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8 湾岸防衛戦

 ニューポート・シティ、港湾部、防波堤の見える海岸にて。

 ユエ達は、厄災の上陸に備えて陣形を組んでいた。

 

 「今度のヤツ、雑魚なんだろ?俺一人でやれるのにサァ。」


 左翼に構える勝ち気な少年がダルそうに言う。

 褐色に日焼けした、年の割に大柄な少年の名前はガンザ。

 火力では二級衛士随一であり、実際に厄災単独討伐を果たしたことも一度や二度ではなかった。気が強く、いつも取り巻きを引き連れて歩いていた。


 「黙って言うこと聞いてなさいよ。あんたいっつも勝手なことするんだから。」

 「へいへい。」


 右翼で備えているのはユノス。ユエをトップとして、後衛にアウルムを配してダイヤを形どっていた。


 「目標は現在、こちらに接近中。まもなく肉眼で目視できます。牽制と誘導を行っていたドローンを撤退させます。」


 オリエンスの報告の直後、海面から突然嵐が巻き起こり、怪異が姿を現す。

 海藻をまとった軟体動物のようであり、吸盤のついた二本の触手がゆらゆらと揺らめいている。

 モンスト=ペース、直訳すると「足の怪異」であるが、その名の通り海から突然現れ、その触手で船を沈める、という怪奇現象が伝承として残っている。


 「ハッ、ダッせぇ。燃え尽きろォ!!」


 早速ガンザが火炎で初撃を加えようとする。

 ユエはとっさにユノスへ目くばせすると、彼女も既にそれに合わせるように右手に持ったバトンから火炎の法撃を連打していた。


 「アウルム!」

 「はいっ!」


 前面に防御フィールドが展開される。ドーム状に張らないのは、全体の防御力よりも相手の攻撃をそらすことを優先し、持続力を重視しているためである。


 次々と火炎が命中し、煙が立ち上る。触手が左右から後衛のアウルムを狙って振り下ろされるが、全て弾かれて怒りが増しているようであった。


 『火炎があまり効いていない?』


 ユエは右手を後ろに引くと、下手で前に押し出すような動作を行う。同様に左手でも連続して同じモーションを見せると、烈風と共に海面に波が立ち、魚雷のように相手に向かっていく。目標に到達すると同時に大きな水柱が上がった。


 「キィェエエエエエエエエエエエエッ!!」


 耳をつんざくような大きな叫び声をあげると、怪異は大きくひるんだ。


 「もらったァ!!」


 とどめを刺そうとガンザが飛び出してゆくと、モンスト=ペースが口らしきものを開いて待ち構えていた。


 「コォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」


 吹雪のような一撃をガンザに当てると、浮いたところに海中に隠れていたもう一対の触手が鋭く打ち上げる。


 「ゲッ」


 彼は大きく吹き飛ばされ、意識を失って地上に落ちた。

 アウルムがかばう様にしてフィールドを張るが、それをあざ笑うかのように何度も触手が打ち下ろされる。このままでは共倒れになるのも時間の問題であった。


 「ユノス、二人を連れて一旦後退!いったん立て直す!」

 「わかった!」


 ユノスとアウルムがガンザを抱えて救急車両のところへ向かうのを確認してから、ユエは殿として身構える。

 触手の数は二対4本に増えており、怪異がニヤリと笑ったように見えた。


 『弱点のはずの火炎が効かない。事前情報に無かった氷結のブレス・・・亜種か?』


 上下左右から伸びてくる触手が大技を繰り出す余裕を与えない。

 撒き散らされる吹雪が徐々にユエの体力を奪ってゆく。

 アウルムの補助が切れたことから、胸の痛みが増して疲労も一気に蓄積するようになっていた。

 何とか踏みとどまっていたものの、ついにユエは片膝をつき、そして前のめりに倒れた。


 『ここで終わりなのか・・・?』


 朦朧とした意識の中で、打ち下ろされようとしていた止めの一撃を見上げていたその時━━━━━━━━━━━━━━━━

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