇を断てばいいんじゃないか?
そう思い立ったが吉日、別にそれ以外に取れる手もないし、暗視スキルを発動する。
途端、視界が通常に戻る。
よし、見えた。奴は2本の闇の縄で縛っている。
しかもその縄は太い。撃ちやすいな。
そこを狙って、2箇所に斉射。
刹那、足や胴への圧が消える。
「ッ!?」
明らかな驚愕の色がザルクネルからは読み取れる。
そのまま次の技を出させぬ間にリロードし、奴の脳天向けて乱射した。
倒れるザルクネル、解放されて立ち上がるザリニラ。
「勝った…のか?」
一弾指、頭に一節の黒が迸った。
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