『まじゅう・金の斧 銀の斧』
「まじゅう・金の斧 銀の斧』
むかしむかし、あるところに木こりのミノタウロスがおりました。
あ…… 。ミノタウロスとは、かれ、個人の名前です。種族名はウェアバイソンです、念のため。
さぁ、今日も、森の中でお仕事です。
愛用の大斧は、よく手入れされてピカピカの刃。まるで金銀でできているみたい。
「そんなわけがあるか」
・・・ミノタウロスは、ひとり黙々と木を斬ります。そう、伐るのではなく斬る感じ。
あのぅ、ちょっとイラッとしてますか?
「そのとおりだが?」
(む"すッ)
どうやら、本来のお話のお仕事が気になっているようです。生真面目なキャラクターを拉致して、二次創作に、無理矢理出演させたのがいけなかったかも。
ミノタウロスがあきらめ顔になるころ、森の奥から不思議な気配(魔力)がしてきました。
引き寄せられるように気配の源へ向かうと、すんだ水のわく小さな池がありました。
° ∵∶((ざざぁ〜!))::∴ °。
「…… あなたが探しているのは、この、ブリリアントに輝くゴールデンメタル・ マシューですか。
それとも謙虚でシャープな、いつものマシューですか」
顔のパーツが素朴なネオマシューが、水面を割ってせり上がってきました。
古代魔術文明のハイスペックロボット(自称)は、スポットライトを浴びて満面の笑み。キラキラしい衣装です。自分そっくりの等身大人形を二体、左右の手でかかえています。
スモーク、焚いてますね。
ひゅッ、ごウウゥ!!
木こりの大きな仕事道具(ピカピカの大斧)が投擲されました。猛スピードの軌跡はネオマシューにまっしぐら。
話の流れをものともしない凶行です。
「……? 投げてはいけなかったか」
失礼、だれも死んでません。ドボォン、と。離れた場所で、泉水に飛び込む大斧の音。
ネオマシューはかすめたものに腰を抜かしていますが無傷です。
ミノタウロスは猛抗議されても、『 木こり(オレ)が斧を池に落とすところからが、ストーリーの山場なのだろう? 』、と、納得行かない表情です。
泉の精霊?が急に出てきたので、あわてて斧を池に落とそうとしたみたい。
首狩りの一投かと思いましたよ。
「『ヤブ蚊モドキ』の悪ノリもたいがいですけど。ミノタウロス、おそろしいデス」
ネオマシューは、それでも強引に芝居を再開しました。
「…… あなたが探しているのは、ブリリアントに輝くゴールデンメタル・ マシューですか。
謙虚でシャープな、いつものマシューですか」
「いや? オレはマシューを探していない。ぜんぶ要らない」
ミノタウロスの答えは素の口調です(……ぜんぶ?)。
そして、投げ込んでしまった大斧を探しに、池に入るのでした。
暗い池の底で、吸血鬼アルカンドラス(木こりの衣装)がじたばたしてました。銀の大きなマシュー像に下敷きです。なにしてるんでしょう。
ミノタウロスは、結局、池に落とした(投げた)斧を見つけられず。銀の像と、金髪のアルカンドラスを引き上げると、さっさと家に帰りました。
…… めでたしめでたし?
****
✩ 舞台裏にて ✩
ネオマシュー
「やーいデス、カナヅチです!! ボーフラの親玉のくせして……」
吸血鬼アルカンドラス
「リハーサルに付き合ってやったというのに、吾輩を罠にはめおって!
あと、水は関係ない!
相手が銀塊だったから力が出ずーー」
ミノタウロス
「ふたりは余裕だな。早く、あの島の調査にもどらねば…… 」
✩ 続・舞台裏にて ✩
ハイアディ(スキュラ美女)
「あ、あれ? えと、泉の女神役って聞いてて、準備して待ってるのに誰も来ない……」
ルティ
「かわいそう… ハイアディもマジメに付き合わなくてもいいのにー」
(マネージャーKめ!)
ロッティ
「もう終わったと教えてやるのじゃ?」
ララティ
「それは芸が無いぴょん。ロッティ、レーンに化けて迎えに行くぴょん」
ロッティ
「わかったのじゃ! 任せるのじゃ!」
( ̄▽ ̄;) 大惨事の予感?
*「続・舞台裏にて」は、NOMAR様からいただいた『金の斧、銀の斧、オマケ』に基づいています。ありがとう御座いました。