6 表彰
市庁舎、最上階にて。ユエとオリエンスの二人は市長と対面していた。
シティの庁舎は総構えの要塞と化しており、市長の執務室のある天守からは遥か遠くまで見渡すことができる。
「やあ〜、さすがは『マゴスの子』、だねぇ。世界最強!さあ、こっち来てこっち。いつも通り記念撮影しよう、記念撮影。」
そう言うと市長は強引に左手でユエと肩を組んで引き寄せる。右手はオリエンスの腰にまわすふりをしてしきりと彼女の尻を撫で回している。よく見ると笑顔なのに目が笑っていない。
「オリーちゃんいつ見ても美人だねぇ。今晩どう?夜景の見えるレストラン、予約するヨ?その後は屋形船を貸し切ってクルージングでもどうカナ?」
「任務がありますので。」
「そっかぁ〜。困ったことがあったらいつでも私に相談するんだヨ?気に入らない上司がいればすぐにでも飛ばしてあげるからネ?」
「はい。有難うございます。では失礼致します。」
帰りのエレベーター内で尋ねてみる。
「大丈夫?」
「あの程度でいちいちキレてたら宮仕えなんて務まりませんよ。お気になさらず。それに、あれがあの怪物の本性だと思わない方がいいですよ?」
「あれで?」
「そう、あれで。」
普段人の心を覗いたりしないユエであったが、あれだけ誰でもわかる下心丸出しの人間の行動が全て計算ずくの演技だとしたら、能力云々では対処しようのない化け物であろう。
一階の各種受付を通り過ぎ、玄関を出ると土産品やら何やらの屋台がずらっと並んでいる。中には厄災と戦うユエらしき少年のポージングフィギュアまで売っている。
「さ、機関に帰るまで氷菓でも食べていきましょうか。味は・・・果汁の入ったこれがお好きなんでしたっけ。奢りますよ?」
「ありがとう。」
そうして二人は柑橘系のフレーバーのコクのある氷菓子と、生クリームと果実の入った薄いパンケーキを買い、半分ずつわけて食べながら一緒に市庁舎を後にしたのだった。