3.教室にて
1年L組。
それが僕たちがこれから生活していく場であった。
教室はやはりやや大きめで生徒の数も普通の学校より多い。50人はいかないまでもそれくらいはいるだろう。
普段の僕であればそれほどまでクラスメイトと交友関係を結ぶのに苦労はしてこなかったのだが、こうまで人が多く、またいろいろな人種の生徒だ。
遠くの席に座っているあいつは明らかに日本人ではない。
もしかしたら僕はうまくやっていけず孤立してしまうこともあるのかもしれないな。
というか問題は僕よりもアリナだ。
彼女は僕とは比べ物にならないくらい人見知りで引っ込み思案な性格をしている。今も相当不安に違いない。
そう思い彼女の席のほうをみてみるとニコっと笑って手を振ってきた。
なんだ、案外平気そうだ。杞憂だったか。
クラスに知り合いがいるっていうのも大きいだろうな。もしかしたら学校側もそれを配慮して僕らを同じクラスにしたのではないだろうか。いや、考えすぎか。
そんなことを考えていると先生が教室へと入ってきた。
「皆さん、おはようございます。席にはついていますね。」
ニッコリとした表情はどこか安心感をあたえるもので声もおだやかであった為、一目でこの先生は優しい人だとわかった。
見た目は30過ぎくらいの男性。細身で背は平均より少し低いくらい。
優しそうではあるものの少し頼りなさそうなそんな印象を受けた。
「これからこのクラスを担当します金田 准です。よろしくお願いします。」
彼は軽く挨拶をしそのまま自己紹介をした。
話口調はとても丁寧で聞き取りやすいと思う。だがなんだろう言葉の節々に違和感を感じる。もしかしたらこの先生も外国の方なのだろうか。
「私は海外での生活も長く、こちらとあちらで様々な経験をしてきました。なのでこのクラスにも何人かいる外国籍の子達やそれに準ずる子達はなにか学園生活などにおいて困ったことがあれば何でも頼ってください。」
なるほど。そういった事情があったのか。帰国子女というやつなのだろうか。
「この学校はとても広く、またとてもたくさんの人がいるのできっと心の通わせられるかけがえのない友人に出会えることでしょう。そういった人を大事にしてください。」
そうだ。この学校には他の学校よりもはるかに生徒数が多いのだ。もしこのクラスで友達ができなくてもあるいは別の場所で出会えるだろう。例えば・・・
「さらにこの学校にはその多くの生徒数の自主性を重んじて様々な部活動、サークル、研究会などがあります。強制ではありませんが自分の居場所となりうるコミュニティに属することは学園生活を有意義なものにするためにとても重要といえるでしょう。ぜひご自身の目で見て感じてあるいは自分で設立してよい三年間にしてください。」
この学校に入学したほとんどの生徒の目的がこれであろう。
普通の学校ではあまりないようなあるいは最近になってできたため部員数の少ない部活動。ここでは大体の部活動が網羅されているといっても過言ではないため、地元の学校ではできない活動がここではできる。もしそういった部やサークルがないにしても自分で作り仲間を集めるのはやはり他の学校よりもやりやすいだろう。
かくいう僕もその部活動目当てである。
あるのだ。この学校には僕の目的としている部活が。
先生は話を続けた。これからの学園生活に関することや一年間の行事、各施設の説明等々。
今日は入学式ということもありその説明が終われば自由時間となる。
その時間で新入生は説明を受けた施設を見回ったり、部活動を見学したり、あるいは帰宅することが可能である。
「以上であらかたの説明を終了させていただきます。何か困ったことがあれば先ほど説明した教員棟に来るか、あるいはお手持ちのスマートフォンで生徒用サイトからお悩み口へお問い合わせください。では、これからの学園生活を十二分に謳歌してください。」
そういうと先生は教室を去っていった。
するとクラスの人たちは各々の行動をとった。
真っ先に荷物を手に取りどこかへ行ってしまうもの、周りとコミュニーションをとろうとするもの、動けず周りの様子をうかがっているもの。
僕は目的を果たすため荷物をまとめ教室をでようと思案していた。
すると前の席から声がかかる。
「俺は平田。平田 真よろしく!」
こういってはなんだがとても特徴をつかみにくいどこにでもいそうな風貌の男子だった。だが相手から声をかけられたのはシンプルにうれしい。
「僕は安部流志。よろしく」
「リュウジって呼んでもいいか?俺のことは誠でいいよ。」
「わかった。」
「リュウジは何の部活に入るか決めてるのか?」
「まぁ、一応。そっちは?」
「実はお恥ずかしいことにやりたいことがたくさんあってな!運動系か文化系かなんでも自由に選べるって逆に困るよな!」
見た目とは裏腹に結構活発そうな奴だった。
「確かここは掛け持ちも許されたはずだろう。いろいろ見てみて実際に体験してみるのはどう?」
「それいいな!どう?この後一緒に。」
「うれしい提案なんだけど用事あるんだ。もし予定があったらまた付き合うよ。」
「そうか。残念だけどまたいいの見つけたら教えるよ。リュウジも変なの見つけたら教えてくれ!」
「変なのって・・・・。」
僕は苦笑しながらその場を去った。
おそらく次回以降専門用語が多数出現すると思うので、こちらでそういった用語の解説をします。
なお、実際にある用語を解説はいたしますが実際に登場する人物や団体、固有の媒体などとは一切関係ないのであしからず。