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亡国兵士は永遠に  作者: 窓際の箪笥
序章
1/34

1 死亡

見つけてくださり有難うございます。

戦争をするということは、敗者と勝者の両方が必ず産まれるということでもある。

それは、チェコスロバキアやオーストリアを吸収し、1939年に開戦して以来、フランスやポーランド、ロシアやバルトの大地で連戦連勝を重ねていた我が祖国にも例外は無かった。


優勢人種やら、東方生存圏といった党が掲げたそれはそれは大層な夢想を多くの人が命をかけてまで追いかけた先がこれだ。


俺が配属されているー否、もうこの降下猟兵師団はあってないような物だ。配属されていた、の方が正しいだろうー第9降下猟兵師団も大量に湧き出てくる赤軍との戦闘でほぼ壊滅状態。

なんとか身を潜めているこの建物だって、喧しい戦闘によって壁は穴だらけで、いつ赤軍の砲撃で俺ごと破壊されるかも分からない。 


さっきまで隣で飯を食べていた、人情がそのまま人間になったかのような、中年の軍曹ー名はヴァルター・リッペと言ったかーは、倒れた友軍兵士の救援に向かう際に頭を撃たれてあっけなく射殺された。


水は軍曹が分けてくれたため無いわけではないが、気休め程度の量だ。加えてこのmp40は弾薬が弾倉に入っている32発だけ。誰がどう見ても戦闘の継続は不可能だ。


かと言って赤軍に降伏すると強制収容所送りというのは有名な話で、それこそシベリアかどこかでまともな食もなしに労働労働の毎日になるのだろう。

ーどうせ死ぬなら、早い方が良いー

そんな思考が頭を過る。

それと同時に、シニタクナイという生物の生存本能が頭の中を支配する。


ああ、俺という生き物はここまで臆病だったのか。

自分が本当に情けなくなってくる。


「もう1回、もしも人生をやり直せたら敗戦国(負け犬)の兵士じゃない別の人生もあったのかね…。」


何処からか、いくら聞いても身体の芯が震える銃声と醜いヒトの悲鳴が聞こえる。

いままで、俺は何人を逆の立場で殺しただろう。

白い髪で皺だらけの老婆、泣き叫ぶ赤子とそれを抱えて必死の命乞いをする婦人。

頭の中で数えてみると、10を超えていた。

今まで軽く、普通のことのようにやっていた事は、敵からすればここまで恐ろしいものであったのか…、と思い知らされた。


もしも先程呟いた言葉が現実となった暁には、殺生をせずに静かにこの銃と共に生きていきたいものである。

いや、この銃があったら静かにはならないかもしれないが。

そして、遠くで鳴ったと思われる砲撃音が、微かに俺の耳に届いた。

その刹那、屋根を突き破り、砲弾が床に突き刺さった。

そして、1拍おいてから逃げる暇さえ与えずに無機物的に煌めいた。

酷い揺れと風で、俺の視界は浅葱鼠色に染まり、身体は意識と共に遥か彼方へと飛ばされていく。


丁度良いタイミングだが、もう少し雰囲気とかそういう物を大切にしてほしかったぞ。

くそったれな共産主義者(アカども)


そんなしょうもない思いを頭に浮かべつつ。

読んでくださり、有難う御座います。

感想、ブックマーク頂けると有難いです。

2023/8/14に一部改訂しました。

200文字増えたくらいでストーリーに変わりはありません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最高に面白かったです! [一言] これからも追ってまいりますので、執筆頑張って下さい!
2023/07/11 20:58 退会済み
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