2.入学式
私立ネクシス学園
ここは県内でも有数の敷地面積と生徒数を誇る学校だ。
ゆえにいろいろな属性の人が集まりやすい場所でもあった。
ようするに頭脳が非情に優れているものやまったくそうでないもの、社交性のあるもの、内気すぎているもの。
高校というものはある程度自身の能力と似通った人が集まりやすいと聞いたことがあるがここは例外だろう。
もうすでに同じ道を歩く新入生らしき人々から似通ったものを感じることすらできない。
それだけでこの学校の雄大さが伝わってくるようであった。
生徒数にして約10000人。敷地面積約40万㎡
と、ほぼ大学並の広さだ。
ここで様々な活動や研究、授業や取り組みが行われる。
その中でもひときわ大きい建物の中へと僕たち新入生は案内される。
おそらくここが講堂だろう。
今からここで入学式が執り行われる。
「知ってはいたけど人たくさんだね・・・」
人の多さにおびえるように彼女はつぶやいた。
「そうだね。迷子にならないか不安だ。」
「怖いこと言わないでよー!ルー君私が迷子になったら探してくれる?」
「探しに行ったら僕まで遭難するって。その時は先生に頼るなり上級生に頼るなりしな。」
「うぅ・・・でも・・・」
彼女は昔からこうだ。僕の後ろをひっついて歩いて何かあるとすぐ僕に頼ってくる。頼られるのは悪い気はしないんだが、彼女ももう少し大人になる時期だろう。これからは僕もやりたいことがあるしあまり構ってはいられないのだが。
アリナが上目づかいでこちらを見てくる。その瞳の端には少し涙がたまっているだろうか。
「あーもう!わかったわかった。もしどうしようもなくなったら連絡して。頑張って迎えにいくようにするから」
そういうと彼女の顔はパァーっと明るくなった。
「ほんと?約束だからね!」
「あんまり期待するなよ。僕だって同じ新入生なんだから。」
「うん!わかった!」
あまりわかってなさそうである。
僕も昔からこうだった。困った子犬のような顔の彼女を見るとどうしても放っておけない。
どうしてものかと悩んでいるとあたりが静かになった。
どうやら式が始まるらしい。
偉そうな教員、おそらく教頭らしき人が開会の辞を述べ国歌斉唱をする。
これだけ大層な敷地と人口でもやることはそこらの高校と同じ入学式であった。
校長先生の式辞、新入生代表挨拶、在校生代表挨拶、来賓の祝辞等々
特に何事もなく入学式は終了となった。
「ふ~座りっぱなしで話を聞き続けるのも疲れるね。」
「そうだね。ルー君途中ウトウトしてたでしょ。」
「うっさい。」
そんな他愛ない会話をしつつ僕たちは各々の教室へと向かった。
「そういえばアリナって何組なんだ?」
ふと隣を歩く彼女が何組になったのか尋ねてみた。
「え・・・ルー君本気で言ってる?」
「え、ごめんわからない。」
「もう!同じクラスだよ!!普通クラスメイトに知ってる名前あれば気づくと思うけどなーー!!」
そうだったのか。全然気づかなかった。
「ごめん。あんまりクラスには興味ないんだ。」
「クラスに興味ないって・・・これから一緒に過ごす人たちなのに?」
「あぁ。第一名前だけみてもどんな人かなんてわからないだろう?」
「それもそうだけど・・・ってあそこじゃないかな」
「そうだね。なんとか迷子にならずに来られたな。」
「まぁ、人の流れに沿って歩いていただけだしね。」
そんなこんなで僕たちは自分の教室へとたどり着いたのであった。